フィガーランド・ガーリングの生涯 4章(後編)

フィガーランド・ガーリングの生涯 4章(後編)



ガーリングの予期通り、2年後麦わらの一味は再起した。ガーリングは珍しくこの動きに静観を決め込んだ。説得力のある理由無しに大規模な武力行使に打って出る事は五老星に反論の余地を与えてしまうからである。ガーリングはその理由付けに麦わらの一味を大いに利用する事にした。ガーリングは「自分の怠慢が生んだ災厄に精々苦しめ!」と内心吐き捨てた。

2年後も麦わらの一味は大事件を起こし続けた。「七武海ドン・キホーテ・ドフラミンゴの討伐及びドレスローザの開放」「麦わら大船団の結成」「ホールケーキ・アイランドの戦い」…

情勢が混迷を極める中開催されたこの年のレヴェリーにおいて決定的な事件が二つ起きた。「麦わら大船団によるチャルロス聖殺害未遂事件」と「CP-0によるネフェルタリ・D・ビビ誘拐失敗事件」である。

前者はチャルロス聖に浚われようとしたリュウグウ王国のしらほし姫を守る為にミョスガルド聖の庇護とフカボシ王子の依頼によって花ノ国の用心棒にして麦わら大船団の一員であった八宝水軍の首領サイとドレスローザ王国の護衛にして同じく麦わら大船団の一員であったトンタッタ海賊団船長レオがチャルロス聖を半殺しにして撃退した事件である。

後者はイムの意向でCP-0がビビ王女を誘拐しようとした所を悪ブラックドラム王国国王のワポル王が救出し世界経済新聞本社に匿った事件である。

ガーリングが長年抑え隠してきた憤怒、憎悪、恐怖は最早抑えられなかった。彼は下界への侵攻の実行を決意していた。

内心の決意から実際に命令を下すまでの暫しの間、ガーリングは色々な事を振り返った。

自分自身はかつてのロジャーやガープと同等かそれ以上に強くなったと確信していた。ロジャーは病に蝕まれ、ガープは老いお衰えた。だが自分は違う。日々の食事などありとあらゆる事に気を配りガーリングは少年の日以来風邪一つ引いた事は無かったし、老い衰える所か若い頃からひたすら強くなり続けていた。「自分は神であり人間とは違う!」その信念がガーリングに圧倒的な力をもたらした。

部下達もガーリングの理想に相応しい騎士に育て上げた。ガーリングは愛するシャンクス以外の四皇はリーダーの圧倒的手腕と実力に依存しきった脆弱な組織と俯瞰していた。そして、自分の騎士たちはそうなるまいと気を配り、部下達には高い知性と実力を身に付けさせる様にした。時に手厚く指導し、時には容赦なく粛清し飴と鞭を有効に使い分けた。長い年月をかけて、神の騎士団はガーリングが最高司令官になる前より質は遥かに上がり、量は遥かに増えた。爆発的に増加した人員は五老星に不信を抱かれないように一部をシャボンディ諸島に潜伏させる程だった。

幾度となく怒りを飲み込み、それを燃料に戦争の準備を整え、策を練り上げた。最早五老星の命令など無視する。逆らってきたなら奴らも粛清する!強い覚悟を持ってガーリングは戦争と大粛清へ踏み切った。

ガーリングは冷静に、しかし怒りが滲んだ口調でまず2つの勅命を発布した。「ネフェルタリ・ビビを逃走させたCP-0及びその縁者を全員処刑せよ。使えない道具は不要である。」「ゴミを庇ったミョスガルド聖及び、ドンキホーテ家の一族を全員処刑せよ。ホーミング、ドフラミンゴを筆頭にドンキホーテ家はゴミを生み出し過ぎた。天竜人として不適格である。」

マリージョアは血で真っ赤に染まった。彼らの血によって恐るべき大粛清の幕が開けたのだ。ガーリングは有能な仮面のCP-0達に見せしめと戒めを兼ねて惨殺された仲間達の遺体を見せつけ、天竜人達には『悪魔の一族』ドンキホーテ家の処刑を高らかに宣言した。

ガーリングは役に立たないゴミを大量に抹殺する念願を果たした。そして、暫くしてから一番重要な勅命を出した。高鳴る気持ちを抑えガーリングは言った。

「大至急海軍は軍艦10隻をシャボンコーティングせよ。そして海軍本部中将10人及び大将緑牛を軍艦に乗船させよ。『ゴミ掃除』を行う。」

反天竜人的な人物及び該当者を生んだ国民の抹殺と奴隷を大量に開放しミョスガルドを堕落させ愛くるしいチャルロス聖を傷つけた忌々しい下等種族である人魚、魚人、小人の絶滅。これがいよいよ実現しようとするガーリングの夢であった。

騎士団達と共に密かにマリージョアを出る前、ガーリングは敬愛する主君、イムにこう言った。

「イム陛下、私めは貴方様の敵を悉く討ち滅ぼして参ります。」

世界が地獄の底へと墜ちるまで、後一日。

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