ネモとミミズズ
「うーん、困ったなぁ……」
とあるピクニックの一日。ネモは悩んでいた。
明朗快活という言葉の似合う彼女だが、悩むことがない訳ではない。どんなポケモンを育てようかとか、このポケモンのスペックを活かすならどんな技を使わせようかとか、バトルに関する悩みは尽きない。
しかし今回はバトルとは関係あるものの、今までとは全く異なるタイプの悩みだった。
他の手持ち達とボール遊びをしていたパーモットが、遊んで貰おうとネモの元に駆け寄ってくる。しかしネモの雰囲気を感じ取ったのか、心配そうにネモの顔を覗き込んだ。
「あ、ごめんねパーモット。ちょっと考え事しちゃってた」
一緒に遊ぶのは後でね、とパーモットの頭をわしゃわしゃと撫でる。パーモットはこくんと頷き、手持ち達とまた遊びはじめた。
「いつかは会っちゃうかも……とは思ってたけど、いざ実際に会うとどうすればいいかわからないな……」
ネモの視線の先にいるのはミミズズだ。
このミミズズ、先程のパーモットがパモットだった頃に捕まえたポケモンだ。仲間たちとは問題なく打ち解けているのだが、彼女は少々……というかかなりバトルが苦手なようだった。ポケモンバトルが好きなネモにとってはかなり重大な問題だ。
実際、捕まえる時も自分の身を守るばかりでこちらにはほとんど反撃してこなかったことをよく覚えている。捕まえた後に技を確認すると攻撃技はしっかり覚えていた、と言うのもかなり印象的だった。
もちろんそういう性格のポケモンがいてもおかしくない、ということはネモもわかっている。とりあえず今は少しでも自分に慣れてもらおうと、バトルには出さないながらも常にボールに入れて連れ歩いていた。しかし、やはりポケモン自身にもバトルの楽しさを知ってほしいと考えてしまう。
「でもこういうの、ちょっと自分勝手だよね」
溜め息と共に言葉が漏れる。自分がバトルに熱を上げるあまり、アカデミーの他の生徒から距離を置かれがちなのを思い出してしまった。
遊び終わったようで、手持ちのポケモン達が各々の早さでネモの下に集まってきた。ミミズズもネモをしっかり主人と認識してくれているようで、ゆっくりながらもネモに寄ってくる。
「キミがどう考えているのか、わかったらいいのにな」
ミミズズをモンスターボールにしまいながら、ネモはぽつりと呟いた。