ドレスローザ戦あとの妄想
王女さまの名前は未定で、とりあえず「琥珀」だけ使わせてもらいました。容姿とかはスレを拾いつつ捏造してます。
ローと同じように覚悟を決めて王女さまも変わってしまったというのが欲しかったで、普段は似非お嬢様言葉を使う高飛車な戦闘員というイメージで書きました。お互いに変わってしまったけど、話すときだけ素が見えるのが好きなので。
それでもよろしければどうぞ。
麦わらのルフィ、死の外科医、革命軍、さらに多くの海賊が協力してドフラミンゴを辛くも打倒した。空はどこまでも青く、この国を裏から操っていた糸が消え去ったことを祝福するようだった。
ついに本懐を果たし、穏やかな気持ちを抱えながら回復に努めているローの前に、カツカツ響くヒールの音が止まる。気だるい動作で顔を向けると、ツンと澄ました顔と大きな白いリボンでくくった長い髪がローの目に入る。
「トラファルガー、ちょっとよろしいかしら?」
「なんの用だ、琥珀屋」
彼女は革命軍の一人で、この戦いの協力者だった。「オーホッホッホッ」となんとも似非っぽい高笑いをしながら、市民の避難誘導をこなしていたのが視界の端に残っている。だが戦いが終わった今、話すことなど特にないはずだ。
不自然な間を置いて立ち止まっている彼女に、ローがイライラし始めたとき、優雅な仕草で彼女はローの前に膝をついた。そして後ろに手を伸ばし、長い髪をまとめていた大きな真っ白なリボンを解く。
「これ、わたくしの大事なお友達からいただいた命と同じくらい大切な宝物ですの。…………でも……あなたが望むのなら、これをお返しいたしますわ」
「だからどういう意味だ。返してもらう覚えなんて無いんだが」
会話になっていない返答に、イライラがさらに募っていく。
彼女は目を伏せて、優しい声で呟いた。
「お兄様に持ってもらえたほうが、ラミちゃんも喜ぶと思いまして」
「……は? おまえ……まさか…………────か?」
「ラミちゃん」という言葉の響きに既視感を覚えたローは、呆然としながらある名前を口にする。記憶の奥底にしまわれて十数年経った名前だった。二度と呼ぶことはないと思っていた名前だった。
彼女はその名を聞いて懐かしそうに、苦しそうに、そしてほんの少し嬉しそうにして、柔らかく微笑んだ。
「はい。お久しぶりです、ローさま」
その顔が記憶のなかの幼い少女に重なる。薄っぺらいお嬢様言葉のない微笑みには、かつて見た王族の気品があった。
「なんで王族が革命軍なんかに……」
「もちろん贖罪のためです」
とはいっても、わたくし達の罪は到底許されるものではないですが、と暗い顔になる彼女に、周りからの好奇の目線が突き刺さる。今まで接点が無かったものが急に訳ありげに話し始めたのだから当然だろう。続きを話したいが、ここで話すにはこの話題は個人的過ぎる。
「ローさま、わたくし二人っきりでお話がしたいです」
「ああ、おれもだよ」
純粋な笑顔でおねがいする彼女にローが頷く。その隣に並んでいた妹がもう居ないことにキリキリと胸が痛んだ。
混乱のなか、2つの小石だけが残された。