・ナマイキGray

・ナマイキGray


「おい、アイス買うてこい。暑くてかなわん、あず・すーん・あず・ぽっしぼうじゃ」


 銀髪の少女はだらしなく寝転んでテレビを見ながら、こちらを振り返りもせずに言う。


「金やるからそんくらい自分で行けよ。ウマ娘なんだから走れば早いだろ」


「は?こんな暑い中外出るとか嫌じゃが」


「コイツ……」





 事の発端は一昨日、いつものようにPCで掲示板を見ながらスマホでウマ娘のアプリをやるという二刀流をしていたら。


「……?うわっ、なんだこの光!?」


 突如として強い光が後ろで発生してモニターの液晶で反射され、後ろを振り返るとそこには女の子がいて。

 腰まで届く銀髪のロングストレートがまず目に入り、薄茶色の大きくてクリクリした瞳と幼げな顔立ちをしている。そして頭の上には髪と同じ色の馬のような耳が生えていて、腰にはこれまた銀色の毛のふさふさした尻尾があり、その服装はよく見るとトレセン学園の半袖制服だ。

 そう、彼女はつまり───。


「…………ウマ娘?」


「んあ?な、なんか身体が変じゃ…まさか本当じゃったのか…?」


 ワンダーアキュートよりもさらにジジ臭い口調で自分の体を確認する少女。彼女は誰で、どこから、何の目的で俺の部屋に来たのか。………何がなんだかよくわからない。そう思いつつ眺めていると。


「おい若造、見せ物じゃないんじゃぞジロジロ見るでない」


「え、ああすまん…じゃなくて、あんたは何者だよ?」


「わし?わしはただの老人じゃ、元だがな」


「老人?でも今はウマ娘…」


「ああ、ウマ娘になれる代わりに~とか妙なこと書いとるスイッチがあったで試しに押してみたんじゃ。そしたらこうなったわけ」


「はあ」


 ウマ娘になれる代わりに…代わりに?ウマ娘になったあと何かが起こるのか?


「ウマ娘になれる代わりに、の続きは?」


「えーと…ちと待てよ……ああ、思い出したわい。確か…『ウマ娘になれる代わりにあにまん民と強制的にエッチさせられるボタン』じゃったかの」


「えっ」


 あにまん民と……強制的に、エッチ。あにまん民である俺の前に現れたと言うことは、つまり。


「その相手が俺…ってことか?」


「……まあそうなるじゃろな。でもわし、せっかくウマ娘になったのにお前みたいな腑抜け男と性交とか嫌なんじゃが」


「うるせえよ」


 どうせそっちもあにまん民だっただろうによく言えるものだ。見た目こそ好みだが、中身がこんなでは勃つものも勃たない。


「あ、わし行く場所ないからしばらく厄介になるがよいな?まさか女一人、身一つで放り出すわけはあるまい」


「はあ…何でもいいけど勝手なことすんなよ」





 そういうわけで、突然現れた芦毛のウマ娘としばらく屋根の下、という状況になったわけだが。


「アイスはまだか?ほら、はーやーくー。はーやーくー買うてきてくれよー!」


 クソ図々しい。某ヒモ娘の真似をしながら催促してきやがる。追い出したくなってきた。三日目にして既に限界だ。


「ほれほれ、たくさんアイス持ってきたらパンティーとか見せてやらんこともないぞー?」


 そう言ってこちらを向き、ネット注文した白ワンピースの裾をヒラヒラさせて挑発してくる。

 俺が手を出せないと高を括ってやがるらしい。


「……お前のワガママには付き合いきれねえよ」


 寝転がったままの少女に覆い被さり、ワンピースの肩紐に手をかける。


「なっ……!?やめ、よさぬか…!」


「お前が二度と生意気な口聞けないよう教育してやるよ」


 …ワガママウマ娘を“わからせ”てやる。





「はーっ…はっ…あっ……」


「これまで我が儘言ってすみません、は?」


「はい……ワガママっ…言ってすいません、でした……♡」


 “教育”はひとまず完了した。これで今までのように困らせてくることはなくなるはずだ。


「よしじゃあ、『ご主人様に絶対服従します』って言え」


「それは嫌じゃ」


「おい」


 前言撤回、やっぱりコイツを完全に手懐けるのにはかなり手間がかかりそうである。



芦毛のじゃロリちゃん


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