プロローグ
ワンピースを狙うすべての海賊たちが目指す、グランドライン後半の海、人呼んで、新世界。
しかし、かつてその海を制したのは、海賊王、ゴールド・ロジャーただ一人。
新世界は、幾多の海賊の夢と野望を阻んできた。
その新世界のとある島での出来事ーー
その島には物資補給のために上陸した。ワノ国から出港する日に、無茶な滝下りをしてしまったため、船の整備も兼ねてだ。
クルー達の小言からやっと解放されたので、気ままに島を散歩することにした。
その島唯一の町は、規模は小さいが活気があり、賑やかな印象だった。
町の中心にある広場では露店が立ち並び、島民達が思い思いに買い物をしている。
彼らを横目に行先もなくぶらついていると、裏路地の向こう側にふと目に付いた建物があった。そこは他の民家よりも一回り小さく、壁や屋根の色も薄汚れていた。
看板らしきものはなく、入口のドアの上に「OPEN」と書かれた小さな札があるだけだ。
一見するとただの雑貨店のようにも見える。何となく怪しい雰囲気を感じ取るが、好奇心に背中を押され、彼はその取手を回していた。
中に足を踏み入れた時、ブーーン、と上映開始を告げるような音が鳴り響き、室内が急に暗くなった。
『ようこそお越しいただきました。貴方は……人目の………です』
ザッザザ…と所々ノイズが混じりながら男とも女ともとれない、機械的な声が聞こえてきた。
「…!」
チャ、といつでも抜刀できるよう構える。そんな彼を嘲笑うかのようにして、視界の端でチカリと何かが瞬く。釣られてそちらに目を向けると同時にシャッター音のような音が響き、ブツン!と意識が途切れてしまった。
倒れ伏す彼を見下ろす『主催者』は、あの人の遺言を執行するため、その能力を展開し始める。
『良き上映会となりますよう、全力を尽くします。どうぞごゆっくりとお楽しみ下さい』
音声とともに、眩い光が溢れ出した。