フラウ:ダークウィドウ

フラウ:ダークウィドウ


フラウは本来冒険者をやっているような身分の存在ではない。

リリアンテ王国第三王女、それがフラウの本来の身分だった。

通常ならどこかの国に嫁入りしてお世継ぎを産んでいるはずの彼女はいまこうして冒険者をやっているのは魔族との戦争が原因だ。

彼女の国は元々魔族領と面していたため小競り合いや揉め事が多かったのだが、彼女の代でついに戦争が始まったのだ。

これにより貴族はたとえ女性だとしても鎧を纏い、剣を振る能力が必要だという風潮が広まった。

そのため本来は戦闘とは無縁であるはずのフラウも幼い頃から戦闘というものを叩き込まれながら成長させられた。

フラウに剣の才はなかった。

フラウに軍人の才はなかった。

彼女は家族である王族の中でも弱く、中級騎士より少し強い程度の強さしかなかった。

…まあ世間的に見れば別にこれも弱くはないのだが。

しかし彼女の家族と比べた時の相対的な弱さはコンプレックスを作り出し、それを誤魔化すために自分の理想的な騎士像を真似たペルソナを作った。

王家の汚点とまで囁かれても彼女はペルソナを取ることはなかった。

フラウは強くはない。

しかし人を惹きつけるカリスマというものを持っていた。

彼女を中心として作られた王国騎士団はいくつもの戦場に赴き輝かしい勝利を飾っていた。

信頼できる仲間がいたからこそ彼女は頑張れた。頼れる騎士様として振る舞えた。

改めていう、彼女は強者ではない。

単騎で戦局を変える化け物や英雄達と張り合える存在ではない。

だから彼女は本物の強者と戦わずに済んだ。

だから彼女は生き残った。

彼女は血まみれになっても諦めなかった。

仲間の屍を踏み越えてでも、屈辱の中他国に亡命することになっても、たとえ明らかに私が行方不明になること目的でガリッサのダンジョンに派遣されても。

自分の仲間達が家族が民達が、自分を信頼して待ってくれてるのだから。

彼女の亡命から3ヶ月後、リリアンテ王国は周辺諸国より滅亡と判断され、魔族領の一部として扱われることとなった。

この地域におけるあらゆる人民の生存は絶望的と見られており、この地域における魔族以外の住民は人類にあだなす"準魔族"と指定された。

彼女の騎士ごっこはまだ終わらない。


〜〜〜〜〜〜〜〜


「…ここは?」

フラウが目覚めた時彼女は暗い空間に浮かんでいた。

あれから何が起きて、自分がどうなっているのかさえもこの一寸先も見えない闇の中じゃわからない。

彼女は寝起きしてもぼんやりしすぎている頭に疑問感じつつも身体が動かないか確かめる。

…少しだけなら動く。ただそれは繭の中に包まれた蚕が少しだけ身を動かす程度の話であり、ここから逃げ出すことができるようなものではなかった。

しかし徐々に頭が冴えてきた彼女は身体にいつもよりも身軽であることに気づく。

「!鎧…鎧は!?私の…大事な鎧…」

彼女は鎧が周辺にないか大慌てで手足をばたつかせるが…周りが一切見えないこの空間では何にも見えず、そして手足が届く範囲に鎧はなかった。

「…そうか。無くしてしまったのか…これであの王国を…戦いを思い出させてくれるのはこの記憶だけになってしまったのか…」

彼女は諦めない。もう何度も失ってきてここにいたから。自分に残るものがそれだけだったから。

しかし感傷にひたる彼女に急な快感が押し寄せる。

「ングッッ!?!?…な、なんだ一体…は?お腹に何がが突っ込まれて…オギュ!?!?こ…こいつはダークウィドウ!?いつのまにかこんなところガァァァッッ!?!?」

音も気配もなく忍び寄ってきた影の蜘蛛…ダークウィドウが異常発達した触肢をフラウの秘所に突き刺す。

「なっ…なんで!こんなことで気持ちいいわけ…イグッッ!!…ふざけないで!!モンスターの子なんか生むわけにはいかないんで…あっやめっ!!やめて!膣内に出さないでくれ!!やめっ!アキュッァァォ!!!!」

ダークウィドウは満足したかのようにそのまま去って行く。

意識が朦朧としながらもフラウは自分の飛ばした愛液がそこらじゅうに止まっているのを見て、ようやく自分が浮かんでいる理由を察する。

糸だ。粘着性の高い糸がそこらじゅうに張り巡らされており、足掻けば足掻くだけより強固に絡まるように設置されている。

…つまり武器も防具もないこの状況でいくら足掻こうとも積んでいるというわけだ。

仲間と家族を繋いでくれた黄金の鎧はなくなり、自分を導いてくれる王子様に捧げるはずだった初めてを下賤な虫によって無理やり奪われ、そして今は逃げられないように退路を詰められたことで腹のなかの精子が蠢き、成長するのをただ待っているしかない。

「…やだよ」

それに気づいた時、自分を支えてきたフラウの仮面にごっこ遊びに都合の良い願望にヒビが入る音が聞こえた。

「やだ…やだよぉ…誰か助けて…」

理想の騎士様が決して言わないような弱音をこぼしながらもフラウは自分を保とうと足掻き続ける。

膨らんだお腹も張ってきた胸も、助けの見込みがないことも、仮に助けられても蜘蛛に孕まされた女なんてもらってくれる人もいないし、王国を救う方法なんてないことも。

全て無視して彼女は目を瞑る。

わかってる。もう少しで目をつぶっていられなくなるってのは。

わかってる。その時自分が耐えないといけないのは。

けどさ

最期くらい夢見させてよ


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