ハスミのエステ体験
トリニティ郊外の閑静な住宅地。その一角で正義実現委員会副委員長の羽川ハスミはある一軒家のインターホンを押した。
『はい』
「あの……予約をしていた羽川ハスミですが」
『お待ちしておりました、羽川ハスミさま。どうぞお入りください』
カチャ、という音とともに門扉がひとりでに開く。ハスミはどこか嬉しそうな様子でその門を潜った。
一目でそれとはわからないエステサロン。しかしそこでマッサージを受けた者は必ず痩せられる。そんな噂がトリニティに流れ始めてから数週間経った頃。偶然にもハスミはそのサロンが実在することを知り、さらに予約まで取れてしまった。
彼女は送られてきたメールにあった住所へ人目を忍ぶようにいそいそと足を運び、今この場所にいるのだった。
「ようこそいらっしゃいました、羽川ハスミさま。どうぞこちらへおかけください」
「ありがとうございます」
出迎えた黒髪のエステティシャンに促されるままハスミは席に着く。
「こちらサービスのお飲み物となっております」
「ありがとうございます。いただきます」
ハスミは目の前に置かれたグラスを持ち上げ、ストローに口をつける。種類まではわからないがトロピカルな酸味と甘みがハスミの口いっぱいに広がった。
ハスミがグラスを置くと、エステティシャンはヒアリングを始めた。ハスミの要望や普段の生活や食事などなど様々なことを聞かれ、ハスミの前にあるグラスがすっかり空になった頃にようやくヒアリングは終わった。
次にハスミは隣の部屋へと案内された。
「こちらは更衣室となっております。こちらでお召し物をすべてお脱ぎになって、施術着にお着替えください」
「それは……下着もですか?」
「はい。紙製の下着をご用意させていただいておりますので、よければそちらをお使いください」
「ああ、なるほど。そういうことでしたか」
「はい。お着替えいただけましたら、反対側の扉へお進みください。あちらが施術室となっております」
エステティシャンは「それでは」と一礼すると扉を閉めた。ハスミは初めてのエステに緊張しながらも、噂される効果に胸躍らせながら服を脱ぎ始めた。
「――おい、どうだった?」
「全然疑ってない。もう少しだ」
扉の向こう側で二人のエステティシャンがそんな会話をしているとは露知らず。
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(これはなかなかよいものですね……)
ハスミはたゆたうような心地の中、二人の手で全身を揉み解されていた。ホットアイマスクをつけ、かすかなアロマの香りに包まれたハスミは、人生の中で最も弛緩し、最も油断していた。
「おい、もういいんじゃないか?」
「……そうだな。普通にマッサージしてたわ」
「私も。体凝りすぎだろ大丈夫かよこいつ……」
エステティシャンたちはハスミに聞こえないようこそこそと言葉を交わすと、「腕と足、動かしますねー」とハスミに声をかけた。そして宣言通り腕と足を持ち、X状になるように動かし――ガチャン、と無機質な音を響かせた。
「……え?」
「ヒャッフゥー! こんなにうまくいくとはなあ!」
「やっとこの瞬間が来たぜぇ!」
エステティシャン――その仮面をかなぐり捨て、二人は歓声をあげる。そしてハスミのアイマスクを剥ぎ取った。
「何の真似ですか」
自分がベッドに四肢を拘束されたことを認識したハスミは、目の前で笑う二人を睨みつけた。
「復讐だよ、復讐!」
「復讐……?」
「アタシらはよォ、スケバンやってたんだよ。でも羽川ハスミ、あんたにこてんぱんに伸されてもうそれは大変な目にあった。もう一年以上前になるかなあ……!」
ハスミは二人の顔をまじまじと見つめた。が、まったくのもって思い出せなかった。記憶の片隅にもなかった。
「くっそこいつ『全然覚えてねえ』って顔してる!」
「こっちはあれから大変だったのによォ!」
不良生徒たちは地団太を踏むが、そうしたからといってハスミの記憶が蘇るものでもなかった。
「それでアンタを誘い出すために『痩せられる』と噂のエステサロンを作ったんだ」
「大変だったんだぜェ? 指圧師の資格を取って、美容の勉強をして、別の店で修業を積んで」
「価格はぎりぎりまで抑えて、ちょっとでもいい噂が広まるように食生活の指導とかもしてさあ」
「お前が引っ掛かるまで何人固定客作っちまったことか」
「そこまでできるのでしたらもう復讐なんて忘れて真っ当に生活した方が幸せなのではないですか?」
心からの言葉だった。ハスミは怒りも呆れも通り越して、ある種関心までしてしまっていた。不良二人はぴたりと動きを止め、顔を見合わせる。
「……う、うるせえ! とにかく復讐だ!」
「二度と逆らえなくしてやる!」
そう言うと茶髪の方の不良は、マッサージの間に紐をすべて解いておいたハスミの施術着を勢いよく引っぺがした。
不良たちの目にハスミの裸体が余すところなく飛びこんできた。
「……え。アンタ紙ブラと紙パンは?」
「……入りませんでした」
「マジ? でもこれじゃ一番でかいのでも入んないか……」
「いやてかデッッカ。生で見るとすげえ迫力だな」
「なのにこの引き締まった腹。痩せる必要ある……?」
「というか店来たときから思ってたんだけど、こんなにデカかったっけ? いや前も十分すぎるほど乳も尻もデカかったけどさあ」
若干引き気味の不良たちにハスミはいらっとする。
「それ以上愚弄するようでしたら本当に許しませんよ」
「愚弄っていうか……ってかナニ圧倒されてんだ復讐だよ復讐!」
「ああ、そうだった!」
「はぁ……復讐って何をするつもりなのですか?」
「それはもう『マッサージ』だよ」
「アンタご自慢の胸をな」
「あひんあひん言わせてやるぜ」
「言うわけないでしょう……」
わきわきと指を動かす二人を見て、ハスミは呆れ返ってしまった。
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「んぅッ……ぃぃ~~ッ!♡」
1分後、そこには必死の形相で歯を食いしばりながら嬌声を漏らすハスミの姿があった。
「ゥ……ッぎィィ♡」
「お客様~、我慢は体に毒ですよ~」
「そうそう、思い切り声出しちゃいなって」
黒髪はそう言うと、ハスミの爆乳に見合った大きな乳首を三本の指で摘まみ上げた。
「お゛っっ……ほぉぉおォォ~~――ッッ♡♡」
ハスミは堪えようと変に力んだ状態で声を出してしまったため、ハスミのものとは思えない野太い声が出てしまった。
「いっ、んあァッ♡ ひぃうッ♡ んぐぅっ♡」
一度決壊してしまうと、もう声を抑えることはできなかった。不良たちの20本の指がハスミの爆乳の上を動き回るたびに、ハスミの喉は喘ぎ声を奏でた。
「いやあ、あのクスリ効くなあ」
「高いだけはあるわ」
「まさ、かッ……♡ あのジュース……んあぁっ♡」
「はいはーい、まともなこと喋れなくなりましょうねー」
「ぎゅーっと」
「んおぉぉお゛ぉぉ♡♡ ひゃめ♡ おっごぉォっ♡ ほォぉぉ゛っ♡ っひィ♡♡」
それから20分間ハスミは人語を話すことも許されず、強制的に敏感にさせられた胸を弄ばれ続け、ついには意識を飛ばしてしまった。
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チクリ、と左脇腹に針金でも当たったかのような痛みを覚え、ハスミは目を覚ました。
「お、すぐ目覚ましたな」
「まあもう遅いんだけどな」
右に立つ茶髪は銃のような形をした何かを持っていた。先についている小さな針をハスミの右胸と脇腹の境界に刺し、引き金を引いた。プシュ、とかすかな音とともにカートリッジ内の液体が注入される。ハスミは胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
「何を、したのですか」
「すぐに分かるさ」
「え? そんな即効性なん?」
「……いや、知らんけど」
とぼけた会話をする二人の間で、ハスミは胸の中でぐつぐつとマグマが煮え滾るような感覚を覚える。
「んっくぅ……!?」
マグマは次々と生産され、内圧を高める。やがて抑え切れなくなったマグマは山頂に向かってに駆け上り――噴出した。
「あっあああぁぁあぁぉぉおぉ!?♡♡」
ぼびゅっぼびゅるるるっ♡♡
ハスミがマグマと感じたそれは、ハスミ自身の母乳であった。それも異常な粘度を持った、緩めのヨーグルトのような母乳がハスミの胸から噴き上がり、まき散らされた。アロマの香りは掻き消え、部屋中が甘ったるい匂いで上書きされる。
「うわっ! 大丈夫かこれ!?」
「無理矢理出させるわけだし、こういう副作用もあるんかね……?」
黒髪が指先で白濁を掬い取り、しげしげと眺める。
「とにかくアレつけるぞアレ!」
「だな。だいぶ治まってきたし」
ハスミの胸の先はひくひくと震えながらも、すでにほとんど母乳を自噴させてはいなかった。まだヘイローが浮かんでいることからハスミに意識はあるはずだが、衝撃が強すぎたのかぐったりと動かないままであった。
その間に黒髪はベッドの下にあるハンドルを回し、ほぼ垂直になるまで寝台を立たせた。自重でつぶれ、横に広がっていたハスミの胸は、今度は重力に従い全体的に下に垂れる。しかし乳首だけは懸命に上を向いていた。
「これ、は……母乳……?」
「あれはそういうクスリなんだと。このどろどろ具合は予想外だったけど。でもこれでお望み通り痩せられるんじゃないか? この母乳脂肪分はたっぷりありそうだし」
「よし! 持ってきたぞ!」
茶髪が部屋の隅から引っ張ってきた金属製の機械をハスミの横に据え付けた。
「お疲れー。じゃああとはこれ取り付けて」
黒髪がチューブが繋がる透明のカップをハスミの胸の頂点に当てる。
「スイッチよろ」
「待っ――」
「スイッチオン!」
茶髪がボタンを押し込むと、機械から轟音が鳴り始める。同時にカップがハスミの乳肉に吸い付く。
「おっっほォォ!?♡♡」
ぼびゅっぼびゅるるるっぼびゅっぼびゅっ♡♡
透明のカップが一瞬で白く濁った。ハスミは舌を突き出し、激しく、しかし無意味に拘束金具を鳴らす。
「おおぉっっ♡ お゛っおあ゛っ♡ はっへぇぇぇぇッ!♡♡」
茶髪がスイッチを切り、ハスミの前に三脚を立て、カメラをセットする。
「ほォー……ほォー……♡」
「おい、羽川ハスミ」
甘ったるい息を吐くハスミの耳元に黒髪は口を寄せ、何かを囁く。
「なっ……そ、そんなことっ……♡」
「スイッチ」
「あいよ」
「あぇぇぇぇぇ゛ぇぇッッ!?♡♡」
びゅるっびゅるるるびゅるんっ♡♡
またハスミの胸から母乳が搾取されていく。時折濃厚になりすぎてダマのようになった母乳が乳首を通るたび、ハスミの脳が灼ける。
「言う気になった?」
「言え、ません……」
「スイッチ」
「お゛おぉぉおぉぉッ♡ おおンっおォ゛ォ♡♡ ぉ゛ー……♡」
「言わないと続くぞ」
「でき、まひぇ……」
「スイッチ」
「ィぎゅぅぅううぅぅ♡♡ おほぉぉぉ゛ぉぉ♡ おぉ゛……んぉ゛ぉっ……♡」
「言え」
「う、うぅ……」
「スイッチ」
「あひゅァァァァァ!?♡♡ あへァ!?♡ オ゛オ゛ォォオ゛ッッ♡♡」
――――
――――……
――――ッッ♡♡
26回目のスイッチが切れたときだった。
「い……ま……」
「ん?」
「いい゛、ます……」
ハスミは項垂れたままかすれた声で敗北宣言をした。
「じゃあ顔上げてカメラに向かってしっかりとな」
ハスミはゆっくりと顔を上げた。いつもは涼しげで凛々しくもある顔が、涙と涎でぐちゃぐちゃになっていた。
「……っくぅ」
「何ためらってんだ」
「ほら笑って笑ってー」
一度『言う』とは言ったものの、想像するだけで屈辱感でどうにかなりそうなハスミが言い淀んでいると、黒髪に13回目から追加された電マで下乳を押し上げられた。電源が入っていないにも関わらず、どろりと母乳が漏れる。ハスミはかちかちと奥歯を鳴らすと、媚びるような笑顔を浮かべた。
「正義っ……実現委員会の、副委員長である私、羽川ハスミは……あなた様たちの、玩具、です。いっ一生逆らわないことを、誓いますっ……!」
「……うん。よし、いいのが撮れたな」
「お疲れー」
黒髪がカメラの映像をチェックし、茶髪はハスミの胸から搾乳機を外した。
「うっ……」
ハスミは涙を流した。こんな犯罪者に屈してしまったことが悔しくて仕方がなかった。
「じゃあマッサージの続きといくか」
「あ、そうしよっか」
「――え」
涙が止まった。二人が言ったことに理解が追い付き、徐々に顔が絶望に染まる。
「なん、で」
「言ったら止めるとは言ってないし?」
「逆らわないんでしょ」
「あ、ああああ」
ハスミの手が無意識に動く。ガチャ、ガチャ、と虚しく手枷の音が鳴る。二人の手はゆっくりとハスミの体に迫った。
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早朝と深夜の間、最も人気のないその時間に、トリニティ某所の道には人影があった。
それは連れ立った三人の学生であり、背の高い一人を二人が両脇から支えているように見えた。
「――ぉ゛っ♡」
「なんかどんどん間隔短くなってね?」
「私らには助かるじゃん」
しかしよく見ると両脇の二人は真ん中一人の豊満な胸に手を伸ばしており、各々で好き勝手にそれを弄り倒していた。
言うまでもなくハスミと不良たちである。
深夜までハスミの『マッサージ』を行った不良たちは、弱みは掴んだのだし、そもそもこのまま監禁するわけにもいかないよね、ということでハスミを適当な場所で解放することにした。
ただ適当な場所まで連れて行くときに覚醒されて反撃でもされたらすべてが水の泡となるので、最大の弱点となったハスミの胸を弄り回しながら運ぼうということになり、今の状況があった。
「やぇ、へ……」
「やべ、理性取り戻してきたか?」
「おらっ」
「ぁへっ……♡♡」
ただ、不良たちの懸念はこの場においては完全に杞憂であった。本来であれば一生味わうことはなかったであろう乳悦を半日以上理不尽に味わわされ続けたハスミは、現時点においてこの不良たちに逆らおうという気すら起こすことができなくなっていた。
不良たちは完全屈服した人間にひたすらトドメを刺し続けるという無駄な行為をしていたのだが、彼女らがそのことに気づくことはなかった。
「ひゃからい、まへん……お゛っ♡」
「まずいまずいなんか喋ってる」
「ぎゅー」
「ぉ゛――――……っっ♡」
「もうほとんど声出なくなってるのは助かったわ……」
「だなー。一晩中喘がせたからなあ」
「なに、もぉ゛っ♡ しま、ひぇ……んぉっ♡」
「にしてもまた結構出てるな、母乳」
「出なくなるまで搾り尽くしたのにな」
「再生産早いんだな」
「ぉほぉー……♡ ぉ゛っ♡」
ハスミたちが歩いてきた道にはよく見ると点々と水滴が残されていた。不良たちの手で好き放題にされ、様々な液体を落としながらハスミはゆっくりと歩かされた。
「ここにするか」
「だな」
不良たちは手ごろな大きさの公園を見つけると、その中の表からは見えにくい場所にあるベンチにハスミを座らせた。
「じゃあとんずらしますか」
「一応気絶させといた方がよくね? 追いかけられたらだるいし」
「……だな」
どう見てもハスミはそのようなことができる状態にないのだが、茶髪の言葉に黒髪は頷いた。
「最後に搾り切ってやるか」
「じゃあアタシ念のためにハスミの口押さえとく」
「頼んだ」
二人はハスミの後ろに回り込む。必要以上の警戒心から二人は頷き合うと、同時にハスミに飛び掛かった。
「んむぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!?♡♡♡♡」
黒髪はハスミの乳房を根本から扱き上げた。ハスミの両胸の先端から生クリームのような母乳が服を貫通して放物線を描いた。虚ろになっていた目は見開かれ、本来であれば近所に響き渡っていたであろう喘ぎ声は塞がれた口の中で木霊し消えた。スカートの奥からは断続的に液体が噴出する音がした。
黒髪は固くそそり立った乳首へと送り出すように、順番に指を握っていく。何度も、何度も、母乳の出がなくなるまで。
黒髪が最後に乳首を指で弾くとびゅるりと残っていた母乳の塊を吐き出した。それが合図だったかのようにハスミのヘイローが消え、ハスミの体はだらりとベンチにもたれ込んだ。
「……ベンチに座ってたら居眠りしちゃったように見えんこともないな!」
大きく開かれた足は意識がないにも関わらず快感のためカクカクと小さく開閉を繰り返し、スカートはびしょ濡れで座板からは尿ではない液体がぽたぽたと垂れている。ポケットからは無造作に突っ込まれた巨大なブラジャーが半分以上はみ出しており、上半身を見れば服に乳首が浮いている。その先端からはとぷとぷと粘っこい白濁液を染み出させており、周囲に甘ったるい匂いをまき散らしている。
これを見て「ああ、日向ぼっこの最中に寝落ちしちゃったんだな」などと思う人間がいたら目か脳の病院へ行った方がよいが、不良たちは無理矢理自分たちにそう言い聞かせると公園をすたこらさっさと出て行った。
あとに残ったのは、たったの一日でそのあまりにも大きな乳房を開発されきってしまった憐れな少女だけだった。
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なおその日の夕方、閑静な住宅地にバケモノの雄叫びとショットガンの音、あとついでに悲鳴が響き渡った。それらがすっかり聞こえなくなり、恐る恐る外に出た住人が見たのは例のマッサージ店が瓦礫になっている姿だった。中にあったものは粉々に破壊しつくされ、瓦礫から救助された二人はすっかり怯えきっており、何があったのかは決して語ろうとしなかった。
ちなみにハスミは休日が明けるころには心身ともにすっかり回復していたのだが、一回り大きくなった胸だけは元に戻らず、また新たにダイエットを決意するのであった。