プロポーズを受けるエース概念
トレエスに脳ミソ焼かれまん民なんだろう、今日はいつもと違う。
それはデートの始まりから感じていた。
それはそうだ、トレーナーさんがビシッとしたジャケットを来ていたんだから。
いつもはラフなシャツにズボンなのに、どうしたのか聞いたら
「いつもエースがオシャレしてくれてるからね。俺も今日はちょっと気を使ってみたんだ。変じゃないかな?」
なんて言ってたけど、確かに格好いいし、いつもより更に大人びているというか、なんだか、そう惚れ直したのは間違いない。
でも今日は何かの記念日でもないし、デートも普通にブラブラするだけの筈だった。筈だったんだ。
それに、おかしいのはそれだけじゃない。いつも通りデート中もずっと手を繋いでくれたし、道路の左側歩いたり、あたしに所々で気遣いをしてくれる優しさもいつも通りだった。
でも何だか今日は妙に落ち着きがなかった。まるで慌ててる人が無理矢理平静を保ってる振りをしているような感じだった。
もしかしてあたしに何か変なところがあったのかも知れないから、一応何かあったのか聞くけど「ナニモナイヨ」と明らかに何かある返事をされた。
なんだか、デートしてるのに別の事を考えてるみたいで、少し寂しかった。
それでもずっとあたしの手を離さないでいてくれて、優しいままだから、深く踏み込めなかった。
そのまま日も沈んで、今日の夕御飯どうしよう、何か買っていこうかって話して、デートも終わりかなって頃になって、トレーナーさんが突然
「ちょっともう一個だけ行きたい場所がある」
って言い出して、私の手を引っ張ったんだ。
突然だったし訳もわからなかった。それでもトレーナーさんが真剣な顔をしていたから、流されるままに着いていったんだ。
そして、着いたのはトレセン近くの、町を見下ろせる公園。
どうしてここに来たのかも分からないし、トレーナーさんはトレーナーさんで何も言わないしで、ただ困惑してたんだ。
まあ、それだと埒が開かないから、何でここに?って聞いたんだ。
そしたらトレーナーさんは深呼吸して言ったんだ。
「エース、いやカツラギエースさん。」
フリーズしたよ。突然名前呼ばれたと思ったらさん付けされたんだから。
でも何となく、この後の事が心のどこかでは察せたんだけどさ。え、嘘まさかって感じで、もうパニックだったんだ。
「君と出会ってからの3年間、君をトレーナーとして支え、君にウマ娘として支えて貰って、俺はここまで来れました。」
もうその時点でヤバかった。色々な物が込み上げてきた。多分それはトレーナーさんも。
「でも俺は、君の3年間だけじゃ嫌なんだ。トレーナーとウマ娘としての関係だけじゃもう満足できない。」
トレーナーさんが後ろに手を回す
「君のこれからの生涯を、全て、支えさせて欲しいんだ。」
トレーナーさんが四角い箱をあたしの前に持ってくる
「だから君が卒業したら、僕と結婚してください。」
そこにはキレイな指輪
あたしはもう嬉しくて、返事もしないでトレーナーさんに抱きついて、思いっきり泣いた。
トレーナーさんは多分指輪が落ちないか心配だったのかも。
少しだけ時間を置いてから抱き締めてくれた。
あたしが少し落ち着いたくらいに、トレーナーさんが恐る恐るって感じで
「エース、それでその、返事聞かせて貰える?」
って聞かれた、だからあたしは少しだけ腕の中から離れて、顔を見て
「はい。」
って答えて、また泣いた。
トレーナーさんはそんなあたしを撫でながら「ありがとう」って言ってくれて、今度はトレーナーさんも泣いてた。
そしてまた落ち着いたら、あたしの手をとって、あたしの指に震えた手で指輪を嵌めてくれた。
あたしは、トレーナーさんにまた抱きついた。
そしてそのまま──
なんだかいつもと違う、帰り道
いつも通りトレーナーさんと二人で手を繋いで歩く道。
いつも通りトレーナーさんが左に立って、あたしが右
ただ違うのは、繋いだ手に光る指輪
そしてこれからはそれがあたしの、あたし達のいつも通りになるんだって、そう信じてる。