ハッピーバースデイ、或いは自分の為の歌(後編)

ハッピーバースデイ、或いは自分の為の歌(後編)



色彩を欠いたペイル社にそぐわない可愛らしい部屋。

天蓋付きのベッドでスレッタは一人、膝を抱えて丸くなっていた。


息を吸い込むたびに目からぼろぼろと涙が零れ出る。

「…怒らせちゃった…」

舞い上がっていた。はじめて会った歳の近い男の子、はじめてのともだち。

優しく話してくれた、顔を見て倒れてしまったことも気にしていないと言ってくれた。

そんな人を怒らせてしまった。ほかでもない自分のせいで。


お婆ちゃん達や職員さんの自分を見る目が時折痛みをこらえているように見えるのも、お兄ちゃんがひどく優しい声でエリクトお姉ちゃんのことを話す理由も、地球から帰ってきたお母さんや新しい研究員さんがとても疲れている訳も、わかっていたのに。

考えることを忘れてしまっていたのだ。

浮かれていた自分を責める代わりに、膝をきつく抱え込んでもっと小さく丸くなる。


誕生日が嬉しかったから、彼にも同じものをあげたいと思ってしまった。

自分が嬉しかったら相手も嬉しいはずだ、とどこかで思い込んでいた、そんなはずないのに。

ぎゅう、とそばに置いてあったぬいぐるみに顔をうずめる。溢れた涙がじわじわと緑のうさぎに染みを作っていく。


「でも、何もない、なんてことあるのかな…」

お兄ちゃんは、彼はここで生きていくために前の顔も名前も捨ててしまったのだと言っていた。

本当は捨てたくなかったのに、捨ててしまったから聞かれたくなかった?

でも、それは違うような気がする…過去はない、と言い捨てた言葉は嘘をついているとも、本心を隠しているとも思えなかった。


「どうして、あんなこと言ったんだろう…」

気持ちを押し付けてしまったことを謝って、聞いてみたら答えてくれるかな、と思う。

でももう話しかけないでと言われてしまったのだ。もっと怒らせてしまうかもしれない。

もっと嫌われてしまったらどうしよう、そう思うと動くことができなかった。



ぐるぐると悩んでいると、遠慮がちに扉をたたく音がした。

「…お兄ちゃん」

「飯、食べないのか?もう1日何も食べてないだろ」

お兄ちゃんが心配してくれているのはわかっている。お婆ちゃん達も職員さんも研究員さんも、スレッタの元気がないことを気にしているだろう。


でも今はそれに甘えてしまうことはどうしてもできなかった。

「…お婆ちゃん達には言わないで、ください」


誰かに頼ってしまったら、きっともう2度と近づくことができなくなる。


  ◆ ◆ ◆


スレッタに「もう少し一人にしてほしい」と頼まれてしまった。

そうすると途端に手持無沙汰で、もう一人の方の様子も見に行ってやるかと少し離れた部屋へと足を運ぶ。


一応ノックをしたが反応はなかった。

「飯ぐらい食ったらどうだ」

扉を開けて覗き込む。


薄暗い部屋に所狭しと並べられた本棚の隙間で、少年は危なっかしく積み上げられた本に囲まれてページをめくっていた。片手に赤いたぬきぬいぐるみを抱えている。

下を向いた顔は陰になっていて、どのよう顔をしているのかわからなかった。


あの婆さん達、俺にはたまに古臭い漫画本をよこすだけの癖に、コイツには何やら難しそうな紙の本を溢れるほど与えているらしい。このアド・ステラで紙の本は絶滅寸前だ。かかった金額は考えたくもない。


「本は明るいところで読めよ、目が悪くなる」

再び話しかけたが、返答は放っておいてくれ、という感情のない声だった。

目線は手元の本に落とされたままで、こちらを見ようともしない。

「……いつまでそうしてる気だ?」

スレッタはもう少しだけ、と言っていたが、こちらはそもそも期限など考えてもいないようだった。


このままでは本当に餓死するのではないかという危うさがある。

「みんな心配してるんだぞ」

これは嘘ではない。実際、新しい仲間を迎えると張り切っていたGUND‐ARM開発部門などは、二人のガンダムパイロットが両方とも姿を見せないことで火が消えたように静まり返っていた。


「…みんな?心配しているって、何のために?」

本当に理解できないのか?

「同僚として歓迎してるんだよ。仲間だって」

いつの間にかページをめくる手は止まっていて、緑の瞳はこちらを見つめていた。


なかま、と唇が動いた気がしたが返事はないままにまた沈黙が訪れる。

白い指がぬいぐるみに食い込むのを横目に、暗い部屋を後にした。


  ◆ ◆ ◆


オリジナルが去っていった扉を見つめる。

『みんな心配している』

本当だろうか…?

でもきっと、まるっきり嘘とは限らない。少なくとも一人、心配しているであろう少女を知っていた。


───スレッタ・サマヤ。

なんの憂いもないような幸せそうな顔をした、なんでも持っている女の子。

彼女には、『何もない』なんて理解すらできないだろう。


家族、名前、顔…そして簡単にあげてしまえる所有物、彼女は全部持っている。

今感じているのが、羨望なのか、それとも安っぽい同情心への怒りなのか、いくら考えても分からない。


でも、この感情への対処法だけはよく知っていた。

望まないこと。

彼女を恨んでも何も手に入りはしないという諦念でじわじわと体の中を満たす。


集中できないままめくっていたページに目を落とし、内容があやふやなページを遡って、また文章をなぞり始めた。


  ◆ ◆ ◆


ふいに扉を叩く音がした。いや、叩くというよりも何か柔らかいものがぶつかったような鈍い音だ。

「あ、開けてください!」

あの赤い髪の少女の声がする。

反応することはない。黙って紙面に目線を落とす。

無意識のうちに眉間にしわが寄っていたので息を吐く。気にするな。

無視していれば、そのうち諦めて帰っていくだろう。


そう思っていたのに、いつまでたっても扉の前から彼女の気配が消えることはなかった。

しかもずっと何事かを扉に向かって話している。

「…えっと、ベルメリアさんは、GUND義体?の研究をしてるんです。エアリアルとは違って小さいモビルスーツを動かすんですよ!今度は乗って操縦しなくても動かせる、わたしとおんなじくらいの大きさのロボットを作ってみるって…それで、完成したらお母さんの会社でも採掘に使って…あなたもきっと気に入ると思うんです、お婆ちゃん達があなたはとっても操縦がうまいって褒めてて…」


ひたすらここに居る人々の説明を繰り返しているらしい。聞いていないというのに。

それに、どのような人間が居ようと僕のやる事は変わらない。

モビルスーツを操縦して、決められたテストを行うだけ。それさえすればここには食べるものがあるし、読む本も沢山ある。きっとそれがずっと続く。


こちらが何も言わなくてもお喋りは止まらない。

でも一度少女が何をしているのか理解してしまうと、鬱陶しくて堪らなくなった。

うるさい、放っておいてくれ、聞きたくもない…いつの間にか本は手から滑り落ち、足は扉の方へ向かっていた。


「帰って」

扉の隙間からそう声をかけると、青い瞳と目が合った。

「か、帰りま、せん」

彼女の顔にはまだ涙の跡があった。大きく見開かれた目のふちは赤く染まっている。

まさか、昨日からずっと泣いていたのだろうか。


帰らないと言い切ったくせに、おずおずと彼女は話し始めた。

「昨日、なんで怒ったんですか?教えて、ください。教えてくれたら、わたし、謝ります…」

「べつに。君が謝る必要はないよ」

この少女が何もかも持っているのだって、彼女のせいではない。僕が何も持っていないのも。

君と僕は違いすぎる、何もかもが正反対だ。深い断絶があって、きっと埋めることはできない。


「…何もないって、どういうことですか」

「本当に…」鬱陶しい、と言いかけてやめた。

また泣かれたらどうすればいいのかわからない。

彼女の兄は何も言わなかったが、彼女にとって害になると思われたら今後に差し支えるかもしれないし、単純に目の前で泣かれるとばつの悪い気分になる。


ふと、彼女を泣かせたことについて誰からも咎められていないことに気付いた。

この会社でただ1人の子供として可愛がられているらしい彼女が、これだけ憔悴しているのに、その原因である自分はただ放っておかれている。

叱責を受けると思ったが、オリジナルに至っては食事はしろとだけ言って去っていった。

ただ甘やかされるだけの子供だと思っていたけれど…誰かに縋ることなくここまで来たのか。


──どうしてこんなにも鬱陶しくぶつかって来るんだ。


「記憶がないんだ。昔の。だから名前も誕生日もない」

「それに顔も変えてしまった、だから何もない」

これで諦めてくれるだろうか、と懇願するように突き放す。


「……」

返事はなかった。

やっぱり、そうだ。彼女には理解なんてできない…わかっていたはずなのに、徐々に胸に痛みが広がる。言わなければよかった。

望みを持つと、途端に空のままでいるのが窮屈で呼吸ができなくなる。

彼女の顔を見ていることができなくなって顔を背けた。


そのまま足元を睨みつけていると、急に手に温かいものが触れた。

…スレッタ・サマヤが僕の手を握っている。

驚いて顔を見ると、無言のままの彼女の頬には涙が伝っていた。

どうして君が泣くんだ。

昨日とは違って、感情を抑えたつもりだった。


理解できない。

寝不足でぼんやりする頭で、ペイル社に来る前のことを考えた。

ここに来てからはあまり思い出さないようにしていた空虚な独白が、手の暖かさに浮かされるようにぽつりぽつりと口から零れ落ちていく。


地球の、あの孤児院とも呼べないようなただ戦災で焼け出された子供を集めただけの施設で、まれに親が子供を迎えに来ることがあった。

そんなとき決まって親はこう言う。「名前を聞いて、もしかしたらって…」そして無事でよかったと抱きしめるのだ。

親に会いたいと泣き出す子も大勢いた。1人が泣き出すと、親恋しさが伝播するように広がり、泣き声も重なっていく。

普段交わされる会話もほとんどが楽しかった思い出と親が迎えに来ることへの期待、そして自分をこのような状況へ追いやったスペーシアンへの深い怒り。


僕は、あそこでは異物だった。

ただの管理番号が与えられて、他の子供とは違いそれで呼ばれて、私物なんてもちろんない。

親が迎えに来たところで、僕にはわからない。顔と身体が同じだけで、彼らが求める息子でないことを知られるのが怖かった。

だから、「エラン・ケレス」になることを選んだのだ。


━━いつの間にか、全部話してしまっていた。

言うつもりなんてなかったのに、何もない僕には「エラン・ケレス」でいること以前は必要ないのに。


隣の青い眼差しを感じて、スレッタと目線を合わせる。

彼女はもう泣いてはいなかった。

「たんじょうび、きいて、ごめんなさい」

わたし、おもいつかなくて、ごめんなさい、と彼女はさらに謝りながらぎゅうと手の力を強めた。

でも、教えてくれてありがとうございます、そう言って僕の手を引いて廊下に立たせる。


いつの間にか少ししか開けていなかったはずの扉は大きく開いていて、外に出る僕を阻むものは何もなかった。


  ◆ ◆ ◆


「よかったら、いっしょに来てくれませんか」と言って手を引くと、彼は導かれるままにすんなりと廊下を歩きだした。


さっき彼が教えてくれたことを反芻するように思い返す。

きっと、辛かった思い出なんて聞かれたくなかった。

思い出さないようにしていたことを、無遠慮に暴き立てた。

ほんとはしつこくしたことをもっと怒ってもいいのに、彼は優しい、と思う。


振り返って顔を見た。

俯き加減の顔は、やっぱり固まったように動かなくて、何を考えているのかはわからない。

でも聞いたら教えてくれる人だともう知っているから、わからなくても大丈夫。


…仲良く、なれるかな?


  ◆ ◆ ◆


手を引かれるままスレッタについていくと、いつの間にか格納庫に到着していた。

彼女の愛機、エアリアルが静かに鎮座している。


一方の手で僕を引っ張り、もう一方にはうさぎのぬいぐるみを抱えたまま、彼女はふわふわと無重力に身を任せて宙を泳ぐ。

僕はというと、まだ足場のない無重力を進むのに慣れていなくて、されるがままに腕を取られ後ろ向きに宙に浮いて、壁を蹴った後の初速に身を任せていた。

ふと下を見ると格納庫の床は彼女と自分の15m以上下に位置していて、重力が存在したならば叩きつけられるだろうと想像してぞっとする。


彼女は慣れた様子でエアリアルのコックピットハッチを開け、僕を招き入れた。

ハッチを潜った途端、色とりどりの光に目がくらむ。

窓には紙でできた花の飾りが、天井からは様々な色の輪飾りが垂れ下がっていて、床に敷かれた毛足の長いラグの上にはいろんな形のクッションが所狭しと並べられている。


あまりにも明るい色彩に黙ったまま立ち尽くしていると、スレッタは隅に置いてあったボックスを開けて何かを取り出した。白いクリームが塗りたくられていて、赤い苺が載っている。

何というのかは知っていた。ケーキ。

文章で読んだことはあるし、地球でも懐かしむように時折その名が出されていたけれど、実物を見るのは初めてだった。

多分、とても大きいケーキの切れ端なのだろう、小さくて不格好なそれはちょこんと皿に乗っている。


「きのう、二人とも食べれなかったからって、みんなが残った分をとっておいてくれたんです」

「い、一緒に、食べません、か…」

彼女はずっと抱えていたぬいぐるみの背中を開いて合成ミルクのチューブを取り出した。


そのまま目を固くつむって、顔を真っ赤にして僕に差し出す。

「も、もも、貰うの嫌なのかなって…思ったんですけど、で、でも、」

ほんとうは、あげたいんじゃなくって、楽しいことを分けあいたい、というようなことを彼女はひどくつっかえながらも口にした。


分けあいたい…小さいケーキがさらに半分になっても、一緒に食べたいということ?

それになんの意味があるのか今の僕にはわからないけれど、ただの施しよりは何倍もあたたかいものであるのは間違いなかった。そうか、彼女が僕の誕生日を知りたがっていたのは───

「…嫌じゃないよ」


差し出されたチューブを受け取ると、彼女が開け方を教えてくれた。ストローで吸うように飲むみたいだ。合成ミルクはほんのり甘くて、ひんやりしてとても美味しい。

エアリアルのモニタがちかちかと明滅するのを見ながら、二人でふかふかしたラグに腰を下ろし、クッションに体を預ける。

操縦席のせいでだいぶコックピットの床は狭まっているけれど、子供が二人で座るくらいなら余裕があった。


スレッタは再びごそごそとぬいぐるみの背中を探り、棒状の物体を取り出すと、かちかちと電源を入れてそうっとケーキの上に載せた。

「誕生日、ほんとはいつだって良かったんです。だから、その…今、お祝い、しませんか?」

「誕生日も、歓迎会も、一緒にしませんか…」

この小さな女の子が、何も持っていない僕に同情しているなんて、どうして思ってしまったんだろう。

最初から彼女は分かりやすかった。鬱陶しかったけれど、仲良くなりたいと願っているだけだった。


ろうそくのオレンジ色の明かりが顔をぼうっと照らす。

「ハッピーバースデイ、トゥーユー、ハッピバースデイトゥーユー」

「ハッピーバースデイ、ディア……」

スレッタはどうしよう、という顔をしてこちらを見た。

そうか、「エラン・ケレス」は彼女にとって兄の名前らしい。でも。


「…エラン」

べつにありふれた名前だ。名前が被ることだっておかしいことじゃないよと自分にも、彼女にも言い聞かせるように口にした。

少なくとも、僕が自分で選んで決めた名前だ。

彼女はちょっと戸惑った顔をしたけれど、リクエストに応えて歌いだした。

「ハッピーバースデイ、ディア、エランさん」

「ハッピバースデイ、トゥーユー…」


歌い終わると、彼女は微笑んでこちらを見つめた。

その何かを期待するような眼差しにちりちりと脳を焦がすような感覚がして、曖昧な光景が記憶の片隅を横切る。

オレンジ色の光、優しい目…いつか、見たことがあるような気がする。

ケーキは初めてだけど、体は次の行動を覚えていた。

息を吸い込んで、吐く。

ろうそく型ライトの光は息では消えないけど、それが正解だと掠れた記憶が囁いた。


満足そうに笑ったスレッタは、ろうそくをケーキから取り除いて不器用に切り分ける。

ただでさえ不格好だったケーキは、さらに小さくぐちゃぐちゃになってしまった。

でも、今まで食べたもののなかで一番おいしくって、思わず頬が緩む。


「お誕生日おめでとうございます、エランさん」

「何もないって思った時でも、わたしがいます。わたしにも、エランさんがいます」


ケーキを食べ終わってから、来年も次の年も、一緒にお祝いしようと約束した。


  ◆ ◆ ◆


そのあとは、彼女のお気に入りだというアニメを見て、エアリアルのモニタでゲームをした。

アニメの舞台は地球だったけど、記憶にあるそれとはかなり違っていてとても驚く。

操縦桿とは異なるゲームのコントローラーに最初は戸惑ったけど、射撃ゲームを何度か遊んでいるうちに勝手がわかってきて、スレッタとは互角に戦えるようになった。

彼女は目を丸くして「お母さんの次に強い!」と言ってはしゃぐ。


流石に射撃ゲーム以外はスレッタに勝つことはできなかった。でも、もっと練習したらいつかは勝てるようになるはずだ。

彼女はきっと何回でも戦ってくれるだろうという予感がした。だって時間はたくさんある。


とりあえず、来年の誕生日までにはすべてのゲームで一回、彼女に勝ちたい。


  ◆ ◆ ◆


満足するまで遊んで、話しているうちにいつの間にかコックピットの中で眠ってしまったようだ。

穏やかな気分で眠りについたのは物心づいてから初めてで、ベッドで寝るよりずっと深い眠りに落ちて、翌朝、オリジナルが格納庫まで迎えに来るまで一回も目を覚まさなかった。


オリジナルはご飯を食べずにケーキを食べていたこととベッドで眠らなかったことを叱った後、朝食を食べるために食堂へ僕たちを連れていった。

寝ぼけ眼のスレッタの頬にくっきりとクッションの跡がついていたので指摘したら、僕の頬にも同じものがあると笑われてしまって。


食堂で、並んでパンと目玉焼き、ソーセージという内容の朝食を食べていると、ちょうど食べに来たらしいペイル社の職員が僕たちに声をかけていく。

「ファラクトのパイロットなんだって?こんなに小さいのに」

「こないだは歓迎会できなかったからさ、今度またやろうぜ」

正直何と答えたらいいのか思い付かなくて、黙ったまま顔を見上げることしかできなかったが、彼らは気にしていないようで、スレッタにも一言二言挨拶して、笑顔のまま去っていった。


…本当にここは理解できない場所だ。

全然違う人間たちが、ある一つの目的のために仲良く暮らしている。

だけど、そんな場所だからこそ僕みたいな人間の居場所が見つかるかもしれない、とそう思ってオリジナルに目をやると面倒くさそうに顔を逸らされた。

スレッタはそんな二人のエランを見て声をあげて笑う。


社員食堂の窓には真っ暗な宙が闇を落としているというのに、ペイル社の中は別世界のように明るかった。





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