プロローグ

プロローグ


何も無い平凡な日常、親から継いだ技術を漫然と修練しぼんやりと学生生活を送る。そんなつまらない日常を続けていくのだろうなと思いながら迎えた夏休み

何も起きず何時ものように時間が進んでいく、そんなはずだった。

満月が彼女を照らす、欄干(らんかん)の上に立つ姿はまるで絵物語からそのまま出てきたような美しさを讃えている。

「━━━察するに、貴殿が私の喚び人(マスター)か?」

この日、俺は彼女という運命に出会ったのだ。



京都府某所、とある高校にて

「というわけで今日から夏休みだ、羽目を外しすぎるなよー」

担任の注意を聞き流しながらクラスメイトたちは夏休みにどこに遊びに行くか等で盛り上がっている。

かく言う自分は特に友人もいないのでさっさと帰るのだが。



「夏休みだったとしてもやること変わらないんだよな」

日が沈み外では街灯と店の明かりしかない夜、たまに来るお手伝いさん以外誰もいない家の中でポツリと呟く。ひたすら加工を施した紙に印を墨で刻むというのは中々に精神に来るのだ。独り言ぐらいはしてもいいだろう。

印を刻み終え筆を置く、印を刻んだ紙に手をかざし詠唱を紡ぐ。

「…解錠(セット)」

体から淡い光が溢れる、

───魔術回路、魔術を行使するために必要な擬似神経。それを開くためには人により様々なイメージが必要になる。自分は南京錠を開くイメージだ

「身は紙に、血は墨に、汝は我、我は汝」

詠唱を紡ぐにつれ印の刻まれた式が動きだす

「汝の目は我が目、汝の耳は我の耳、繋ぎひとつとなる…」

詠唱を終えると式が自立し動きだす、部屋の片隅にある箱の中に自ら収まり回路の光が落ち着く。

日課の式作りはこれで終了だ。あとは回路内に魔力を循環させるだけ

自分──神永 隼人(かみなが はやと)が扱える魔術はこれだけだ。親から継いだのも式を作る術法とそれを操るだけの簡単なものだけだ。これでは到底魔術師と呼べない、惰性で式をため続けてるだけの魔術使いだ。

「…もうこんな時間か、さっさと課題済ませて寝るか」

そんなことを言いながら学校鞄から課題を出そうとするが中には入っていない、課題を入れたはずのファイルが入ってないのだ

「しまった、学校に忘れたか」

明日に取りに行ってもいいのだが昼間だと部活の生徒などに絡まれるかもしれないという面倒くささと今ここで取りに行く面倒くささを天秤にかける

「…今取りに行くか、その方が早い」

そんなことを言って鞄を片手に夜の学校に向かうのであった


神永side out


???side in

━神永が夏休みに入る前日

京都の某所、ある屋敷の地下室にて少女が魔法陣の前にて儀式を行っていた。


「素に銀と鉄。

礎に石と契約の大公

降り立つ風には壁を

四方の門は閉じ、王冠より出で、

王国に至る三叉路は循環せよ」


身体には幾重もの刻印が浮かび上がり魔力が迸っている



「(みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。みたせ。)

閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。」


魔法陣の中央には赤い具足の欠片が置いてある。


「――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」


魔法陣を中心に魔力が渦巻く、魔力による旋風が立ち上り少女の髪を持ち上げる


「誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。


されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。

汝、狂乱の檻に囚われし者。

我はその鎖を手繰る者ーー。


汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」


魔力が収束し光が地下室を包み込む──────


「…成功、かしら」

光が収まり、舞い上がった塵が晴れる。

そこには金髪の偉丈夫が斧を片手に佇んでいた。

その存在感と帯電している肉体は人では無いことを如実に現していた

瞼を開き透き通るような碧眼で少女を見る


「サーヴァント、バーサーカー。召喚に応じ推参した、問おうアンタがオレの喚び人(マスター)かい?」


???side out



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