バーソロミュー絆10を達成したので太歳星君をメカクレにする話
バーソロミュー推しのマスター■注意点
・カルデアの個人的解釈が多い
・メタ発言が多い
・スレ主はバーソロミューが好き(バーソロミューはメカクレが好き)
・スレ主は気持ち悪いバーソロミューも好き(バーソロミューが変態みたいに書きます)
・絆10記念にバーソロミューへメカクレ図鑑をプレゼントするカルデア概念は下記からいただいております。スレ主に感謝!
https://bbs.animanch.com/board/3227701/
普通の人間にとって本当に特別な日なんて年に数日ある程度ではないだろうか。
逆説的に言えば大半の日が「特別でもない何もない日」と分類されるということだ。
しかし人間というものは逞しいもので、そんな「何もない日」にすら意味を持たせてしまうような強欲な生物である。
これは特別な日になった、とある何もない日の昼下がりの話。
~1日前~
「バーソロミュー! 絆10達成おめでとう!」
「ありがとうマスター! はい絆礼装!」
「こちらこそ。いつもありがとう」
「そんな畏まらないでくれたまえ、君と私の仲じゃないか。この先もよろしく頼むよマスター」
「うん……」
共に戦い苦難を共にした証となる絆ポイント。勿論この数値は概念的なもの。あくまで信頼のパラメータの一つに過ぎないものではあるが、互いの信頼が量れる目安であることは確かだ。
そして理屈は不明だが、皆一様に絆レベルが10になると礼装をくれる。嬉しさと共に気恥ずかしさ半分で礼装を受け取っていたマスターであったが、ふと「一方的に貰ってばかりなのはどうなのだろうか?」と思い立ったが吉日。思い立った日以降は絆10になったサーヴァントはマスターが可能な範囲で絆10を祝うという慣習が生まれたのであった。
「それで絆10のお祝いなんだけどさ」
「是非メカクレでお願いしたい!」
「即答! 知ってたけど! 具体的にどういう感じに祝おうと思ってたんだけど」
「カルデア内の全サーヴァントをメカクレにするのはどうかな?」
「命知らずな上に強欲!」
「はっはっは。まあ海賊だからね。君の国の言葉を借りるなら虎穴に入らずんば虎子を得ず、というやつかな」
パチン。鮮やかなウィンクと共に華麗にポーズを決めてくれるが、厳密に言うと日本の言葉ではない。ツッコミを心の中で留めて話を続けることを選択する。
「流石に全員は無理かな……」
「そうか。では新たなメカクレをいただきたい! 勿論マシュ嬢を始めとしてこのカルデア内には神秘性を秘めた魅力のあるメカクレの少年少女が多数在籍しているのは理解している、そこに不満はない。だが英霊としての性質だろうか、ダ・ヴィンチ殿をはじめ全盛期として呼ばれている意識が高く、変化を求めない傾向がある。私はその風潮に異を唱えたい! 死してなお最良を目指そうと変化を受け入れる姿勢こそが人理のサーヴァントとして求められることではないかと!」
「それ全部メカクレの話で合ってる?」
「うん」
「(カルデアに居ないメカクレのサーヴァントだと……アナスタシアか水着アナスタシアか)」
「楽しみにしているよマスター! フフ……!」
~本日 カルデア食堂内~
「アナスタシア呼符チャレンジ駄目だった。ごめんバーソロミュー」
「気にしないでくれマスター。ちなみに両メカクレタイプのウィッグが手元にあるのだが」
「待って待って、別のお祝い考えて来たの。新しくサーヴァントを呼べないなら、今いるサーヴァントにメカクレになってもらえばいいじゃない作戦! という訳で太歳星君、入場お願いします」
何故か日常生活中に自動で流れて来る緊張感のないBGMの中、扉が開くSEが流れる。
続いて流れる忙しない足音のSE。
ピョコンと姿を現したのは太歳星君。災いをもたらす祟り神――の側面を持つサーヴァントだ。
「はんなまー! デアデアのマスターに呼ばれて来たのだ、よろしくなんだぞバソバソー」
「こんにちは太歳星君、新しいメカクレの生誕に祝福と感謝を!」
「わはー面白い挨拶なんだな! でも今日バソバソのお祝いなんだよな? マスターが吾輩のヘアアレンジするのでお祝いになるのか?」
「……待ってくれ。少し待って欲しい」
「いいぞー」
バーソロミューが両掌を立てジェスチャーした状態でマスターの方へ顔を向け肩を掴む。
満面の笑みのまま顔がゆっくり近づいて来て肩口に顔を埋める。
「ありがとうマスタ―……」
「お祝いだからね。喜んでくれたなら何より!」
「なんと喜ばしい日だろう。人選もといサーヴァント選のチョイスも素晴らしい。朗らかな言動で周囲を和ませる存在でありながら時折見せる憂いた表情が神秘性加点ポイントの太歳星君殿! 私がメカクレを勧めた時は一切興味を示さなかったというのにマスターになら良いという事なのか、マスターになら吾輩何されても良いよということなのか? 最高じゃないか! 私とマスターの絆も更に深まるような気持ちよさだ!」
「そ、そう。喜んでくれたなら何より」
「しかし、私は、今! 平静を失おうとしている! 既に表情筋は平静を失ってはいるのだが、このままマスターの手に身体を委ねメカクレになっていく太歳星君殿を見せらたらどうにかなってしまう!」
だから顔隠してるんだ……
バーソロミューのメカクレに対する情熱は多少理解しているつもりだったが、最初から本人がメカクレのパターンはあっても、途中からメカクレになるパターンは対面したことがない。過去例がないので分からないが本人がどうにかなっちゃうと申告しているのでどうにかなってしまうのだろう。何がどうにかなっちゃうのかは不明だが、知らなくて良い気がするので心の中に留めた。
「そっか、じゃあ――」
~10分後~
椅子に座った太歳星君の前にマスターが座る。ちなみに少し離れた場所で椅子に縛られたバーソロミューの目は座っている。
どうにかなっちゃいそう宣言をするバーソロミューをどうするか。確定で暴走すると宣言するなら、暴れる前に動きを抑えれば問題ないとマスターは判断したのであった。太歳星君の「それどういう遊び?」という真っ当な疑問が飛び、キッチンに居たエミヤに「縄や鞭については専門外なのだが」と文句を言われつつ拘束して貰えば準備完了だ。
「じゃあ早速始めようか」
「待ちたまえマスター、記念撮影がまだだ!」
「撮影? 写真なら知ってるぞー、ボイボイがチーズチーズしたら出て来るやつ!」
「写真かそこまで考えてなかった……もう拘束しちゃったし、終わった後の方が良いんじゃない?」
「勿論終わった後も撮るとも。大切なメカクレ記念だ、ビフォーアフターで見ることでよりメカクレの良さを認識することができるということさ。私のアルバムに保存するからよろしくお願いするよ」
「えぇ……? じゃあ申し訳ないけど誰かに撮って貰おう」
「お願いしよう。黒髭以外なら誰でも構わない。勿論メカクレなら猶のことよろしいが」
ぐるりと食堂内を見渡せばそれなりにサーヴァントは居るが、異様な様子を察知したのか面倒に巻き込まれたくないのか距離を取られていた。とりあえずエミヤでも呼んでこようかなと算段をつけたが、太歳星君がアッと声を上げる。
「クロクロは居ないけどキンキンなら来たぞ!」
「ん? 俺っちになんか用向きかい太歳星君の?」
金じゃなくてゴールデンだけどな、と訂正しながらゴールデンこと坂田金時が食堂に入って来る。
「写真撮って欲しいのだ! 記念なんだって!」
「おう、勿論いいぜ!」
「やあミスターゴールデン! いつも小太郎君にはお世話になっているよ!」
「ん? 誰かと思えば海賊紳士サンじゃねえの。つうと記念てのはアレか? 絆マックスの褒美……」
声を掛けられた時点で坂田金時はバーソロミューが拘束されていることに気がつく。
「その通り。これがマスターからのプレゼントという訳さ!」
「た、大将……!?」
「その通りだけど語弊があるから説明させて!」
~バーソロミューが縛れていることの説明タイム~
「なるほど……良く分からねえが事情は理解した」
「という訳で申し訳ないんだけど写真お願いします」
「お願いするのだー!」
「是非お願いするよ」
「オッケー!じゃあ撮るぜ。1+1は?」
「2!」「チーズチーズ!」「メカクレ!」
パシャッ
「絶妙に息合ってねえなあ! まあいいか確認してくれや。目当てのモンは撮れたぜ」
「よっ流石ゴールデン良い感じに映ってる! ありがとう~」
「みんな笑顔なんだなー! なんか視点が高くて変な感じ!」
「良い写真じゃないか。この姿がメカクレになるのか、フフ、フフ……!」
「んじゃ俺っちはシュミレーターに用があるから行くぜ」
「いや、ここに留まっていただこう。これは記念写真であり、全てが終わった後に比較するための写真でもある。つまり同じ角度で撮ってこそ意味が増す訳だからね。逃がしはしない」
動けない状態で面倒なオタクのような発言をするバーソロミューだが、マスターがツッコミを放棄したためツッコミは入らなかった。
「お、おおう。そう来るのか。待ち合わせしてるんだがなー……」
「ゴールデンには本当に申し訳ないんだけど、バーソロミュー言い出したら言う事聞かないし一応お祝いだから……NPチャージして待機してもらっていい?」
「マスターの頼みなら仕方ねえな」
「よっ流石ゴールデン頼りになる! いつもありがとう~」
「キンキンがクールなのだ!」
「ゴールデン&クールな!」
こうして本来の予定から大幅に遅れ、太歳星君をメカクレにする会が始まった。
祝われる対象のバーソロミューは物理的に拘束されているにも関わらず平然としている。
太歳星君は縛っていた髪の毛をほどき、ピシッと背筋を伸ばしている。
巻き込まれた坂田金時は戸惑い、所在なさそうにバーソロミュー後ろに待機している。
マスターは目線が集中する中、太歳星君の髪を浮かせて櫛を通す。
「なんか変な感じなんだなー」
「くすぐったい?」
「んー、あったかくてポカポカする?」
「そっかそっか、お加減いかがですかー?」
「気持ちいいぞー!」
他にも英霊達が居るはずの食堂なのだが、マスターと太歳星君の声しか聞こえない。
なんなら櫛の通る音が聞こえるほど静まり返っている。
「(家族のようで微笑ましいもんだな)」
「……」
「(しかしこの海賊紳士サンはイビルウィンドの前とは打って変わって静かじゃねえの。お前さんの褒美だってのに良いのか?)」
「……」ぼそぼそ
「(……ん?)」
「何という事だ完全にマスターに心を許している表情ではないか何と美しい信頼関係だろう。背中を許すだけではない、サラリと伸びてしっかり手入れされた髪を任せ、自身の身体を委ねてしまうなんて罪深いぞ太歳星君ありがとう絆10イベント。私は今【生産者の見えるメカクレ】が誕生する歴史の目撃者となる。あっ、待ってくれマスター! 前髪を作らず分け目を変え、髪の先を結うことでゆったりとしたメカクレシルエットを作るだと? 流石私のマスターだ、太歳星君はミステリアスな雰囲気を生かすために前髪は作らずサイドに流すという判断! メカクレに対する理解度が絆10もとい絆100%じゃないか!」
「(うおっ何か小声で言ってやがる。高速詠唱持ちじゃなかったはずだよな!? イッツソーアメージングじゃんよ!)」
櫛の通る音をバックにマスターと太歳星君が話していたが、次第に椅子が揺れる音が混じって来る。
我慢できずどうになっちゃったバーソロミューが身じろぎしている音である。
坂田金時はマスターと太歳星君の微笑ましいやり取りと涎を垂らし正気を失いかけているバーソロミューを交互にチラチラ見ては、止めるべきかどうか逡巡している。風紀委員長が居れば止めに入っただろうが、このカルデアには残念ながら風紀委員長は呼ばれていない。
「はいっ、完成!」
メカクレになった太歳星君は常なら天頂で結った髪を左目に掛かるようサイドに降ろし、首の後ろでゆるめに髪の毛を縛った状態である。クルっと振り返ると前髪に動きが出て愛嬌に溢れていながらも、かわいらしさを強調する大きな瞳を隠されていることで不思議な雰囲気を助長している。
「完成したらしい! バソバソどうだ! まいったか!」
「こ、これは参ったな……うっ……」
「吾輩大勝利ー! マスターは? マスターはどう思う?」
「似合ってる! それに楽しかったよありがとう!」
「無事終わったようで何より! じゃ何か起きる前に記念撮影いっとくぞ!1+1は?」
「2!」「チーズチーズ!」「……」
パシャリ
先ほどと同じ構図の写真には笑顔と笑顔と若干頬を赤らめた照れ顔が並んでいる。
「よっしミッションコンプリート! もうシュミレーター行ってオーケーか!?」
「そうだ、ボイボイにも見せよう! キンキン、マスターとのツーショット、撮って撮って~!」
「わあっ」
「!?」
太歳星君がマスターの膝の上に乗り、手を重ねてピースのポーズをとる。
隣からガタガタと椅子が揺れる音がする。音の主は当然バーソロミューである。椅子に縛られていなければ立ち上がっていただろう。
「チーズ、チーズ!」
「わかったわかった! ラストワンな!」
カシャリ
「あっ、マスター。吾輩、大きくなっちゃいそう……」
「大きくなる!? 話を詳しく聞かせてくれないか!」
「バーソロミュー、ステイ!」
次の瞬間、太歳星君から煙がボフンと出て視界が塞がり、マスターの膝にかかる重量が増す。
宝具展開時でおなじみの姿、大きくなった太歳星君がマスターの上に乗っていた。片メカクレで。
「……マスター、重かった?」
「びっくりしたけど平気だよ。予め太歳星君も身体浮かせてくれてたし」
「そう。でも、ごめん」
申し訳なさそうに身体をずらし、椅子の前にしゃがむ太歳星君。食堂の光りに晒された右目と、髪の隙間から除く左目は共に哀しみと憂いを帯びている。一度マスターへ近づけた手を抑え、震えた声で問いかける。
「怪我は……してない?」
「これくらいじゃ怪我しないって。太歳星君てば心配性だなあ」
「あなたは、替えがない……大切な、マスターだから……」
「ありがとうね」
太歳星君の頭を優しく撫でながら「いい子、いい子」と言い聞かせるマスター。
それをほほえましい目で見つめる坂田金時と、固まるバーソロミュー。
「……、さ、さ、さっ」
「笹?」
「さいっっっっっ、最高だよマスター!」
「うおっ!? 急にどうした、クールはどうした!」
縄を抜け出したバーソロミューはマスターと太歳星君の前で恭しく跪く。
「え、嘘。縛ったよね? バーソロミュー縄抜けの逸話持ってたっけ?」
「マスター……海賊とは! 自由であるものだ! つまり私は何にも縛られないという訳だ、うん」
「汎用性のある拡大解釈はズルでしょ!」
「? ??」
穏やかな雰囲気から一転し混沌が場を支配する。
太歳星君はマスターの膝の上で微動だにせず視線を突如ハイになった海賊に送っている。
食堂に居るサーヴァント全ての視線がマスター方面に集まる中、バーソロミューが高らかに告げた。
「これは……幼馴染メカクレ概念!」
「幼馴染メカクレ概念!?」
ここに新たな概念が誕生した。性癖の進化である。
「それの、意味は……?」
「よく聞いてくれた成長した太歳星君!」
パチンッと指を鳴らし謎の格好いいポーズを決めるバーソロミュー。
この場に黒髭でも居れば華麗に突っ込んでくれただろうが、この状況で突っ込める胆力のある性格の英霊は居なかった。
「幼馴染の意味はご存じの通り、幼い頃親しくしていた相手のことを指す。今回は小さい太歳星君とマスターが親しくしている姿を幼馴染の関係性と仮定される訳だが……人間というものは成長するもの、成長に従って、見た目も関係性も変わる。こればかりは仕方がない。だが!ここでメカクレ属性が生きてくる!大きくなり様々なものが移ろう中!太歳星君のメカクレは変わらない!そう、メカクレフォーエバー!メカクレだけは不変なものと定義された!つまりメカクレの勝利だと思うのだが、如何か!」
「ぶっ飛んだ解釈だなと思いました……金時はどう思う?」
「俺っちに振るんじゃねえよ……あー、なんだ。悪党の中には理解できねえ話をする奴が多いが、別の意味で話が理解できねえ奴も居るってのは新鮮だった。はい感想終わり!こうなりゃ太歳星君も何か言っとけ!」
「大きい吾輩を受け入れてくれるマスター……そしてカルデア、は……賑やかだけど土の中より落ち着く……」
「ン゛ンッ……!最高の感想をありがとう!このまま眺めてても良いかな!」
マスターの膝の高さに顔を息を荒げるバーソロミューに、マスターと太歳星君は幼馴染ではないと冷静な判断ができる英霊は居なかった。こうしてこの狂った空気は太歳星君が元の大きさに戻り「憎からず思って居たメカクレの幼馴染が薬を飲んで身体が縮んでしまう王道展開!隠された瞳の中の暗殺者(比喩)が私に止めを刺しに来ている!?」と叫んだバーソロミューが天井を突き抜けるまで続くことになる。
ちなみに太歳星君とマスターが付き合っているという事実はない。全てバーソロミューの見た幻覚である。
以降、カルデアではバーソロミューとすれ違う際に前髪を下ろして反応を楽しむ太歳星君と突発的なメカクレに過剰反応をするバーソロミューの姿を見られるようになったらしい。
END