ナイトメア・ビフォア
都内にあるホテル。
チェンソーの少年を狙って各国の刺客が入り込み、公安による警戒網が敷かれている中、彼女らは悠々と情事に耽っていた。
「師匠、そろそろ狩りに出向いた方が」
「もう一回だけ…」
トーリカに身体を預けた師匠は一糸纏わぬ姿で黒髪を振り乱し、深く結ばれた弟子に腰の抽送を再開するよう促す。2人は呼吸を合わせて身体を動かし、歓喜の坂を登っていった。
「もう一回シてからいこうか」
師匠とトーリカの宿泊先とは別の宿。
中国よりやってきた刺客、クァンシが恋人に囁く。岸辺が太鼓判を押す凄腕にして、4人の魔人を囲う同性愛者の女性である。
デンジ一行が入ったデパートに、無機質な群衆が差し向けられる。彼らは人形の悪魔の影響下にあり、接触した相手を仲間に変えてしまう。
「そろそろ騒がしくなりますね…」
弟子との秘事に区切りをつけた師匠は、デパートの屋上遊園地の住人であるゾウの乗り物の背中に座ったまま、空を眺める。
建物内では息を潜めるトーリカが、師匠のテストに向けて気持ちを高めていた。
「クァンシ様〜、サンタも来てるみたいだし、明日にしましょ。私達昨日寝てないし、もうめちゃくちゃですよ」
クァンシの愛人の1人、ピンツィが下着姿で訴える。デンジのいるデパートの緊張感が高まる間、クァンシは愛人達を相手にしていた。
4人の女達はいずれも気怠そうにしている。クァンシも同様だが、これは疲労ではなく本人の性格ゆえである。
クァンシは他の刺客に少し遅れて、デパートに向かった。公安のデビルハンター達とサンタクロースが差し向けた人形軍団が衝突するデパートの側で様子を窺う、黒服の男達の前に姿を現す。
「魔人が複数…」
「サンタの仲間か?」
クァンシは刀を抜くと、姿勢を低くするーーその姿が男達の視界から消えた。
「消えた……」
男の呟きが漏れる頃、クァンシは既にハンター達の脇を通り過ぎている。彼女は放たれた矢のような勢いでデパート内に走り込み、階段の踊り場で立ち止まった。
得物の方が先に限界を迎えた為、クァンシは新しい刀に持ち替える。
「ホォイ!お前頭が変だぞオおん!!サトオオおン!!」
「ァイ!!」
クァンシの通り道にいた人形、公安ハンターが等しく両断される。
「天使!中村さん!構えろ!!死ぬぞ!」
迫り来る女の姿をした死を、アキが契約した悪魔が予知した。辛うじて天使への一撃を防いだアキだったが、勢いを殺しきれずに天使と揃って気を失ってしまう。
クァンシがターゲットの少年の姿を捉えた。