フェリ猫とシュライグ
阿刀田酒瓶クラッシャーパン屋でバケットを買った。シュライグは店を出ると何か小動物が近づいてくる。ピンク色の毛玉がシュライグの足元にちょこんと座った。
「なんだこの生き物は」
シュライグの言葉に答えるようにメェと答えた。猫だ。その猫はシュライグの足に自分の匂いをつけるように体を擦り付けた。長い毛がシュライグのズボンに残った。
「来るか?」
シュライグの言葉に猫はただただ彼の顔を見るだけだった。抱き上げても特に抵抗する様子もない。
アジトに持って帰ることにした。
「へえ、なんとなく私に似てるわね」
その猫の金色の瞳はフェリジットと似ている。どこか雰囲気もそっくりだ。
フェリジットは猫の首あたりを撫でる。もっと撫でろと言わんばかりに体重を預けてきた。
「命名するわ。あなたは今日からフェリ猫よ」
フェリ猫は気持ちよさげに鳴いた。
二、三日のうちにフェリ猫はアジトに馴染んだ。
ご飯をたらふく食べたフェリ猫はもう眠そうにふらふらしていた。
「ベッドで寝るといい」
シュライグの言葉を理解したのかしてないのか、クッションの上で丸くなった。それを見てシュライグは夜の仕事に再び取り掛かった。
シュライグは寝ようとした。普段フェリ猫はシュライグと一緒に寝る。だが今日はクッションの上ですやすやと寝ている。
(わざわざ起こすのも悪いか)
シュライグは自分の部屋の扉を開けた。
フェリ猫は耳がピクリと動き、勢いよく駆け出した。そしてシュライグの足元にピタリと擦りついた。
「抗議しているのか?」
フェリ猫の不満げな鳴き声をシュライグは聞いた。
なぜ、寝るのに連れて行かないのか。ふまん。ふまんと言っているように聞こえた。
「分かった。入ってくれ」
フェリ猫は部屋に入るとシュライグのベッド上に飛び乗ってど真ん中を陣取った。
そしてそのまま眠った。
「……」
シュライグは仕方なくベッド端で体を丸めた。