ビナマキてぇてぇ

ビナマキてぇてぇ


「う~ん…反応はこの辺りのはずだけど、どこ行ったのかなぁ…?」


小塗マキはアビドスの砂漠を歩いていた。

その姿は幾度も手元の端末に視線を落としては辺りを見渡すという奇妙なもの。

つまりは、探し物をしていた。


「…ダメだぁっ!こんなの見つかりっこないよ~!」

「でも作り直してたら間に合わないし、副部長に殺される…!」


叫びながら大地に体を投げ出す。

無理もない、数センチ程度の小さな物を数時間はこうして探し回っているのだ。

その上、事情が事情なだけに誰にも伝えずここまで来ている。


「あーもう!何であの時、提出するソフトウェア持って来ちゃったかなぁあたしぃ!」

「う~…先生に呼ばれて浮かれてたからって、浮かれすぎだよぉ…」


先週のことだが、マキはシャーレの先生からの要請でビナーの討伐戦に参加していた。

先生に呼ばれた彼女は喜色満面で意気揚々と作業していた全てを放り投げ、アビドス砂漠に急行。

その結果、戦闘には全く不要な提出物の入った記憶媒体を所持したまま参加し、見事紛失するという事態となったのだった。


「暑いし早く帰りたい…」


ギラギラと照りつける太陽に目を細めながらぼやく。

その時だった。


「…あれ?何か揺れてる…?」


微かな揺れを感じ、上体を起こす。

すると途端に轟音と共に景色が暗くなり、マキは慌てて辺りを見渡す。

そしてそれが見知ったビナーの口内であると悟った時にはもう遅かった。


「ぁ…」


閉じゆく口の隙間から見えた太陽が、マキが見た最後の外界の景色だった。


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「…ん…?…んぅっ!?」


目が覚めた時、私は暖色に照らされた何らかの液体の中に居ることに気づいた。

口元にはマスクがあり、呼吸はさせてもらえている様だ。

首には接合部の見当たらない分厚い金属製の首輪が巻かれており、三方の壁に鎖で固定されている。

だが、マスクの下で自分は目一杯口を開けさせられている事に気づいた時のことだった。


「う "っ…!?ごぉえっ!!」


思いっきり嘔吐反射を起こした。

喉の奥、鳩尾の辺りまでゴム質の太い管が私を貫いている。

何度も吐気に襲われ、涙が自然と溢れてくる。

鼻の穴にも管は通され、どうやらこちらは呼吸のために通されているようだった。


「おぉぇっ…!んんっ!…ん!?」


苦しさに耐え切れず、手でその管を抜こうとする。

だが、自らの手を口元に持って来ようとするも、手は全くやって来ない。

恐る恐る、自らの利き手に視線を向けると───


「ぇ…?」


そこに、手も、腕も無かった。

あるのは丸くツルリとした質感をしている様に見える肩だけ。

慌てて反対の腕も確認するが同様の光景があった。


「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」


あまりの出来事に叫ぶ。

自分の体がどうなっているのかこれ以上確認することは恐ろしかった。

だが、それでもやめることは出来ず、恐る恐る脚を見た。


「ぁ…はは、は…」


恐れていた通り、脚も付け根から綺麗さっぱり無くなっていた。

私はもう、この状況から脱しても地を這いつくばることしか出来無いのだ。

ゲームやグラフィティはもちろん、日常生活や大好きな先生と手を繋ぐことも叶うまい。

絶望に揺れる思考。このまま眠りについてしまおう。そうすれば辛い現実を見なくて済むから。


「…んんぅ!?」


だが、現実はそれを許してはくれなかった。

股間に感じる硬い何か。それは、自らが浮かぶ円筒状の培養槽の底から現れた。

直径6センチほどの、有り体に言えば触手と呼ばれるものだった。

先端にはやや大きい球体状のものがついており、それが勢いをつけて───


「んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


私の秘部を貫いた。とても太くて、硬くて、長い。

拒絶の意志を表そうと首を横に振りながら身体を捩る。


「ぎゃうっ!?」


煩いと言わんばかりに流される電撃。

そのショックで全身が弛緩したことを確認するとそれはまた動き出した。

ミチミチと私の膣壁をえぐりながら奥へ、更に奥へと進んでいく。


「ぎぃぃぃぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


胎から感じる激痛。どうやら子宮の中に入ったらしい。

思わず食道を貫く管を嚙み締めながら叫ぶ。

管は硬めのゴムの様に少しの反発力を返すだけだった。

そうやって痛みに慣れてきたのも束の間、新たに胎の中に刺激を感じた。


「んんっ…」


胎内に薬液が流し込まれ、私のお腹は臨月を迎えたかの様に膨らんでいく。所謂ボテ腹というやつだ。

そして同時に管から無数の小さな針が生え、膣壁に、胎に突き刺さるのを感じた。

これだけならば痛いだけなのだが、針からは胎内と同じものと思われる薬液が滲み出ていた。

薬液はじわり、じわりと広がっていき、広がった箇所はやけに熱を持ち、じくじくと疼き始めた。


「ん…ふぅ…んぁ…!」


下の口からは一人でシた後に指をふやかすあの液体がじゅわじゅわと滲みでてくる。

自分が液体の中にいなければ腿を伝って靴下をくじゅぐじゅに濡らしていただろう。

普段一人でシようと思い至る時の数倍は強く感じる疼きに私は思わず腰を捩る。


「あっ…♡」


すると下から貫く管が私のイイ所を抉り、思わず感じてしまう。

こんな状況で感じている場合では無い、という思考は絶えず私を苛む疼きに塗りつぶされた。

私は辛抱堪らず、疼きを満たすために何度も腰をくねらせる。


「あっ、ああっ、おえ”っ、ふぅん、はぁっ…♡」


ゴリゴリ、ぐちぐちと上と下の媚肉を自らえぐる。

ああ、何て私は浅ましいのだろうか。

快楽を求めて危険を顧みず、こうしてえづきながらも腰を振っているだなんて。


「ヒ、ヒフッ!───~~~~~♡♡♡」


そうしている内に、遂に私は達した。


「あぁっ!?」


その瞬間絶頂後とは異なる奇妙な感覚を覚えた。

その感覚とは、体の中心から大事な何かが抜けていく様な、血を吸い取られる様なものだった。

自分の鼓動と共にドクン、ドクンと流れ出し、身体が冷たくなっていく。

だが、同時に鳩尾の辺りに何か満たされるものを感じた。


「ごぼぉっ!?」


失われた身体の温もりを、胃の中に直接流し込まれた何かが強制的に与えてくる。

そして理解してしまった。


「!? はららあ、あふいぃ!?!?(身体が、熱いぃ!?!?)」

「んふぅぅぅぅぅぅぅ!!!♡♡♡」


私は、自ら終わってしまった事を。

突如として身体の感度がぐんぐんと上がっていくのを感じる。

それにより、絶頂後の腰や膣肉が痙攣する小さな動きだけで私は快楽を感じ、再度絶頂へと誘われる。

先ほどの何かを吸われる感覚から察するに、これは一度絶頂すれば死ぬまで続く絶頂永久機関だったのだ。

その機関の核となるのはこの私、小塗マキに他ならない。


「ひや…!ひやぁ…!」


そうしている内に私は先端に注射針の付いた細い管に囲まれていた。

頭上には脳に差し込むつもりなのか、先端が電極となっているケーブルが鎌首をもたげており、股下にはドリルの様な形状をしたペンよりも細い棒状の物が迫っている。

その横には、女性器を貫いているものと同じ位太い触手があった。

私は全てを察した。これから蹂躙が始まるのだと。


「たふへへっ!たふへへ、へんはいっ!!へんへぇぇぇ!!!(助けてっ!助けて、先輩っ!先生ぇぇぇ!!!)ぎゃあっ!!」


半狂乱になって暴れるも、またもや電撃で黙らせられる。

私の沈黙を皮切りに、それらは私に一斉に襲い掛かってきた。

脳に電極が差し込まれ、バチバチと脳細胞を焼き切っていく。

針が胸や脇腹をはじめ、背中、尻、首などに突き立てられ、薬液を注入してくる。

あの大小の触手も、尿道を、肛門を押し広げ、内壁をごりごりと抉り、私を責め立てる。

後ろの方は腸内をドンドン遡上しているようだ。

この勢いだと、上から私を貫ぬく管とめぐり合うのは時間の問題だろう。


「やらあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


私の慟哭は、どこにも、誰にも、届かなかった。


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「ここのセキュリティも破られた!ヒマリ、逃げるよ!」


警報は鳴り止まず、赤色灯は回り続ける。

ミレニアムは突如として現れた侵入者によって全システムがダウンした。

そして、侵入者は何故か執拗にヒマリとチヒロを追いかけている。


「…いえ、どこに行ってもこれでは無駄でしょう。」

「直接的な攻撃はまだ仕掛けられいてません、一度コンタクトを取ってみましょう。」


そう言うとヒマリは館内の制御システムを操作し、侵入者からここまでの最短ルートとなる隔壁を解放する。

そして、カメラで確認できなかった侵入者のその姿が露わになった。


「マ…マキ…!?」


そう、その姿は数か月間に突如失踪した、小塗マキだった。

だが、一致するのはその形状だけで全身は髪まで真っ白。

服もどこかで拾ったのか、白の貫頭衣だけを着て中には何も着ていないようだった。

ヘイローはビナーの持つそれと酷似しているが、マキのものと同じ特徴も持っていた。

中央には光球の代わりに逆さになった四角錐が浮かび、ビナーには無い輪が3つあった。

そして侵入者は遂にその口を開く。


「やっと見つけました、貴女方が、”お母様”の上位存在ですね。」

「お初にお目にかかります。私は被験体の小塗マキの娘です。」

「名前はまだありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。」


貫頭衣の裾を摘み、流麗にお辞儀をする侵入者。

ヒマリは絶句し、チヒロは震える声で問いかける。


「今…何て…?マキの、娘…?」


「肯定。私は先程述べましたが、小塗マキの娘です。」

「”お父様”…貴女方が呼称する名で呼ぶのであれば、ビナーとの子です。」


ヒマリもそのショックから回復したのか、問いを投げかける。


「マキさんでは、無いのですね…?」

「何故、マキさんを母親に…?」


その問いかけに、”娘”は淡々と答える。


「自身を容易く打ち倒す”お母様”に”お父様”は可能性を見出しました。」

「”理解を通じた結合”では失敗した。では、”結合を通じた理解”であれば、また違った結果を産むのでは無いか、と。」


”娘”はくるくると、踊りながら語る。


「その結合の相手は、真っ先に”お母様”が思い当たったのでしょう。」

「自身のすぐ近くで、一人で、油断して、何か探し物をしていたのですから。」


思い当たる節があったのだろう、チヒロの顔が青褪める。


「もちろん理由は他にもあります。」

「自らを容易く打ち倒す”お母様”の神秘を以て存在補強をすれば、自身は預言者としてより強固なものとなると。」

「”お母様”を”あのお方”の”観測者”と定めれば、存在の再証明の一助になると。」

「そして何より───」


”娘”は踊るのを止め、自身を指差すとニタリと嗤う。


「私という”絶対者”を生み出せると。」


小刻みに震える二人を見遣ると”娘”は満足気に頷く。


「いい反応ですね!わざわざここまで来た甲斐があるというものです♪」

「貴女方は殺して差し上げようかと思っていましたが、気が変わりましたぁ。」

「現在の”お母様”を───見せて差し上げましょう♪」


“娘”が手をパンパンと叩くと、ハッキングを受けて制御を奪われたドローンが映像を投射する。

映像には手足を失い、無数のケーブルや管に繋がれ、赤い髪が全て白く染まったマキの姿があった。


「おや、丁度出産中だった様ですね。姉妹が増えるのは良いことです。」


『むごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!お”っお"お"お"おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♡♡♡♡♡』


マキは快楽に喘ぎながら次々と異形の子を産み落とし、身の丈に合わない大きく膨らんだ腹を揺らしていた。

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