ネストボールラルトス概念1

ネストボールラルトス概念1



「え、えーい!」

「ビッパァ!?」

「よ、よし!お願い・・・!捕まって・・・!」

「ビッパァ!!」

「あぁー!?」

「ビッパッパァ!」


何度か投げて、ようやくヒットしたモンスターボールからあっさりと抜けだし、しかも私をバカにするかのように笑いながら去っていくビッパを見ながら、私はため息をつく。


「これで10回連続で失敗・・・どうしよう・・・」


手持ちのモンスターボールの数を横目でちらと確認をする。

もう残りはプレミアボールが1つだけ。折角もらったおこづかいで買い集めたモンスターボールも、底を尽きてしまった。


「やっぱり無理だったのかなぁ・・・私がポケモントレーナーになる、なんて・・・」


夢見た理想と、目の前の現実のギャップに打ちのめされて空を仰ぐ。


昔見たテレビのポケモントレーナーに憧れて、ポケモントレーナーを夢見た。

おかあさんに無理を言って、おこづかいをたくさん貰って、機会も貰った。


私のまちにはポケモンに詳しい人がいない。だから話としてよく聞く「さいしょの3匹」なんて貰う方法はなかった。

だからボールを頑張って投げて、捕まることを祈るしかなかった。


そんな神頼みを繰り返して10回目。ボールもほとんど尽きてしまって、最後の1個で捕まるなんてお気楽にはなれなかった。


他にポケモントレーナーを目指した子達はモンスターボールであっさり捕まえて、もう旅立ったというのに。

悔しさで涙がにじむ。


「まだ、まだだもん・・・おこづかいはあと1000円あるから、これであと5個買えるもん・・・」


ぐい、と涙を拭って、フレンドリィショップに足を運ぶ。

モンスターボールコーナーに向かってボールをとろうとした時、ひとつのボールが目についた。


「ネストボール・・・?」


見てみると、見出しに「本当の初心者向けボール!」「モンスターボールで捕まえられないそこのキミに!」とある。

店員さんに聞いてみると、どうやら弱いわざを使うようなポケモンを捕獲しやすくなるボール、らしい。

モンスターボールでポケモンを捕まえられない人用の、言ってしまえば護身用のボール、とのことで。


「・・・・・・・・・」


もう一度ボールを見る。値段は1000円。今のおこづかいを全て使えば買えなくはない。

だけど、これでも捕まらなかったら・・・?

不安な気持ちに襲われたけど、それでもと。

一縷の願いをこめて、私はネストボールを1つ、購入した。



「なるべき弱そうなポケモン・・・弱そうなポケモン・・・」


ネストボールを購入してから、数時間が経とうとしていた頃、私は草むらでポケモンをひたすら探していた。

たった一回のチャンス。無駄にしてしまうわけにはいかないのだ。

絶対にポケモンを捕まえたい私に、妥協の言葉はなかった。


そんな時、がさ、と草むらから音がした。


「!」


「ラ、ラルトス・・・」


出てきたのは、ラルトス。

滅多に人前に出てこないポケモンだ。

その理由は単純で


(ラルトスは、テレポートですぐ逃げちゃうくらいバトルが苦手なんだっけ・・・)


私にすら怯えているあの子なら、捕まるかもしれない。

そんな風に考えていると、ラルトスはなにかわざを使おうとしていた。

自分の体を光が包むあの感じは・・・

「まさかテレポート!?」


いきなりのことに考えてる余裕は、もうなかった。

私は手にもったネストボールを思い切り構えて、投げた。


「ラルトス!?」

びっくりしてテレポートが中断されたラルトスが、ボールに入る。

そして、ボールが揺れ始めた。


1回・・・


(お願い・・・!)


2回・・・


(最後のチャンスなの・・・!)


3回・・・


(どうか、私の夢を叶えさせて!)


そして、カチン、と音が聞こえた。


ネストボールは、もう揺れていない。


「や、やったの・・・?」


ボールから、ラルトスを出す。


出てきたラルトスはまだちょっとびっくりしたままだったけど、しばらくすると私に両手をあげて挨拶をした。


「や、や、やったー!!!!!」

「ラルトス!?」


感極まってラルトスに抱きつく私。


こうして、私のポケモントレーナーとしての第一歩がはじまったのだった。


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