バリオル

バリオル


特に注意書きすることもない本当にただただ(不)健全なバリオルです












「父さん!親父!聞いてよ!いややっぱり聞かなくていいや」

 異様な雰囲気のカップルが飛び込んできてステイゴールドは眉を顰める。そもそもここにまともなカップルが来ることがあるのかって?ある。たまには。

 一見特におかしいところのない普通のような二人組。これを普通と定義してしまえば自分の感覚が相当やばいことになるので異様な二人組として括ることにしたステイゴールドは、ため息をつきたい気持ちに駆られる。が、客に対してやることじゃないな、一瞬その思いも過ったが結局身内なのでどうでもいいやと、これでもかというほど深い深いため息をついてやった。

 やたらと怒り浸透な様子の息子、オルフェーヴルと、その息子に……首輪で繋がれて死んだ目をしているウインバリアシオン。温度差がとんでもない。

 まあ前々からちょっと怪しいそんな気があったようにも思えたが、ついにそういうプレイに走るようになったらしい。

「ちょっと!変な誤解するなよクソ親父これは」

「ああいい、いらん。で、どの部屋にする?SM部屋?拷問部屋?」

「だからそういうんじゃないって!こいつ3週間もボクを放っといたんだぞ!?ムカつくからもうしばらく離してやんないことにしたんだよ」

 結局説明された。結局説明した。

 飼い主がどの部屋がいいかなーとウキウキと部屋選びに徹しているその隙にステイゴールドは息子とは対照的なテンションのウインバリアシオンの方をチラリと見上げてみた。この首輪つけたまま街中歩き回ったんだろうか。やりかねない。

「ああ、お気になさらず……慣れっこっすわもう」

 乾いた笑いが妙に紳士的だった。

「そうかうちのバカ息子よろしく頼むわ」

「じゃ、この部屋!VIPタイプ!まあこんな場末のラブホじゃたかが知れてるけどな。バリちゃんどうする?二泊くらいしてく〜?♡♡♡」

「するかよ!流石に無理だって休憩3時間くらいにしときなさい!」

「え〜まったりダラダラ過ごす時間も考えてよ〜」

「いーや絶対時間余るねオルフェはすぐ飽きるから」

 親の前でイチャイチャベタベタと。お前らみたいなの二泊もさせねえよ、そう言いたい気持ちをグッと堪えた自分をプロの受付師と賞賛したい気分だった。

 結局フリータイムで話がついて、犬と女王様、じゃないウインバリアシオンとオルフェーヴルはロビーを後にする。ステイゴールドは二人の背中を見送って、やれやれともう一つため息をこぼした。





 あれから3時間。フロントの電話が鳴る。息子カップルが入ってる部屋からだった。

 なんとなく取るのが戸惑われたが、そこはプロの受付師だ。私情は挟まない。

「はい」

『あ、お父さんすみません』

 やたらと艶のある低い声が聞こえてきた。

『やっぱり宿泊にしてもらっていいですか?全然離してもらえそうになくって』

「構わねえが…」

『えっ、バリくん…やぁ、も、ぼく、むりぃ…』

『オル、無理じゃないだろ。お前は俺より強いんだから』

 オルフェーヴルの声がやたら近い。どんな体勢で電話かけてきてるんだ。いや息子のそんな姿なんて想像したくない。

『ほら、オルもお父さんにお願いしますって』

『やだぁ、やだやだ、バリちゃ…あっ♡』

 ガチャン

 受話器を叩きつけるように置いた。

「あ、領収書の整理でもしよ」


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