ハリケーン 海軍本部に接近!!
このssにはキャラ崩壊・設定捏造が含まれます。
ご注意ください。
偉大なる航路、凪の海のすぐ近くを海軍本部所属の軍艦が航海していた。
その日の空は、偉大なる航路らしく、奇妙な天候だった。
雲が空を覆っている中で、軍艦の上だけが晴れていたのだ。
まるで台風の中心部のように…
「んでよぉ…。その町の連中と一緒になって宴やってたら、マグマンのおっさんに大目玉喰らっちまったんだよ。
おっさんも一回ぐらい宴やればいいにって言ったら、さらに鉄拳喰らっちまった。」
「フフフ、大将相手にそのような豪胆さ…やはり面白い男じゃな、そなたは。」
「そん時も、ウタがライブやったんだ。町のみんなにも楽器持ってきてもらってよ、一緒に演奏したんだ!」
「そうか…まあ、あの娘は歌声だけは達者のようじゃからの。」
軍艦の甲板にて、海軍本部大佐モンキー・D・ルフィと王下七武海が一人、"海賊女帝"ボア・ハンコックが談笑していた。
ルフィの思い出話に対し、ある女性の話題を除いて、笑顔で相槌をうつハンコック。
その頬は薄っすらと桜色に染まっていた。
「……………」
その光景を、ある女性こと海軍本部准将ウタが睨みつけていた。
「あっ、ウタ!お前もハンコックにライブの話してやれよ!せっかく海軍本部に来てくれるって言ってくれたんだからさ!
なんか面白い話でもしてやろうぜ!」
「ルフィ、無理は言ってはいかんぞ…あの娘がこの船の最高責任者なのだから、色々と仕事があるんじゃろ。
ほれ、さっさと自分の職務に戻ってよいぞ、娘。」
「……お気遣い無用だよ、海賊女帝。私の部下はみんな優秀なので。少しぐらい私が離れても何の問題もないから。」
「なんじゃ、堂々と職務放棄か。お前のような小娘の部下をやらねばならぬとは、不憫な海兵共じゃのぉ。」
ウタも歓談に誘おうとするルフィに対し、ハンコックはなんとしても近づけまいとする。
あまりにもあからさますぎるその態度に、ウタの額に青筋が浮かぶ。
「そんなことねぇぞ!ウタは、マグマンのおっさんからも褒められるくらい優秀なんだ!
俺もいつも助けられててよぉ…ウタがいなかったら、俺は(海兵として)生きていけねぇ!!」
「ルフィ…‥‥」
そこにルフィの、誤解を招きかねないようなフォローがはいる。
実際ウタは目を潤わせ感動し、ハンコックはギリリッと歯軋りをした。
そんな彼らを、部下の海兵たちは、生きた心地のしないまま遠巻きに眺めているのだった。
なぜ王下七武海のハンコックが、ルフィとウタの軍艦に乗っているのか。
それは数日前に遡る…
事の始まりは、"元"王下七武海サー・クロコダイルのアラバスタ乗っ取り計画である。
世界政府公認の海賊である王下七武海が、よりによって"世界政府加盟国"であるアラバスタ王国を乗っ取ろうとしていた。
この事実は世界政府の威信を揺るがしかねない非常事態であった。
実際、王下七武海選考基準は本当に大丈夫なのか、という声が加盟国各国から政府へと寄せられていた。
そこで世界政府は、クロコダイル以外の王下七武海が、加盟国に危害を加えていないかという調査に乗り出した。
…もっとも、海賊である王下七武海が政府の調査に、正直に応じるわけがない。
大抵が、適当な文書をしたためただけのものだった。
政府側もそれは承知の上であり、調査のほうも率直に言えばポーズと言っていいものだった。が、…
その"ポーズ"すらとらない七武海が一人だけいた‥‥"海賊女帝"ボア・ハンコックである。
「あと数時間もたてば、女しか住んでない島"女ヶ島アマゾン・リリー"かぁ…」
「海軍本部には女性海兵も少ないからなぁ…ウタ准将以外の女性にあうのって何週間ぶりだ…?」
「貴様!ウタ准将のご尊顔を毎日見せていただいているくせに、女海賊にうつつを抜かすとは何事だ!」
「なにをっ!そういうお前こそ、今日に限って制服がキッチリしてるじゃないか!今日の為にクリーニングにでも出していたんだろ!」
女ヶ島アマゾン・リリーへ向かう海軍本部所属ウタ准将の軍艦のうえで、男性海兵たちが小競り合いを始める。
ここ数日、何度も繰り返された光景だ。
そんな部下たちを、この船の最高責任者、ウタは白い目で見つめていた。
ボア・ハンコックを海軍本部に同行させ、世界政府からの調査に協力させよ。
それが世界政府から海軍本部‥‥ルフィとウタに下された指令であった。
政府からの要請に協力どころか、反応すら示さなかったハンコックに対し、世界政府は一種の強硬手段に出たのだ。
最も海軍からすれば政府の尻ぬぐい、とばっちりもいいところだ。しかもルフィとウタをご指名ときた。
二人を指名した理由は、クロコダイル討伐の英雄なら、ハンコックの護送にもってこい という話だった。
「なんで私たちが、海賊なんかのために!みんなも海賊相手にそわそわして!ルフィも何か言ってよ!」
「んあぁ?いいんじゃねぇか別に。今回は戦いにいくわけじゃねぇんだろ?
ウタこそあんまりイライラすんなよ。俺が美味い海王類釣ってやるからさぁ!」
そういって軍艦に増設された対海王類用の漁猟設備(ぶっといワイヤーが釣り糸代わり)を使用するルフィ。
肉がエネルギー源である彼の為に、ウタが海軍上層部を説き伏せて増設させたものだ。
「別にイライラなんてしてないよ!ただ、今度の配信で『海賊女帝を拷問!』とかやったら盛り上がるんじゃないかなって…」
「…それやめろってセンゴクのじいちゃんから言われてなかったか…。今回はあくまで送り迎えなんだから手荒なことすんなって。」
ウタはライブのほかにも、映像電伝虫を使った映像配信も行っていた。
ほとんどは作詞作曲の様子や歌唱を配信したりするのだが、たまに捕まえた海賊を拷問する光景も配信していた。
彼女曰く「これで海賊に怯える人々も安心させられる!」とのことだったが、実際には…
「ウタちゃんにこんなひどい事させないでください!」
「彼女は歌姫だ!彼女の手を汚させるな!」
と海軍に苦情が寄せられた。
海軍上層部がウタに無理やり海賊拷問動画を配信させたと思われたのだ。
これを受けて海軍元帥センゴクは、ウタに拷問動画配信を禁止するように命令を下したのだった。
「准将!大佐! 女ヶ島アマゾン・リリーが見えてきました!」
「ああ、とうとうたどり着いちゃった…。」
目的地を目前にして、深いため息をつくウタ。
正確には、海岸から3㎞離れた沖で、ハンコックには軍艦に乗り移ってもらう予定である。
海賊の送迎というだけでも腹立たしいのに、噂の海賊女帝は見惚れぬ男など存在しないと言われるほどの美女とのこと。
一抹の不安を胸に、ウタはチラリと隣の幼なじみを見るのだった。
「おい!みんな、しっかりしろ!!どうしちまったんだよ!!」
「全員石になってる…これがメロメロの実の能力…?!」
調査には協力しない・積み荷をよこせ、そして帰れ、これが開口一番ボア・ハンコックから放たれた言葉である。
更に彼女は、ハート型のエネルギーを放射したと思いきや、それを浴びた海兵たちは石になってしまった。
メロメロの能力に関しては教えられてはいたが、苦楽を共にしてきた仲間たちがこうもあっさりと
うろたえるルフィとウタ、だが…
「どうして!?あの男、蛇姫様の術をまともに受けたのに、石になってない!!?」
「あり得ないわ!蛇姫様の魅力にひれ伏さぬ人間なんてこの世にいないはず!」
うろたえているのはボア・ハンコック率いる九蛇海賊団も同じだった。
ハートのエネルギーを受けた者の中で、ルフィだけが無事だったのだ。(ウタは未だ拷問動画配信のことを喋ってたので後ろに引っ込められていた)
「…っ!そんなはずはない!わらわの美貌に見惚れぬ男などおるはずないっ!!」
そうハンコックが言い放つと、彼女は突然胸元を重点的に、衣服をはだけた。
「キャー----ッ♡! 蛇姫様が本気だわ~~~~~~♡!!」
「なんだ、いきなり脱いだぞ!?馬鹿かっ!!?」
「”メロメロ甘風"!!!」
ルフィに向けて、再びハート型のエネルギーが放射され、素通りした。
『…………………………………?』
ウタを除いた全員が首を傾げた。
ルフィは、王下七武海が痴女行為と無意味な攻撃を繰り返してることに
ハンコック達は今まで絶対だった"海賊女帝に魅了される人間"という法則が通用しない現実に
(ほっ……)
静かにウタが安心の吐息を吐く。
どうやら海賊女帝の魅力も、幼なじみには通用しなかったようだ。
自分の勝率も大分下がった気がするが、今は気にしないことにする。
「っ! おいお前!俺の仲間たちを元に戻せっ!!こいつらみんな、大切な仲間なんだ!
これからも一緒に海の平和を守っていくんだ!!」
「ボア・ハンコック!世界政府の要請だけでなく、海軍にまで攻撃を加えるというなら…王下七武海の座を剥奪もありうるわよ!」
「なにを…小僧と小娘が、調子にのるでないわ!!!」
いち早く気を取り戻したルフィとウタがハンコックに向かって叫ぶ。
それに対して怒り心頭になるハンコックだったが…
「待って、姉さま!ここでやりあうのはまずいわ!!」
「海軍だけならまだしも、世界政府の要請まではねのけてる現状では…ここは…。」
それを、ハンコックを姉と呼ぶ女性二人が止めた。
そして二人が何事かをハンコックに耳打ちしたかと思うと…
「小僧と小娘、そなたら…名前はなんと申す。」
「モンキー・D・ルフィ!海軍本部の大佐だ!!」
「ウタだよ!階級は准将!」
「娘が准将で…男が大佐…ふっ!」
二人の階級を聞いたハンコックは鼻で笑う、さらに九蛇の女たちもくすくすと笑い始める。
「そなたら…部下どもを元に戻したいならついてまいれ!!!」
二人が連れてこられたのは、女ヶ島アマゾン・リリーの内部にある、闘技場とおもわしき場所であった。
中心に穴に囲まれた、円形の舞台があり、穴の中には鋭く尖った剣山が敷き詰められていた。
それを観客席がぐるりと囲み、"闘"の字が書かれた壁のところに、ひときわ豪華な観客席があった。
「大佐とやら、舞台に上がれ。准将の方は席を設けたゆえ、そこに座っとれ。」
「偉そうに…」
「ウタ、ここは言う通りにしよう。みんなを元に戻すことだけ考えるんだ。」
海賊憎しの感情が湧き上がるウタに、冷静になるように諭すルフィ。
彼女が仕方なく席に着くのと見届けると、ルフィは舞台に上がった。
「ではこれより……海軍本部大佐モンキー・D・ルフィの公開処刑を行う!!」
「「ええっ!!?」」
『し・け・い!し・け・い!!し・け・い!!!』
ハンコックの突然の処刑宣告を告げられ驚くルフィとウタ。
しかし観客席を占めるアマゾン・リリーの女たちは歓声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って!なんでルフィと処刑しようとするの!?みんなを元に戻してくれるっていうから私たちは!」
「ふふふ…このアマゾン・リリーでは、この国に侵入した男は死罪に処すと決まっておる!そしてわらわはついて来いと言ったが、入国していいとは言ってない。
つまり、この大佐は海軍の身でありながら、わらわたちの国の法律に違反したのだ!!」
「っっ!!最初からそのつもりでっ!!!!」
ハンコックと世界政府は、【アマゾン・リリーの半径3㎞より内部に入ってはならない】という協定が設けられている。
それをルフィたちに破らせる形をとらせたのだ。
自分たちの領土に引きずり込むことで、自分たちの都合で"合法的に"処刑する…全ては罠だったのだ。
やはり海賊は絶対悪でしかない…憎しみを爆発させようと、ウタウタの能力を発動させようとするウタだったが…
「よせ、ウタ。こんな奴らに…お前の歌を聴かせてやる必要はねぇ!」
「ルフィ……。」
ルフィが止める。ウタの手を汚したくなければ、彼女自身が誇りに思っている歌声を聴かせたくもなかった。
「おいっ!バカ女!!俺が勝ったらみんなを元に戻せ!!」
「バっっ…!!!??」
「姉さま、しっかり!」
「今私たちが処刑しますので!!」
いきなりの罵倒にくらりと倒れこむハンコック。自分に魅了されない男の存在に耐えられないようだ。
そんな姉を心配する妹たちがルフィを処刑しようと舞台に降りてきた
蛇を彷彿とさせる顔をした方はサンダーソニア、筋骨たくましい方はマリーゴールド。
長年ハンコックを支えてきた妹であり、王下七武海である彼女の側近でもある。
「サンダーソニア様ぁっ!!マリーゴールド様ぁっ!!」
「"蛇穴の舞い"が始まるわ!男なんて弱いやつ、死刑にしちゃえぇ!!」
九蛇の応援のなか、ソニアとマリーの姿が変わっていく…まるで神話の中に出てくる蛇の怪物…ゴルゴンのように。
「悪魔の実‥‥あの二人も能力者だったんだ…動物系か。」
海軍には、ハンコックの持つメロメロの能力の情報しかなかった。
ソニアとマリーは動物系…モデルは蛇だろう。血縁者同士で同じ系列の能力というのは、珍しいと言えば珍しかった。
「……‥‥」
「あら、恐ろしくて声も出ないのかしら。やっぱり臆病な生き物ね、男って…。」
「仕方ないわ、ソニア姉さま。女の影に隠れて、女の手柄を奪ってきた男だもの…立ってるだけでも褒めてあげなくちゃ。」
黙ったままのルフィをみて、怖気づいているのだと決めつけるソニアとマリー。
なにやら勘違いまでしてるようだ。
「隠れる?手柄?何言ってんの、あんたたち?」
「あら、もう隠さなくてもいいわよ。英雄なんて呼ばれてるのに、この男は大佐であなたは准将。」
「どっちが強いかなんて、考えるまでもないわ。クロコダイルを倒したのも貴女なんでしょう。」
ああ、そういうことか。ウタは二人の勘違いに納得した。
ルフィは、なんというか…緩い。戦闘時はともかく、平時はとにかく言動が緩い。
ヘラヘラした表情も相まって、余程察しが良い人間でもなければルフィの実力を見抜けない。
(あの二人…ハンコックに比べたら大したことないな……。)
階級にしか気を取られて、ルフィを弱いと決めつけている。
仮にウタの方が強くとも、ルフィが自分達より弱いという理屈はないというのに。
とりあえずルフィに危険はない、そう判断したウタは状況を見極めるのに専念することにした。
「…ギア2。」
「「…!?」」
「なにあれ!身体から煙が出てる!」
「男ってこんなことができるの!?」
沈黙を保っていたルフィの身体から蒸気が吹き出す。
未知の"男"の異変に、九蛇の女たちが騒ぎ出す。
仲間たちを取り戻すために、海軍本部大佐の闘いが始まった。
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