プロポーズ
「ティーチ!今日街であなたの読みたがってた本見つけたわよ、一緒に読みましょ!」
「おォ、そりゃラッキーだ!まァ座れソフィア」
愛する男に手招きされ、ソフィアは嬉しそうに駆け寄る。時折趣味の合う本を2人で読み漁り、毎晩内容を語り合っている。主に考古学に纏わる本であるが。
眠る事の出来ないティーチにとって、仲間たちが睡眠をとっている夜は退屈で孤独な時間であった。ソフィアと出会うまでは。
彼女はティーチの事を気に入り惚れ込んだようで、積極的にアプローチを始めた。
だが彼女はよく言えば素朴、ハッキリ言えば地味な外見。さらさらの金髪と美しい碧眼の持ち主ではあるが、顔立ちは至って平凡。
しかしティーチは女遊びこそ手慣れているが、本気で惚れられる事など産まれて初めてであった。優しく気品があり、底抜けに明るく、趣味である歴史研究の話も捗り、心底愛おしそうに自分を見つめてくる彼女にやがてティーチも惹かれていった。きゃっきゃと楽しそうにしているソフィアを横目に見ながら、彼は口を開いた。
「なァ、ソフィア」
「ん?」
「お前、おれの妻になる気はねェか?」
「…?今なんて?」
「お前、おれの妻になる気はねェか?」
「あ、えっ?」
今まで好意すら見せなかった想い人からの唐突なプロポーズに、さすがのソフィアも動揺を隠せない。目を見開いて口をぽかんと開けていたが、やがて確認のためこう尋ねた。
「…ティーチあなた、私の事好きなの?」
「ゼハハ…あァそうさ!オメー以上の女はいねェ!おれと共に生きようぜ!」
彼に褒められたのはこれが初めてだ。ティーチからのプロポーズ、ソフィアがこの世で一番欲しかったものだ。
「私を愛してるの?」
「…だから、そう言ってんだろうが」
頭を掻きながら目を逸らすティーチに、ソフィアは感極まって抱きついた。
「嬉しい!その言葉ずっと待ってたわティーチ♡私も愛してるわよ」
「全く物好きな女だぜ、ゼハハハハ!」
これが静まった白ひげ海賊団の船内で、最凶最悪の夫婦が誕生した瞬間である。