フルルドリスが吸血鬼の王の花嫁となる話
ベリーメロン「ぐっ……クソっ……」
ドラグマ最強の女騎士にして、聖女フルルドリスは膝をついて相手を睨み付けていた。目の前に立つのは筋骨粒々の巨大な怪物。
ヴァンパイアの始祖と呼ばれるソレの豪腕は、フルルドリスの剣をも砕いて地に伏せさせる。
「本来ならば……この程度……」
立ち上がろうとするが力が入らない。遠征中に突如開いたホールへ落ちたフルルドリスは、知らない世界で放浪を続け、巡りめぐって人に仇なす怪物とされた吸血鬼を討伐することになったのだ。
しかしこの世界に来てから聖痕は安定せず、ドラグマの裁きの雷すら撃つことができなくなった。
それでも街の娘を欲する怪物を、エクレシアを妹のように可愛がるフルルドリスが放置できるわけがない。重い身体を引きずって戦いが始まったのだ。
「卑怯な、魔物め……」
メキメキと音を立てながら目の前の怪物が収縮していく。豪腕は細腕に、紫がかった鋼の肉体は病的なほど青白い肌に。怪物という名がふさわしかったその顔は、端正な美しい男の顔に。
その姿に騙された。この程度なら敵ではない。斬り伏せるのみ。その目論みは始祖へ変化しての不意打ちによって崩され、今に至る。
「やめ、ろ……」
ヴァンパイアの始祖、いや今は吸血鬼の王(ヴァンパイア・ロード)と呼ぶが正しいか、彼はフルルドリスの妖艶な肢体をしげしげと眺めていく。
戦いの最中で砕かれ、裂かれた鎧とその服は、フルルドリスの肌を隠す役目も持てない。
くつくつと笑うロードはフルルドリスを容易く抱え上げ、寝床のベッドに放り捨てた。
「っっっっ!!」
何をされるのか、察したフルルドリスは舌を噛もうとしたが間に合わない。ロードの瞳が光れば弱った身体は完全に力が抜けて、代わりに熱く火照っていく。
「んんっっ……!」
騎士らしく女を捨ててきたフルルドリスの口から、甘い女の声が漏れる。ただロードが露となった乳房を揉みしだいた、それだけなのに。
ぐにぐにと形を歪ませる乳房、その先端を遠慮なく引っかかれればフルルドリスは背筋をのけ反らせた。
「ひゃめ、ろっ……くそっ……ひうぅぅっ♡」
のし掛かられて、ロードの指が洪水となった陰部を撫でる。グチュグチュとナカを掻き回されれば、フルルドリスのものとは思えない可愛らしい嬌声が上がった。
「はぁはぁ……ころ、せ……んんぅぅ、んぐっ……んむむっ♡」
唇を無理やり奪われて口内を掻き回される。情熱的なキスだが、フルルドリスにとっては屈辱と恥辱以外の何物でもない。されど強制発情させられた身体は自分の物とは思えないくらい敏感で、着々と準備が進められていた。
「あっ♡んぐっ……けがらわしい、バケモノめ……」
口を解放されたフルルドリスは、睨み付けながら毒づく。汚物を見るような目だが、その瞳は確かに快楽に濡れていた。
その精一杯の威嚇と罵倒は、ロードの支配欲を煽るだけでしかない。
ヴァンパイアの腕力で抱え上げられたフルルドリスは、背中を向けるように彼の膝に降ろされていく。その先には細身の男が持つとは思えない凶悪な肉の槍が見えていた。
「ま、さか……やめろ!クソ!ころせ!お前のモノになど……んぎぃぃっっ!」
叫ぶフルルドリスを無視してロードは肉の杭をフルルドリスの中に挿入していく。もはや棍棒のように歪なそれは、鍛え上げられたフルルドリスでも一瞬意識が飛ぶほどの痛みだった。
「あ、ぐっ……私が、この程度で……」
隙を見せれば殺してやる!という一心でなんとか気を保つフルルドリス。しかしロードはただ犯すだけで満足などしなかった。
「ぐっ……な、にを……ガッ、アアアッッッ」
首に走る痛み。ロードがその牙を以て噛みついたのだと悟ったのはすぐ後の事。痛みとは別の強い熱に混乱するフルルドリスへ、ロードは告げる。
お前はこれから吸血鬼になり、この王の花嫁になるのだと。
「な、にを……バカなことを……んんっ♡」
腰が突き上げ始める。挿入だけで激痛を伴ったはずなのに、フルルドリスの身体は何故かそれを快楽と受け取っていた。
意味がわからず混乱するフルルドリスだが、ロードはさらに腰を打ち付けていく。
「んぐっ……あっ♡なんだ、これはっ……んあっ♡」
増えていく嬌声。同時にフルルドリスの身体に変化が訪れていく。
まずは聖女の証したる聖痕がゆっくりと消え、代わりに下腹部に謎の紋章が浮かぶ。
爪は伸び、瞳孔は縦に割れ、八重歯が牙へと変化していく。
否応のない変化に、フルルドリスも流石に震え上がった。
「やめ、ろ!んあっ♡吸血鬼になど、私はっ……ああっ♡」
自分の身体が別のものへ塗り替えられていく不快感。フルルドリスは必死に抵抗するが、ロードが手放すわけもない。
犯されながら変化していく身体に、フルルドリスはとうとう泣き叫ぶがもう後戻りはできなくなっていた。
「やだ……やめろ……私は、帰るんだ!あの子の元に……やめ……あああっっっ♡♡♡」
変化が完了すると共に注がれる王の子種。激痛を伴っていたはずの身体には、もはや痛みがなく、むしろ軽やかだったが、抵抗する思考は湧いてこなかった。
おめでとう、我が花嫁よ、眷族として、愛奴として愛し続けてやろう、とロードが囁く。
まず最初にやることは、花嫁に子を宿らせること。
「うそ、だ……私は……ああっ♡」
再び犯され始めながら、フルルドリスは嬌声をあげることしかできなかった。
その夜は、延々とフルルドリスの嬌声が城に響いたという。
――エクレシア、すまない……
呆然と椅子に座り込みながら、フルルドリスはひたすら懺悔していた。必ず守ると約束した妹に、二度と会えないという事実に。
膨らんだ腹を蹴る感触が、愛おしいと思ってしまう自分が忌々しく、されど死することすらフルルドリスは許されない。
生死も尊厳も心も身体も、全てがあのロードの手に握られている。
「あ……また蹴った……」
銀から白へ色の抜けた髪、血のように赤く染まった瞳、怪物のように尖った牙、死人のように青白い肌。
この身体は太陽の下に出ることも許されず、ロードによって開発されきっていた。
「すま、ない……弱い姉で、すまない……エクレシア……」
呆然と涙を流しながら、フルルドリスはただ絶望に堕ちていく。