ナンパされてヒモになる
お金がないなら養って貰えばいいじゃない!!どうしよう。
潔世一は困っていた。
それは年齢と共に客も支払いの額も減っていっているという事。
赤瀬や黒島に頼めば額を増やしてくれるだろう。なんなら貢ぎ物の中に高価なものがあるし、単にそれを売ってしまえばいい。
だが、二人ともこれから数ヶ月は予定があって会えないし、そもそも金に困っていると言えばそれを口実にあれよあれよと囲われる可能性が無きにしも非ず。
そして高価な貢ぎ物は大体オーダーメイドで俺専用。しかも一部はGPSが付けられているものもある。つまり売った時のリスク的に金にかえられない。
金が足りない……
「よし、ナンパされよ」
***
ひと回り以上、年の離れた少年に恋をした。
男はショタコンであると自覚があった。正確には小学校高学年から中学生までの大人と子どもの狭間にある、声変わりしようとしているかしていないかの年齢の子どもが恋愛対象である。
「急に近づいてきてなぁに?おにーサン。
ゆーかいでもするつもり?」
「失礼だなぁ。こんなに人が居るのに堂々とそんな事しないよ」
「じゃあ何の用?まさかお家に帰れとか言うわけ?それともただ話をしに来たの」
「ハハッ、まさか」
「……そう」
少年はチラリとこちらを見たが、すぐにまたそっぽを向いて、どこか遠くに視線を置いてしまう。男はそんな少年がどうしようもなく美しいと思ってしまった。
「君こそ何故こんな時間にここに?」
「…別に………よくある家出ってやつ。大人なら察し着くでしょ 」
「ああそうだね、でも俺だったら仲のいい友達の家に転がり込むかな」
「残念だけどいじめで不登校だったもので」
「!……すまない」
「…別に、いい」
無神経な事を言ってしまった。
少年はどうでもいいというように顔を背け、スマホをひらいて目線を下にやった。
「本当にごめ、……」
俯いて少し長い髪の向こうに隠れた少年の目に何処か諦観のようなものが浮かんでいるのを見つけて口を閉ざした。代わりに別の言葉を唇に乗せる。
「苦労してるんだね」
「ははっ、まぁコドモなりに?」
どこか諦めているように少年は笑う。
「……おにーサン、もう帰ったら?こんな家出少年に話しかけてる場合じゃ無いでしょ?」
「俺は別に気にしな、」
「こっちが気にする」
「だが、」
「未成年に手を出したペド野郎!…なんて、言いふらしていいの?」
話すのが面倒になったであろう少年は、にこりと拒絶を表した妖艶な笑みを残して話は終わりと言わんばかりに背中のリュックサックを持ち直して、男に背を向けた。
けれどどうしても諦めがつかず、こちらを見て欲しくて、考える前に言葉が口をついていた。
「それ、本当にしてみないか?」
声は思いのほかよく響いた。少年は驚いたようにこちらを振り返る。
「……なに、悪い冗談、」
「冗談なんかじゃない、財力には自信があるんだ。」
「……本気?」
「勿論」
「…………」
「衣食住は絶対に保証する。勿論タダでとは言えないけど。」
「…………じゃあ、……よろしく、お願いします」
「!あぁ!よろしくね」
自分よりもふた周りほど小さな手をとって男は歩きだす。
あぁ今日はなんて素晴らしい日だろうか!!!
これからこの少年を囲いこめるのだ。
男は幸福を感じながらふわふわとした心地で我が家へ向かった。
ニヤリと少年が悪い笑みを浮かべたことも知らずに。