ハートに火をつけて

ハートに火をつけて

藍染に悪気は無い 娘ちゃんはリンゴちゃん

血だけが繋がった赤の他人、大罪人・藍染惣右介がアタシの姿を見て『裸よりも生々しく身体の線を露に見せる浦原装束を着る意味がわからない』と言いたげな目をしている。


そらお前、アタシは夜一さんの教え通り高濃度に圧縮された鬼道を纏って闘うんやから、必然的に背中と肩の布は要らなくなるんや。

何も不思議なことなんかない。この鬼道を使おうって時にはそういう装束を着るもんなんや、と弁明をしてみれば成程、と納得したのかしないのかよく分からない頷きが返された。


「つまり君は今後その格好のまま闘うという訳か。浦原喜助の用意した下着に毛の生えた様な露出度の装束で」

「喜助のコト悪ぅ言うな。アタシの為になる思ってこういう水着っぽい装束を用意してくれてるんや。お前みたいに、オカンに着せたかったモンをアタシに無理やり着せてきたんと違う」


そう言いながらもアタシやって背中開いてるんなら普通の服でも問題なく闘えるし、わざわざこんな肌にぴっちり張り付くような薄手の装束を着んくてもええねんけど、喜助曰くこっちの方が鬼道を使うには向いとるし、怪我した時の治療にもすぐ対応できるんやて。


だからこれはあくまで修行の一環であって、別に喜んでこの格好をしている訳ではないのだけれど、そんな事情を知らない藍染にとってはアタシが喜助の趣味嗜好の為に破廉恥極まりない恰好をしとるようにしか見えへんねやろな。


「限度があるだろう…この数年で君の身体は随分成長したようだ、何よりこの胸。松本君と同じくらい晒して恥ずかしいと思わないのか?」


いつの間に距離を詰められてたんか気づかんかった。むにゅり、と大きな手に乳房を掴まれる。突然の出来事に頭が真っ白になった。そのまま指先が食い込むように押しつけられて、痛みが走る。コイツ触るんど下手くそや!


「…親子のスキンシップにしては行き過ぎてるん違うカァ?」

目の前の藍染の眉間に刻まれた深い縦皺は、まるでアタシの事を嫌いだと言わんばかりに見える。

誰のせいでアタシのおっぱいが大きくなってもうたと思うてんねん……そこらかしこに肉がついとるんは完全にコイツの遺伝や。オカンの遺伝子はどこに行ってしもたんや、顔か。そうか。


「平子真子に、こんな贅肉はついていなかった」

瞬間的に頭に熱が沸いて、その突き破る怒りのままに、拳を振り抜く。けれど寸前のところで素直に一発殴られる様な甲斐性の無い男の手が光の速さで伸びてて、鳩尾への強烈な霊圧を載せた掌底が入り地面に叩きつけられる。

息ができひん。肺の中の空気が全て出てしまったかのよう。

衝撃が強すぎて一瞬意識が飛んだらしく、その間に両腕を掴まれ、頭の上で押さえつけられる。息を飲んでいると、ギリギリと手首にかける力を強くしながら、藍染が眼帯をしていない方の目でうっそりと笑う。その瞳孔の奥にある闇色を見ながら、アタシはようやく理解する。


あ、スイッチ入ったな。幻の霊術院特別指導教官・藍染惣右介。桃さんが話していた、霊術院で捨て鉢になった(見込みのある)院生に見せる顔。


「それが教えを乞うものの態度なのか?君は相変わらず弱い。戦い方も、精神面も、何もかも。まるで成長していない。今のままでは足手纏いだ。足跡すら残せず死ぬ事になるだろう、分かるか、平子林子」

「……ッ、せぇ、離し、ぃ」

「どうすれば、君の霊圧を自由自在に操れるようになると思う。答えなさい、私の娘」

「そん、な、ぐ、う」

「君の泣き言を私が聞くとでも思ったのか。君のような弱い者の戯言など聞いていても時間の無駄だ、分かるかい」


ああクソ!アタシは自分の浅はかさを心底後悔しながら、藍染の言葉を聞いていた。


「いいと言うまで、私に身を委ねろ。斃れる事は許さない。…斬魄刀を握る事も出来ないか、返事をしなさい、平子林子、もう1人の私の娘」


今度こそアタシとおねえちゃんは藍染の鍛えられた腹筋に蹴りを入れようと力を込めた。




(藍染ブードキャンプ隊長にバッチリしごかれながらメキメキ強くなっていく娘ちゃん、数日で藍染の『貴方自身』を極める事に成功)

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