プロテゴ(物理)
ただその日はいつも通り、ころころと姿が変わる無茶苦茶な先輩に連れさられるように密猟者狩りを行っていた時の事。
いつもと違うのは自分とそうかわりない年齢の子供が密猟者集団と供に行動していた事。その瞳は他の大人たちに対しての怯えが強く、魔法生物への罪悪感も顔色から伺えることによりあらかじめ先輩からも「出来るだけ穏便に、それか素早く無力化したほうが良さそうだ」と意見を一致させた日だった。
突然現れた二人組によって無残に散ってゆく集団にパニックに陥った子供はあろうことか呪文飛び交う中心部…自分、アルバスの方へ走ってきた。突然目の前に現れた子供に狼狽える事なく、冷静にインカーセラスでミノムシのように転がす事で子供も「うわぁああ!」と地面に倒れる事になった。
しかしその瞬間、先輩がバッと此方へと視線も、体も振り向いた。
完全な隙だらけのソレを見逃すほど敵も甘くなく、エクスペリアームスによって杖も落とされ近距離で光る攻撃呪文で予備の杖も出す暇無い。「先輩!」慌てた自分の声が虚しく響くと思った。思っていた。
「プロテゴォ!!」「ぐがぁ!」
響いたのは先輩の盾の呪文と敵の悲鳴。見えたのは敵のこめかみに放たれた鎌のように鋭い先輩の蹴りだった。
魔力のまの字も無い純然たる物理である。
一緒呆けるもすぐにクルリと思考を切り替え未だに口をぽかりと開けた敵に視線を向け直す。
ドシンドシンと敵を地面に叩きつける音ともに聞こえる「ちょっと、ビックリ、しちゃったじゃんかぁ!」先輩の叫びを後ろから聞きつつ(とりあえず後でお説教しよう)と己の中で決めたのであった。
〜おまけ〜
「え?何であの時振り向いたのかって?…あーあの子供の声がね?アルバスの声とちょっと似ててさぁ。頭じゃ完全に違うって分かってるのに振り向いちゃったんだよねぇ。杖無いし敵は近いしで驚いちゃった。」
「だからといって足が出るのは先輩だけだと思います」