プロポーズのやり直し
「じゃ、じゃあ言うぞ……?」
「は、はぃ……!」
思わず声が裏返り情けない返事となってしまった。
初夜というものを迎えた翌日の朝にルフィから「告白とプロポーズをやり直させてほしい」と頼まれた。
あの時も今みたいな情けない返事をしてしまった気がする。
それから数週間後、お互いどこかギクシャクしつつもほぼ毎晩ベッドで肌を重ね合う欲に従うような生活をしていた。
プロポーズの内容に柄にもなく頭を抱えるルフィと、それをもじもじしながら待つ私。
しかしとうとう決心がついたようで、こうしてお呼び出しを受けた。
「あれから色々考えたけどよ…やっぱ洒落たこと何も思いつかなくて…その……」
「うん……」
「そ、その……お前が、好きだ…!ウタ…!他の誰よりも…だから、おれと…結婚してくれ…!!」
「は、は、ひゃい…!!……あっ、はいっ…!!」
再び声が裏返り、あろうことか言い直す羽目になってしまった。
ぎこちない返事になってしまい羞恥で思わず手で顔を隠す。
恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。
「ひゃー…」という悲鳴が思わず漏れる。
指の隙間からチラッと覗いた夫の顔は、私と同じくらい赤面していた。
きっと自分も今あれくらい顔を赤くしていると思うと、余計に恥ずかしくなってしまった。
好きな人に面と向かって婚約を言い渡されるのは、こんなにも恥ずかしくて、ドキドキして、顔が熱くなって、くすぐったくて──
「……ねぇルフィ」
そして──
「私…ルフィと結婚できてよかった」
こんなにも幸せ。
「……おう!おれもウタが奥さんでよかった!」
「お……奥さん…//」
こうしてプロポーズのやり直しはぎこちなくも無事完了した。
夫婦になってもう一度プロポーズをする。
何か私たちらしい、かな?
「ルフィ……そ、その……しよ…?誓いのキス……」
「おう……」
結婚当初は特に何も意識してなかった気がする。
ただ唇同士をくっつけるだけの行為だと、そう思ってた。
それが今はどうだ。
顔が近づくだけで心臓の動きは速くなり、鼻息がかかるだけで何かがはじけそうになる。
「んっ…//」
やがて私たちの唇同士が重なる。
口先から伝わる温もり。
その接吻が、私の中にある愛の器に幸せの蜜を注いでいっぱいに満たしてくれる。
だが、そこで終わらないのが今の私たちだった。
舌を絡めこそしないものの、互いに相手の唇に貪るように吸い付く。
もっと、もっと欲しい。
ルフィの手が私の背中と腰に回り、私も両腕をルフィの首根っこに巻きつける。
体がぐいっと引き寄せられ、私の胸の柔らかい部分がルフィの丈夫な胸板によって押し潰される。
腰に回された手がお尻の方に伸びてきて、優しく撫でてくれる。
静まり返った部屋に水音だけが響き渡る。
ようやく唇の密着が解かれた。
どれくらいそうしていたのかはわからない。
何十分もしていた気もするし、ほんの数十秒だった気もする。
離れた後も透明な糸が名残惜しそうに二人の唇を繋いでいた。
「ウタ……」
「うん……行こ、あなた…」
お互いの目的は一つ。
二人で抱き合うようにして愛の巣へと向かう。
もう何回目かもわからない。
最早時間帯など関係なくなっていた。
でも、いいよね?
私たち、夫婦なんだから。
「ねぇあなた」
私たちに負けないくらい、元気な赤ちゃん作ろうね♡