【ファインダーの向こう】

【ファインダーの向こう】



※今回のお話はブルーロックプロジェクトが一時終了し、烏氷を筆頭のブルーロックメンバーが大人になり、各々の道を歩んでいる世界選のお話です

※烏氷はお互いに🇫🇷プロチームに所属し、同棲している世界線です

※今回は日本に帰国した烏氷の梅雨の一コマのお話2本立てとなっております

※一本目はジューンブライドな衣装撮影をする烏氷、二本目は梅雨の湿気で髪のキマらないわちゃわちゃした烏氷の日常をお送りします


6月、日本サッカー境界より日本代表やブルーロック経験者、過去U-20代表選手等に某ブライダル雑誌とのコラボ案件により、ジューンブライドな選手達の写真撮影の依頼とそれに関する招集が行われた

勿論、過去ブルーロックにてプログラムに参加した現フランスチーム所属の烏と氷織も例外では無かった

氷織は両親との事もあってか、余り乗り気では無かったのだが烏は何故かこの企画に参加する気満々で氷織は不思議そうに問う


『烏……何でそんな乗り気なん?』

「日本帰りたくないんやろうってのは分かっとる、でもな、俺達の仲を知らしめて近寄って来るアホぉ無くすチャンスやん?」

『なッ!?////』

「嫌なん?」

『………////烏、迷惑や無いん…?ホモって誂われるで…?』

「誂う方がアホやろ?俺は本気でお前を……愛、しとるしなッ…!」


少し照れ臭そうに愛してるなんて、カラカラ笑いながら言う烏にどうしようも無く胸が熱くなってまう

ほんま………殺し屋烏が丸くなったなぁ…

僕のせいなんやろうけど…

でも、アレから僕もちゃんと気持ちを言えるようになったし、烏も傍に居て、お互いの気持ちや未来についてあの嫌な二人に啖呵切れる位にはなれたんやないかな…

今なら…烏も居るなら…一回日本帰ってみよかな…?


そうこうしている間にインタビュー取材と撮影の予定を取り付けて、日本に帰国する事になった

久しぶりの日本、ちょっとお米が恋しくなる

烏も粉もの食べた過ぎてウズウズしとったし、時にはえぇのかも知れない

日本行きの飛行機に乗り、海を渡ること半日……到着した頃にはすっかり夜で、コラボ先さんが用意してくれたホテルに泊まる事になった

ゆっくりバスタブに浸かり、温かいお風呂を堪能する

あっちには湯船に浸かる文化が無いから、広い浴槽なんか無く温かいお湯にゆっくり浸かるのも久しぶりだ

烏は相も変わらず行水の早さでさっさとシャワーを済ませて出ていってしまい、ちょっと寂しい…

ジューンブライドの撮影ってどんなんだろう…

白いタキシードとか、着るんかな…?

でも烏にはあんまり似合わへんかもなぁ…

前のオフの日にチームのおしゃれ番長にコーディネートされてた事があったけど、白とか明るい色の服が似合わ無さ過ぎて二人で爆笑して烏を怒らせてしまった事もあったっけ…


『出たよ〜』

「おー………ぉまッ!?タオルだけか!?パンツ履いとるか!?」

『え、履いてない方が嬉しいん?』

「ぃや、丈見えへんかったからフルチンかと思っただけや」

『〜〜〜〜〜ッ!/////』ポコポコポコ~


烏の変態〜!

流石にパンツ履いとるもん!

ボクサーパンツだから隠れて見えへんだけやもん!

ピラッとバスローブを捲られ確認される

烏はほんまにスケベなんやからぁ…

ボコボコ殴って、講義すると烏はケラケラ笑って受け流している

外方を向いて、自分のベッドに入ると烏は「ごめんって〜」と手を引いてコツンと額を合わせ合う


「ごめんって…氷織が嬉しそうな顔しとるから、可愛くて堪らんくて…」

『ぅ〜………////』

「風呂気持ち良ぉ入ってホコホコしながらニコニコ出て来たらかわえぇやん…な?」

『贔屓目やん…////』

「そら贔屓目で見るやろ?かわえぇ自分の恋人なんやから」

『〜〜〜ッ!!////』ポコポコポコ~!


ケラケラ笑う烏をポカポカ叩く

いっつも余裕そうに笑みを浮かべて僕を誂ってくるし、直球に可愛いとか好きとか言うし…僕ばっかり余裕ないみたいで悔しい…

烏に抱き込まれながらベッドに寝転がる

やっぱりこの時期はムシムシするし、くっついて寝るのはちょっとしんどい


『烏〜……暑い〜』

「確かに暑いわ………最後にちゅーさせてや」

『ん』


むちゅ…と柔らかい感触が触れる

優しい触れるだけのキスを数度落とされる

愛おしげに見つめて来てほんま烏って僕の事好きなんやなぁ…と

何やかんや両想いなの…嬉しいわ////

ベッドに潜り込んで明日に備えて寝ることにする

どんな撮影するんやろ?

ちょっと不安やけど烏も居るし何かあってもカバーしてくれるやろ…


―翌日―


梅雨の合間の快晴

空の青さが眩しい快晴、ちょっと暑いから流石に野外撮影は無いよね…?

烏は珍しくいつものツンツン頭や無くて、ワックス付けずに髪を下ろしてキャップ被っとる

やっぱりガチガチに固めてこの湿度と高気温だと烏もキツいんやな…

フランス…というか地中海を始めとしてヨーロッパは基本的にカラッと乾燥した気候やから、烏がお風呂上がり以外で髪下ろしとるの久しぶりに見たかも…

思わずコラボ先の取材の予定地へ向かう道すがら烏の髪に手を伸ばす

コシのしっかりしたちょっとザラついた手触り

烏と視線が絡まると、優しく微笑まれて手が腰に回される


「あんま余所見すんなよ?」

『うん……ごめん…』

「髪下ろしとる俺はイケメンかいな…?」

『………ぅん…/////男前で、ドキドキしてまうわ…』

「かぁわえぇ事言ってくれるやん…」


寄り添う様に歩く二人に、二人の姿を知る者達はその仲睦まじい姿に仰天の視線を送る

甘い雰囲気を醸し出しながら何処かへ向かう2人の姿を、週刊誌のカメラマンはその様を捉えていた


□■□■□■□■□■□


無事、コラボ先のオフィスに到着すると珈琲と茶漬けの菓子と共に取材のスケジュールを聞いていた

今日は室内でのインタビュー、翌日早朝に野外でのウェディングフォト風の撮影との事だった


z「此度は日本サッカー協会様からのコラボの案件にご協力下さりありがとう御座います!」

z「早速ですがインタビューさせて頂きますね」

「『はい』」

z「烏さんと氷織さんは日本代表育成機関たる“ブルーロック”を卒業なさる前からのお付き合いがあるとの事ですが…」

「そうですね、J1バンビ大阪傘下のユースチームのシニアからの付き合いですね 1個下のめっちゃ気になる奴って感じでした 第一印象は」

『出会った当初から烏の褒め言葉はセクハラチックでしたね…w』

z「今もファンの方から感謝祭などの握手会やトークイベントだと語彙が助平親父みたいって聞きますけど、以前からずっとそうだったんですねw」

「おい余計な事言うなや…」

『でも、その頃から烏は僕に対して世話を焼いて、気にかけてくれてましたね』

z「いい先輩ですね!では、烏さんから見て当時の氷織さんはどんな人でしたか?」

「あん時の氷織はどこかぽけ〜…っとしてて、連携は完璧に出来とるんです でも試合以外はちょ〜っと上の空な感じで放っとけへん感じでしたなぁ…」

z「えぇ!?結構意外ですね?ネオエゴイストリーグ中のバスタードミュンヘン所属中の間も現在も…あまりそういったイメージは氷織さんには無いですね…」

「今はあの時悩んでた悩みが吹っ切れたみたいで、結構しっかりした感じなんですよ」

『ちょっ…烏、やめてや………恥ずかしぃ…////』

z「(イチャつき過ぎでは…?)」

z「では、改めましてお二人に好きなタイプや、理想の結婚生活ですとか有りますか?」

「俺は聡明でお淑やかな女性ですね、しっかり者でお互いの意見や状況を尊重し合える人が結婚生活を共にする相手としても望ましいですね」

『………いまいち、こういう人が良いなって言うのは無いんですけど…強いて言うならば…寂しい時や辛い時に、傍に居て、安心させてくれる人…ですね』

z「グイグイ来る方よりかは、ある程度お互いの距離を大事に出来る方がお二人共好みなんですね…」

z「あ、折角ですしやってみたい結婚式の形式って有りますか?ほら、ホテルウェディングとかガーデンウェディングとか、後は和装で神式ですとか!」

「ん〜………相手のウェディングドレス姿は見たいんですがね…俺が絶望的に白が似合わんっていう問題があって………お互いにしっかりキメた状態にするなら神式結婚式で和装ですかね…」

『旅人くん、よくチームの皆に白色が似合わへんのイジられとるもんね…w確かに、新郎新婦の片方だけ異様に似合ってないってのも変やろし、和装の方がえぇかもね』

z「氷織さんは結婚式でやってみたい物とかあります?」

『う〜ん………僕は小ぢんまりとしてた方が好きですかね あんまり賑やか過ぎるのも…』

z「成る程…結構お二人共厳粛で静かな式がお好みなんですね!ですとやはり此方としてもオススメの形式は和装の神式での結婚式ですね!」

『紋付袴の烏、格好えぇやろねぇ』

「氷織に白無垢絶対似合うやん!」

z「(今シレッと氷織さんに白無垢着せましたね!?)」


―それから1時間後…―


z「はい!以上で本日のインタビューを終わります お疲れ様でした!」

「『お疲れ様でした〜』」

z「明日は早朝5時からウェディングフォトの準備になります タキシードや袴などの着付けを行いますので遅れ無いようお願い致します 午前からお昼までが西洋式のウェディングフォト撮影、午後の夕方頃から神式形式でのウェディングフォト撮影になります」

「『はい』」


ひとまずコラボ先のブライダル雑誌のインタビュー取材を終え、用意されたホテルへと戻っていく


『………烏、途中で僕の白無垢姿とか妄想してそのまま喋ってたやろ?』

「いや〜……だって氷織と結ばれたいやん?エロいし、知的でしっかりしとるし、放っとけへんもん」

『〜〜〜〜ッ/////』

「な、これを期に真面目に結婚、考えてみぃひん?」

『………/////ん…ぅん…』

「ほんま?じゃ約束な?」


そう言って小指を差し出す烏

氷織はおずおずと烏の差し出した左手の小指に自身の右手の小指を絡め、指切りを交わす


「ほなあんま夜更かし出来んし、今日は早めに寝ようや」

『うん……お風呂どうする?』

「先入りぃ インタビュー緊張したやろうし、熱い風呂入ってリフレッシュして来ぃ」

『おおきに、先入ってくるね』


バスタブに浸かりながら氷織は先程絡めた小指を眺めていた

烏が差し出した左手の薬指に煌めくお揃いのプラチナリングの妄想をする

今はフランスに居を構え、国籍も取得している

彼方に戻ったら、本当の家族になる為の準備をしても良いのかもしれない…

思わずした妄想に、興奮して頭に血が上ってクラクラする

逆上せて心配させるのはまずいと、薄まりかける意識の中浴槽から出てシャワーを浴びる


『明日………白無垢、着せられちゃうんかな……////』


烏の冗談とは分かっていても、◯クシィのスタッフさんの反応からしても「是非やりましょう!」という気概を感じて恥ずかしくなる…

怖いような…恥ずかしいような…嬉しいような…落ち着かない気分になってくる…

バスルームで考え事に熱中してると、ガラッと磨りガラスの扉が開くと、ひょっこり顔を出す烏


「大丈夫か?逆上せてないか………おい顔真っ赤やん!?水持ってくるから待っとり!」


僕の顔、相当赤かったみたいで烏は慌ててお水を取りに部屋へと戻っていく

さっきまでお風呂で色々考えてたし、やっぱり逆上せちゃってたかも…

お風呂の淵に手を掛けて寄り掛かりながら烏を待つ

ちょっとぼんやりしつつも、お風呂から烏に抱っこされて連れ出される

ベッドに寝かされて頬や額に触れる烏の手、「あっついな………水飲めるか?飲ませるか?」と問い掛けられて首を横に振れば、お水を口に含んだ烏の顔が近づいて、口移しで飲まされる

冷えたお水が喉を通っていくと、少し意識がはっきりしてくる


『………からす、』


手を伸ばして、その首にすがり付く

少し烏の肩が跳ねたけど気にせず戻りつつある腕の力を強めた


「落ち着いたか?何で逆上せるまで入っとったん?」

『………◯クシィの人の提案と、烏の僕の白無垢姿が見たいって…話のこと、ずっと、考えてた…』

「ッ!……お前さっきまでそんなかわえぇ事考えとったん?ほんまかわえぇ奴」

『ん…』スリ…

「逆上せてもうたし、明日も早い、もう寝てまうか」

『ん~……一緒に寝る…』

「んッ!!//////」


無防備な氷織のアクションに烏は悶えながらも、早朝からの撮影に備え二人でベッドに入った


―翌日―


また日も昇りきらず、ほんのりと薄暗い頃から烏と氷織は今回のコラボ先である◯クシィのウェディングフォト撮影部署から指定された宿泊先とは別のホテルへと向かっていく

ホテルウェディングの撮影の為に別途会場のあるホテルへと向かう二人

少しまだ眠たげな目元を擦りながら、氷織は烏と手を繋ぎながら目的のホテルへ向かっていく

烏はまだ眠たげな氷織の手をギュッと握りながら指定された別ホテルへの道をマップアプリを見ながら目指していた


「お、着いたで氷織」

『ん、ありがと』

「まだ眠いか?待ってもらうか?」

『大丈夫、歩いて結構目も覚めたし…撮影のスタッフさん待たせる訳にもいかんし、行こか』

「分かった」


件のホテルの受付へ用件を話すと、◯クシィのウェディングフォト撮影部署の面々の待つホテルウェディング用のホールへと通された


z「お疲れ様です!朝早くからご足労頂いて申し訳ありませんね」

「いえいえ」

『早速着付けですか?』

z「あ!いえいえ少し休憩とセットの用意も有りますので十分後から着付けですね」

「『分かりました』」


一時セットの用意、着付けの用意等の都合も有り10分の休憩を設けることとなった烏と氷織

昨日のインタビュー取材の担当者と談笑を交えながら麦茶を頂き、準備が整うのを待っていた

そして暫くして準備が整うのと、控室にてスタッフによる着付けとメイクをするのだが…


着「………ッw」

メ「…………んッw」

「やっぱり似合わへんスか?」

着・メ「いえそんな事は!」

『メイクさん、前髪上げてみたら少しはマシになるかも』

メ「確かに烏選手のおでこって貴重ですしね!烏さんちょっと前髪上げますね?宜しいですか?」

「お任せします〜」


ほんの少し前髪を上げるだけでも違い、正面からの圧が少し和らぎ、切れ長の瞳も少し優しげに見える


メ「おぉ〜!烏選手の顔面力の圧が和らぎました!結構いつものお馴染みの髪型だとしっかりした顔立ちも相まってちょっと怖い印象でしたが、顔の雰囲気が優しくなりましたね」

着「じゃあヘアセットとメイクに合わせてネクタイとタイブローチ変えますね、もう少し淡い色にします」

「はーい」

『………僕は変な所有らへんですか?』

メ「氷織選手、ご自身のお顔の良さをご存知で???」

着「こんなにウェディングタキシードに白色が似合う人そうそう居ませんよ???」

『はぇ…?』

「氷織は俺と違って淡い色がよく映えるな」


前髪を上げてもらった烏は優しげに目を細め、全身真っ白なタキシードに包まれた氷織を幸せそうに見つめている

その甘い雰囲気に包まれる◯クシィスタッフは二人の世界に飲み込まれ、その甘さ、眩しさに目を細めた


着・メ「(余りに空間の雰囲気が甘いッ…!完全に所謂烏氷って奴だ!姉ちゃん/妹が言ってたやつ!)」


『何なんもう……/////烏も、似合っとるよ…男前やね』

「氷織はほんま白が似合うな〜…これなら午後の白無垢も楽しみやな~w」

『もう!まだ言っとる!誂うのもえぇ加減してぇや!』

着・メ「(雰囲気も会話も余りに糖度が高過ぎる!聞いてるだけで糖尿病なるわ!)」

カ「お!烏選手!氷織選手!決まってますね!お似合いですよ〜 撮影セットの用意が出来ましたのでご移動お願いします!」

「『はい/分かりました』」


式を執り行うホールへと通されると、スタッフが撮影用に用意したフラワースタンドの花の香り、少しずつ強まる陽光を浴び、煌めくステンドグラス、客人の居ないホール内には二人の一瞬を彩る撮影スタッフ達の姿

ちゃんとしたホテルウェディングのセットを前に氷織は緊張で生唾をコクン、と飲み込んだ


『改めてこんな立派な所で撮られるの慣れへんなぁ…///』

「普通の撮影は慣れたけど、やっぱシチュエーション込の撮影は今回が初めてやし緊張するな」

カ「まぁまぁ、お一人ずつ撮りますね!シチュエーションにあった表情を作ってくださるだけでいいんで!」

カ「先ずは烏選手から!相手の花嫁さんを優しく見つめる様な感じの表情を、お願いできますか?」

「………こんなんでえぇですか?」

カ「まだ緊張の色が強いですね…もうちょっと緊張が薄い感じで!」

「いや、難しいな…」

メ「じゃあ具体的な相手を意識してみてはどうでしょう?」

着「あ!でしたら氷織選手!映らない画角外で烏選手の前に立って貰えますか?」

『ぇ!?ぁ……はぃ、大丈夫…です』


真正面で互いの晴れ姿を見つめ合う

氷織はまだ恥ずかしげに頬を掻いたり、目線をキョロキョロと彷徨わせるが、烏の目には本番の結婚式を前にしてもこんな風に恥ずかしげに振る舞う彼の姿が想像できていた

頭の中で描く理想が雑誌とのコラボの案件だとしても、仮初のものでも、目の前に広がる情景に烏はキリリとした目を柔らかく細め、大きな口も唇が緩く弧を描いて口角がほんのり吊り上げられる

本当に愛する人を見つめる表情に画角外ではしゃぐメイクや着付けのスタッフ

カメラマンも指示とはいえ完璧なシチュエーションを引き出す氷織と、そんな氷織に向ける烏の演技とは思えない甘くて愛おし気な表情に一瞬気に取られるが、すぐにシャッターを数度切った

そして、真正面で見つめ合う等の氷織はその烏の、あんまりにも珍しいストレートな表情に思わず真っ赤に茹だった顔を隠してしまった

それを見て、烏は小さく噴き出した

それでもカラカラと小気味良い声で愛おしさを隠し切れずに笑う烏の声と表情は柔らかく、カメラマンは変わらずシャッターを切り、その様をフレームに収め続ける


カ「いや〜いい表情です!流石は氷織選手ですね!」

『そぅ…ですか…?』

カ「えぇ!流石は烏選手の相棒ですね!」

『ありがとう御座います…///』

「ほんまかわえぇわ〜 次は氷織か?」

カ「ですね!烏選手のショットは沢山撮らせて頂きましたので、次は氷織選手のを撮らせて頂きますね」

『はぃッ!』

「氷織、肩の力抜け〜声めっちゃ上擦っとるで?」

『だってシチュエーション撮影初めてやもん…慣れへんもん…////』

「俺も居るから大丈夫やって」

カ「じゃあ、氷織選手は幸せそうな笑顔お願いできますか?満面の笑みってよりかは滲み出る様な感じで!」

『ぇっと………こ、こうですか?』

カ「まだ表情硬いですね………烏選手!お願いします!」

「任しとき!氷織、ほら手出して?」

『?』


―ちゅ


『!!あ……////からす、そんな…人前で…///』

「別に大丈夫やろ?撮影の時に映らんなら大丈夫やから」

『でも………////スタッフさんの前でこんな事…』

「いや?結構皆気づいてるみたいやで?俺達の仲」

『へッ!?/////』


余りにも真っ赤になる氷織に烏はにんまり笑みを深めてまた指先にキスを贈る

その様に小声ではしゃぐ女性スタッフ陣と二人の甘い雰囲気に微笑まし気に笑みを浮かべる男性スタッフ陣

カメラマンもまた、真っ赤に照れた氷織の驚愕の表情や、烏のひどく愛おし気に氷織へのキスや視線を贈る様子を人知れず捉えていた


『……////ほんま…烏には敵わんわ…』


満更でもないように笑みを零した氷織の表情にすかさずカメラマンがシャッターを切る

その音を聞いた氷織は焦ってカメラマンのカメラを取り上げようとする


『ちょっ!?烏写ってますから!駄目ですって!』

カ「あ、でもほら!ギリギリ烏選手映ってないですよ?これなら大丈夫では?」


フィルムに切り取られた風景は烏の頭も見えず、差し出した手にキスをされて照れ笑いを浮かべる氷織の表情

幸いにも烏の特徴的な頭もギリギリ画角には写っていなかった


『確かにギリギリ映ってない………///恥ずかしいけど多分問題にはならない…かな』

カ「嫌でしたら撮り直しますが氷織選手は如何されますか?」

『ぁ……何枚も撮り直させちゃうのも申し訳ないのでコレで、大丈夫です…!』

カ「でしたら午前の撮影はこれにて終了とします お疲れ様でした」

着「お昼の休憩を挟んでから神式での撮影先の神社さんに行きますので、一先ずゆっくり休んでください」

メ「お弁当も用意してますが、出発は日が傾く3時頃から行きますので、近くのお店でランチをしてきても大丈夫ですよ!」

 「『あ、じゃあお言葉に甘えて外で食べてきます』」

着・メ・カ「分かりました!では2時半以降3時前にはホテルの受付に集合していて下さいね!」

「『分かりました』」


昼休憩を挟む事となり、烏と氷織の二人はホテルから徒歩で十分圏内の洋食屋にてランチをとる事にした

日替わりランチを頼むととろとろの半熟目玉焼きに熱々ジューシーなハンバーグのセットに舌鼓を打つ二人

楽しく談笑を交えながら完食し、カフェのコーヒーをテイクアウトし昼休憩を過ごした

2時40分頃にホテルの受付に話を付け、待合コーナーにてスタッフ達の到着を待つ

外を見るとほんのり日が西へ傾いていた


カ「お待たせしました!」

「いえいえ、俺達も今来た所なんで」

メ「先方の神社さんからも変更のお願い等の確認もし、問題ない様ですのでこれから向かいますね」

着「セットとお衣装の積み込みをしますので、ホテルの駐車場に移動用の白いバンが停めてあります 運転手が外で待ってますので先に乗ってお待ち下さい」

「『分かりました』」


先に移動用のバンのもとへ行くと運転手が快く乗せてくれる

冷房の効いた車内は涼しく、二人もリラックスしている

そうこうしている内にスタッフ達も準備が終わり、移動用のバンに次々乗り込んでくる

烏と氷織、そしてスタッフ陣を乗せたバンと衣装と撮影器具を乗せた2台のバンが件の許可の貰えた撮影場所の神社へと走る

そして暫くして街の外へ出ると山間部の麓にある神社の前へと着いた


神主「ご足労頂きありがとう御座います」

「今回は雑誌コラボでの撮影のご許可、ありがとう御座います」

『本日は宜しくお願いします』

神主「ありがとう御座います 中々最近は神式、並びに袴に白無垢といった和装での結婚式は余り話を聞かなくなってきましたからね…もし文化継承のお力添えになるのでしたら、喜んでお貸ししますよ」

カ「ありがとう御座います!」

神主「それと、撮影の際のお衣装のお着付けでしたらお堂の方をお使いください」

着・メ「何から何までありがとう御座います!」


神主からの挨拶も程々に撮影準備に取り掛かるスタッフ達と着付けられていく烏と氷織

洋装と違って、やはり身に着ける物が多く若干締付に耐えながらも二人は着付けられていき、着付け終わると外へ出る

烏はぴしっと決まった黒い紋付袴姿で出てきたが、氷織が中々出てこない

その10分後、ようやく出てきた氷織の姿に烏は驚愕する

真っ白な綿帽子に包まれた頭部、口元には僅かに鮮やかな紅が引かれ、清廉な白無垢姿の氷織が出てきたからだ


「氷織ッ………お前…」

『…烏が似合うって言ったんやからね…////』

「ほんま…おおきにな」


思わず抱きしめる烏とその抱擁を照れくさそうに受け止める氷織

撮影場所へ赴くとカメラマンは一瞬驚いたが、「氷織選手めちゃくちゃ白無垢お似合いですね!すっごい綺麗です!」とストレートに褒められ、氷織は頬を赤らめながら『おおきに』と微笑んだ

場所を提供してくれた神主、メイクスタッフ、着付けスタッフの女性陣、カメラマンと補助の男性スタッフ陣に見守られ、撮影のフィナーレは仲睦まじく寄り添い合い紋付袴と白無垢姿の二人の柔らかで幸せそうな笑顔の2ショットで締め括られた


そして、後程今回の取材と撮影の内容の載った◯クシィ6月号〜ジューンブライド特集〜は烏氷民の間で飛ぶように売れたとか…

そして、人知れずフランスの片隅で烏と氷織の二人はこれからの未来の約束を交わすのであったのでした


 〜Fine〜

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