フィガーランド・ガーリングの生涯 2章

フィガーランド・ガーリングの生涯 2章



2.~理想の完成~青年たちは苛烈な信念を見た

何処か愛くるしさすらある少年だったガーリングも精悍な若者に成長した。

ガーリングはシェイガルシア・サターンとより高度な勉学に励み討論したり、イーザンバロン・V・ナス寿郎聖と実戦形式で剣を交え腕に磨きをかける日々だった。

自分と同じ様に賢く強い五老星候補達との交流はガーリングにとって満ち足りた物だった。

ナス寿郎の名前を始めて聞いた時、ガーリングは「変な名前だなぁ」とクスリと笑ってしまったという。これはガーリングが笑った貴重な場面である。現存しているガーリングの写真は常に凄まじい憤怒に満ちている。

時たま笑顔も溺れる充実した青春であったが、五老星候補達にガーリングは少しだけ不満を抱いていた。それは自分の理想が彼らに受け入れられなかった事である。

ガーリングは「この世の全ては天竜人の物ならば全ての王国を廃し、全ての下々民を我々優れた天竜人が奴隷として管理するべきだ!」「そして、我々に愚かにも我々に少し反対する者がいるならばそれを国を巻き込んででも抹殺するべきだ!」と主張した。

五老星候補達は「無闇に人民を殺せばいずれ我々天竜人にも影響がある」「人民をあまり軽んじない方が良い」「反乱の鎮圧は海軍が適切に処理する任務だ」「人民は雑草のように生えてくる物ではないのだから簡単に殺すな」とガーリングの唱える理想を否定した。

ガーリングは彼らに失望の念を抱き始めた。「我々天竜人はこの世の『神』では無いのか?ならばこの世界を我々の思いのままに動かすのは我々の使命ではないのか?」

やがて成人したガーリングは神の騎士団の任務に付き、父に従って任務を遂行していた。

そしてシェイガルシア達も五老星に任命され苦渋の決断を伴う政務に就いた。

五老星の考える世界政府や天竜人体制の維持による「最大多数の最大幸福」とガーリングの考える天竜人だけの「最小少数の最大幸福」という相違は少しずつ彼らの関係を越えて世界政府の体制に微細なヒビを入れ始めた。

Report Page