廃墟の中の悪意 石田との接点
1
とある廃墟の一室の中が異様な空気に包まれていた
「よくもまぁオレの部下を殺してくれたな...おかげでオレの面倒が増えちまった これからやるのはテメェらのやんちゃした分の落とし前ってわけだ」
一人のホームレスが無理やりに喋らされている 虎屋翼以外のホームレス数人は喋ることもできずにただ直立させられていた
「だがタスクとか言ったか オレは強い奴には敬意を払う高尚な虚でね...テメェの強さに免じて"無抵抗"で死んでくれるならこのゴミ共を生かして返してやる その後も手は出さねぇと約束してやるよ」
翼でも流石に強者に力を発揮させないための文句だと分かってはいたが
(私は知りたい 私が無抵抗で死んだ後にこの虚は本当に手を出さないのか)
頭の中でまるでウィジャ盤かこっくりさんに質問するように問いかける
(YES 約束通り手は出さない)
体の奥底から焼けつくような痛みと共に答えが返ってきた 翼にはホームレスたちを傷つけずに虚を倒す方法は考えつかない 虚の本体が何処に在るのかすら分からないのだ
「...貴方結構義理堅い性格していますのね わかりました無抵抗で死にます」
「随分とまぁ潔いじゃねぇか まぁいいさテメェを楽に嬲り殺せるんならな」
周りの操られているホームレスたちが金属バットや鉄パイプなどを手に持ち翼を囲んだ
「"自分"の手で殴るとイテェからな 遠慮なく道具を使わせてもらうぜ」
それから何度も翼はバットで振りぬかれ鉄パイプで殴打されたが...一向に直立から姿勢を崩さなかった
(これは自分の行いの結果 せめてこの方たちに罪悪感が無いように死ぬことが最後に私ができる守るための戦い)
それを胸にただ押し寄せる悪意を前を血濡れながら立っていた

「あの子が入っていったのはここだったか...完全に廃墟じゃないか」
少し前に目が合った和服の少女 妙な気配がしたため追いかけてみたのだが...
「違うぞ...僕は変質者じゃない ただ彼女からは何かよくわからないが普通の人間じゃない霊圧を感じた だから追いかけたんだ」
自分に言い聞かせるように石田がつぶやきながら廃墟へと足を踏み入れた
最初は特に何の変哲もない廃墟ではあったが奥に進むにつれて響く鈍い音と血の匂いに足早に石田は歩を進めた
音の発生源の部屋のドアを蹴破って目に入ってきたのは 直立したままの血濡れの少女と涙を流しながら笑っているホームレス 奥歯が割れそうなほど歯を噛みしめ金属バットや鉄パイプを握りしめるホームレス達だった
「この霊圧は...虚か!」
「ご名答だな乱入者 警察にでも言いつけるか?」
泣き笑うホームレスが石田に語り掛けた
「警察?虚は一般人には見えないしそもそも君らは法で裁かれることは無いよ ただ僕が滅却させてもらう」
僕は弧雀(こじゃく)を構え周囲の霊圧を探った...だが
(周りには少女やホームレスたちの霊圧しかない...⁉超遠距離から操っているのか それとも体内に潜り込んでいる?だが何処に!)
この厄介な虚への対策を考えていたが今の自分には対処が難しい事しか分からず冷汗が流れたが
「滅却師とかいう名前だったか...まぁ面倒なのに目をつけられて良いこたぁねぇよな 今日の所は潔く引いといてやるか」
虚はホームレスたちを開放していったがそれでも正体は分からない
「タスクに伝えておけよテメェら 『次は必ず殺す だから震えて待ってろ』ってな」
最後に泣いているホームレスが解放されて虚の霊圧は完全に消え失せた
残っているのはただ手を血にぬらしたホームレス達とただ物を言わず立たずむ少女だけだった