ドロテアの番

ドロテアの番








(さ、さっきから何を見せられているのよ、私…!!)

ドロテアは目の前の性行為を、顔を赤らめながらも目を逸らさず耳を塞がずただただ凝視していた。

あのホムンクルスが、一心不乱に腰を打ち付けている。

腰を打ち付ける度、打ち付けられた方の男の膝が跳ねている。


この今にも吹き飛びそうな長屋の中は不思議と静寂に包まれているように錯覚し、肉体がぶつかり合い、汗と体液が迸る音がドロテアの耳によく響いてこびりつく。

外は正雪を慕う浪人とドロテアに従う配下が乱闘を起こし、加えてサーヴァント3騎が暴れているというのに、まるで遠い場所の出来事のように感じる。


ドロテアはホムンクルス、もとい正雪の股間を見た。未だ少女には刺激が強すぎる光景だ。先の時はショックで気絶してしまったが、自分にも同じ物が生えている今、やっと見慣れてきたところだ。

「………っ」

ゴクリ、と唾を飲んだ。

何故そうなったのかはわからないが、あれを自分も実行しないと己の身体に強いられた呪いは解けないらしい。なんとも面白可笑しい術をその場で編み出したものだ、アサシンめ…そう苦々しく思っていると、目の前の二人の身体が一層跳ねた。どうやら一通り事を終えることは出来たらしい。

ああ、ついに私の番が来たのか…。


場所を変わってもらい、ドロテアは眼下の男の顔を見た。私は彼の事をどう想っているのかよくわからない。私は一流の商人で一流の魔術師で一流の貴族で、彼は日雇いで生きる魔術がそこそこできる程度のサムライで…。

ドロテアは性行為の経験が勿論無い。処女を捨てるわけではない。だが、性行為は性行為だ。それを、この男に、捧げていいのだろうか─?

そう思案していた刹那であった。先程まで一切声をあげず耐え抜いた男の、癖のある前髪に隠れた目元の紅色を見て、呼吸を整えようと熱の入った吐息を聞いた瞬間、一連の行為を見て緩やかに立ち上がっていた己の陽物が一気に熱を持ち、下着を押しのけ、短いスカートの裾を捲りあげて伸び上がってしまった。


ドロテアは突然の感覚に思わず悲鳴を上げ、混乱する。私はこんな破廉恥ではない!男が持つ器官はこんなにも単純なの!?

半ば泣きそうになりながら、正雪を見た。無意識に助けを求めようとしていた。正雪は後ろを向いており、俯きながら衣服を整えていく。

「…疾く、済ませよ。貴殿が、そう言ったのだぞ…」

表情は読めなかったが、彼女の耳はまだ赤くなったままだった。


時間は限られている。サーヴァントを遊ばせるだけの魔力にも限りがある。どのみち先に進まねばならない。ならば、覚悟を決めよう。

私はドロテア・コイエット。優秀な魔術師で貴族。商人としての才もある、いつだって優雅で気高いレディ──。

少し早いけれど、男を弄ぶぐらい、こなしてみせよう─!


ドロテアは緊張を涼しい顔で隠しつつ、スカートの中に手を伸ばし、勃起の過程で中途半端にズレた下着を膝まで下ろした。下着は女性器からなる体液で少し湿っていたが、なんともない顔でやり過ごす。

ドロテアの服は丈の短いワンピースだ。

股下1寸ほどしかない裾を少し託し上げるだけで、ドロテアの股間は露わになった。

伊織の方を見る。男の股間なんて滅多に見ないものだ。普段なら混乱で発狂していたかもしれないが、今は非常時。すんでのところで平常心を保っていた。うまく言えないが、伊織でよかった。ドロテアの顔は赤くなったままだが、灯りの無い部屋で助かった。


先程の正雪の行為を思い出し、見様見真似で伊織の腰を引き寄せ、可憐な容姿とは裏腹に毒々しく脈打つ肉棒を押し当てた。

(う…へ、変な感じね…)

少しずつ押し進める。先程まで正雪が蹂躙していたため、挿入は思っていたより容易のようだ。しかし…。

「〜〜〜〜〜っ!?!?!?」

初めての感覚に、全てが持っていかれそうになる。血が巡り、神経の一つ一つが敏感になっている肉棒が、あらゆる方向から撫で上げられていく。

「ヒッ…いっ!こんなの、聞いて、ない…!!」

腰が引けて、思わず抜こうとする。

思いとどまって、もう一度奥へ。

それが思わず良い所を突いたのだろうか。伊織の膝が跳ね、ドロテアはまたとない快感を得た。しかし、思うままに蹂躪するわけにはいかない。

ドロテアは逸る気持ちを抑え、ゆっくりと揺らしていった。

「い、嫌よ、嫌!駄目、こんなの、駄目…!」

ドロテアは疾く済ませたかったが、簡単に果てるのは避けたかった。だって、こんなのは一方的な行為だ。ならばせめて、せめて目の前の男を、悦ばせたいのだ─。

「はっ…あっ…気持ちいっ…んっ、気持ち、良く、なって…!」

余裕ある貴族の娘として、どうか相手を思いやる気持ちだけは残したかった。傍から見れば、一生懸命な少女の姿なのだけど。

伊織はというと、とっくに拘束が解かれた腕を顔まで上げて、袖を噛んで堪えているようだ。

(彼は構わないと言っていたけど…やっぱり、男でも恐ろしいのかしら。私が彼の立場だったらどれだけ甘く囁かれても駄目だったかも。無理にでも催眠か暗示でもかけて、これは夢だと思い込ませればよかったかしら──)

最善を選んだ筈だけれど、それでもやっぱり不安だった。宮本伊織は、どう思ってる?

私は彼がわからない。わからないけれど…。

ドロテアは伊織の顔を覗き込んだ。

顔は腕で隠れて見えなかったが、耳が熱っぽく染まっているように見えた。自分勝手かもしれないが、少し安堵する。気持ち良くなっているなら、何よりだ─。

「あっ駄目っ!まだ、待っ…!」

安心するも束の間、少しでも気を緩めると全て持っていかれそうになる。熱を放出したい。腰を速めているのが自分でもわかった。そろそろ終わりにしなければならない。

「あぅっ…駄目っ!もう、少し…あ、ああ、あ─!」

寄り添うように、倒れ込むように己の身体を伊織の身体にピタリとくっつけ、奥へ奥へと打ち付けたドロテアの腰がビクビクと震えた。

Report Page