ヒフミが嫉妬するお話

ヒフミが嫉妬するお話


 自分で言うのも変な話ですが、私は人に恵まれていると思います。

補習部のみんなにアビドスの方たち、それに先生…多くの友達や仲間に囲まれました。


「ヒフミさん、お茶やお菓子のおかわりは大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です、ナギサ様!」


 中でも本来は私なんかが関わることすら恐れ多いナギサ様との縁は本当にありがたいものだと思います。

 ナギサ様と友達になったのは本当に奇跡のようで、あの一件の後はナギサ様から避けられていたけど、正式に補習部のことで謝罪を受けてからはまた仲良くさせていただくことに!


「そうですか。アズサさんの成績も上がってるのですね…先生には頭が上がりませんね…」

「ハナコちゃんも積極的にみんなに教えてくれて本当にわかりやすいんです!コハルちゃんはその……もうちょっとかかりそうですが…」

「ふふっ、頑張ってくれてるんですね。」


みんなの話を聞くナギサ様は微笑ましそうに、でもちょっとほっとしたような顔をしてる。この顔は、正直ちょっとだけ苦手です…


「こちらの方は、ミカさんがようやく本当にいつもの調子に戻ったんです…まあ、ちょっと戻りすぎですが…もうちょっとおしとやかでいてくれても…」

「あ、あはは…」

ナギサ様は頭を抱えるように、でも嬉しそうにそう語る。幼馴染のミカ様のことが本当に大事なんだって思わされて、それはいいことなのに…


「(……私はまだこの人にこんな顔をさせられない…)」


この方は私によくしてくれている。でもそれは寵愛のようで、仮に私がミカ様のように(恐れ多いけど)からかったりしてもきっと、ミカ様に対するように怒ってはくれない。それがちょっと、寂しい。この場にいないミカ様や長い付き合いのセイア様。同格の立場の方々のようなある種気安い仲に、どうしても羨ましいと思ってしまう。


「(こんなこと思うの、きっと似合わないなと思われるんだろうなぁ……)」


 それでも思う。このあこがれの人と。ずっと私のことを慈しむ目で見守ってくれたきれいな人と。そんな優しい人だからこそ、あそこまで傷ついてしまったこの人と。


「…ナギサ様、ナギサ様にとって私は、その、どういう存在ですか?」

「───どういう、です、か…そう、ですね……あれだけあなたを傷つけて烏滸がましいと思われるかもですが……大切な後輩…私を救ってくれた最後の希望…なにより、なんの気兼ねもなく話せる友達、でしょうか?」


 ナギサ様は言葉を恐る恐る選んでいる。未だに私達に対して負い目があるんだろうなというのが分かって、正直辛いです…でも、そこを乗り越えないと…


「…ナギサ様にそう言っていただけて嬉しいです……でも、私は…」

 「ヒフミさん?」

「……私は!!ナギサ様の友達じゃなくて!!」


 友達じゃなくて、もっと先に…!私はあなたの瞳の優しさを…髪が彩ってくれる暖かさを…ずっと隠された弱さを知った…だからこそ、私はこの人を…!


「ナギサ様、私はナギサ様の……ナギサ様?」

 

そこまで勢いに乗ってから気づいた。ナギサ様の顔色がどんどん青く……赤くなるなら伝わってくれたのかなってなるけどあ、お……


 「………(ドサッ)」

「な、ナギサ様!?し、しっかりしてくださいナギサ様!?だ、誰か!!ナギサ様が急に!!」


 ……結局私は伝えたいことを伝えるタイミングを逃してしまいました。ナギサ様は青い顔で「お話中ごめんなさい…また次の機会があったらお話しましょう。」と言ってくれたけど…うわぁ……私なにか失礼なことやっちゃったかなぁ……次の機会こそ、ちゃんと伝えないと…

 取り敢えず次のお茶会の日程次第ではおしゃれとかしてナギサ様にもっと良く見られるようにするんだ……オー!!

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