ファーストインプレッション

ファーストインプレッション


注意

・Mr.3とミス・ゴールデンウィークの出会い話

・ミス・オールサンデーも登場します(何なら彼女がだいぶ喋る)

・GWはリトルガーデン回の2年前にBWに入社した設定

・本編開始前の捏造

・Mr.3が喫煙者設定

・その他もろもろ

なんでも読めるぜという方はどうぞよしなに。





「Mr.3、あなたの新しい“ペア”よ。」

「...“ペア”だって?」

Mr.0、ボスの“ペア”のミス・オールサンデーが何かが描かれた紙を手に唐突に訪問してきて急に用件を言い出す。

ぼんやりと唇に挟んでいた煙草を指で挟んだ。

「ええ。貴方が前の“ペア”を密かに切り捨てたから、次を選んできたのよ。」

「あいつは甘すぎて私には合わんかったガネ。」

賞金首を中々狩ろうとしない反吐が出るほど甘かったあいつはそのまま海に置いてきた。

今ごろ海賊船で下っ端でもやっているか海軍に拿捕されたかそのまま藻屑になっているだろう。

「流石に次に同じようなことが起きればMr.0に通告するしかないから...これが最後よ。」

「最後でも何でも構わんが、今度は一体どんなやつなのカネ?」

「出ていらっしゃい、ミス・ゴールデンウィーク。」

その言葉に、扉の奥から一人の少女が顔だけを出す。

ピンク色の帽子、赤銅のような髪。

こちらを睨むその顔はどう考えても───世間一般で言う『クソガキ』だ。

「この子は14歳、まだ少女だけれどセンスは良いわ。」

「センス...一体何をやってここに?」

「写実画家よ。」

「こんなガキが、か?」

怪訝な顔をすると作品はあるわとミス・オールサンデーが手元の紙を広げる。

「...これは」

写実画家と呼ばれるだけはある。

石像と少女の並んだ絵だ。

そのどちらも質感が異様なまでに拘られていて、もしも色が着いていたならカメラ電伝虫で撮った写真と遜色ない。

「気に入ったかしら?」

「...戦闘能力はどうなんだ」

ふふ、と妖艶な笑みを浮かべたミス・オールサンデーはミス・ゴールデンウィークを再度呼ぶ。

ようやっと全身を出した彼女がパレットを持っていることに気がつく。

彼女はミス・オールサンデーに近づいて絵の具を無遠慮に手の甲に塗りつけた。

「...カラーズトラップ『笑いの黄色』」

「ふふ、あはは、面白くなくても笑えるって、ふふっ、やっぱり変な感じね、」

突然声を上げて笑い出したミス・オールサンデーにぎょっとしていると、ミス・ゴールデンウィークが彼女の手元の絵の具を布巾で拭う。

ミス・オールサンデーの笑い声が止まり、彼女は笑い過ぎて出た涙を指先で拭って続けた。

「...こんな風に、彼女は感情を塗り替えることが出来るの。」

「能力者カネ」

「いいえ、違うわ。海楼石を触らせても反応は無かったから、彼女は非能力者。」

なに?と思わず眉を上げる。

少女がぽつりとこぼした。

「この絵の具は特別製なの」

「私にも詳しく分からないけれど、彼女の持つ絵の具が能力の源らしいわ。戦闘能力というよりも補助に使えるわね。」

脳内でその有用性を考える。

戦闘能力は本当に少女そのものの力しかない。

「それでこの仕事が務まるのカネ?」

「与えられたならやれるだけはやってみせるわ」

「やる気は十分、ということね。」

「やる気だけで務まるというなら甘い考えだ。」

「...」

無表情でミス・ゴールデンウィークがこちらを見てパレットを構えた。

「あなたをさっきのミス・オールサンデーみたいにしても良いのよ?」

「...ふむ、気概は充分そうだ。」

面倒にならない為に手を上げて形だけでも降参の意志を示しておく。

「まあ精々“オフィサーエージェント”の名に恥じない行動をすることだな?」

ミス・ゴールデンウィークはじろりとこちらを見ながらもパレットを降ろす。

私の彼女の様子を見て、ミス・オールサンデーが頷く。

「さて、邂逅はこんなもので充分かしら。そうそう、こちらボスからの指令よ。じゃあ、私はこれで。」

「待てミス・オールサンデー、」

私の静止を聞くことなくそのまま彼女は出ていった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「なんてこともあったな...」

あれから2年経った。

彼女は今も私の横に居る。

「あら、良いことでも思い出してた?」

「君のことだよ。」

「わたし?」

聞き返しながら首を傾げるミス・ゴールデンウィークに思わず吹き出せば、わずかにムッとした彼女がこちらを見る。

「(少々怠惰ではあるが)随分と良いエージェントになったものだ、君も。」

「Mr.3がそう言ってくれるなら嬉しいわ。」

褒め言葉が伝わったらしく、いつものぼけっとした表情ではなくはっきりと笑った。

「...さて、そろそろ仕事を再開するとしよう。行くぞ、ミス・ゴールデンウィーク。」

「ええ、Mr.3。」

行き先は───リトル・ガーデンだ。

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