ドレスローザの異変

ドレスローザの異変


…と、そんなことを考えていた数日後

どうやらさっそく、面倒ごとを起こしてくれたらしい


舞台は新世界、愛と情熱の国"ドレスローザ"

国としての規模は新世界では中の上と言ったところ

軍隊は屈強で有名だが、国としては裕福という訳ではないため総合的な国力は低い

しかし、周囲の国家とは非常に友好的な外交を行い、800年もの間戦争をしたことのない新世界の平和の象徴として有名な国である

先に挙げた軍兵の頑強さも、国民を戦渦に巻き込まないためというのだから筋金入りだ

国王は800年前からリク王家が代々勤め、その性格は皆温和ながら強い意志を持ち、特に現国王"リク・ドルド3世"は争いを好まない民思いな王として有名であり、しかし自国のみを鑑みているかと言えばそうでもなく、戦争の混迷が広がらぬようにと、友好国"プロデンス"へ援助を行うなど、まさに王の鏡と言える人物だ

私自身ドレスローザと関わったことはないためその人となりを直接知っているわけではないが、聞こえてくる評判は良い物ばかり

強いてあげるなら、王としては善人過ぎて腑抜けている、くらいなものか


…そんな王がつい先日、突如として狂乱した

報告によればリク王はその夜、民の財貨を奪い、自ら馬を駆り剣を持って人々に襲い掛かったそうだ

それを止めたのが、海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴ

彼は狂喜の王を止めた英雄として国民に歓迎され、王下七武海という立場もあって海賊でありながら同国の新たな王として即位した


…ハッキリと言おう

おそらく、いや、十中八九、裏でドフラミンゴが何らかの細工をしているのは目に見えている

そうでなければ民第一のリク王の突然の狂乱も、タイミングよく現れたドフラミンゴの説明もつかない

そもそも事が起きたのがドレスローザという時点で、運命めいたもの以上に作為的なものを感じざるを得ない

というのもこのドレスローザ、私の記憶が正しければ、800年以上前の時点では統治していたのはリク一族ではなく、天竜人となり聖地へ向かう前のドンキホーテ一族だったはずだ

それは言ってみれば、かつての王族が現王族の凶行を収め国に舞い戻ったことになる

余りにもドラマチックがすぎる、というものだ


…と、ここまでくれば、ドフラミンゴが怪しく思えるのも納得できるだろう

とはいえ、今あげたのはすべて状況証拠

実際ドフラミンゴが仕組んだことだと証明する物的証拠はない

仮に悪魔の実の能力をはじめ何らかの手段でリク王の凶行を演出したとして、そのタネが割れない限りは深入りしても逆にこちらが被害を被るだけ

気になる部分は多いが、現時点では静観、確証が得られるまでは情報収集に努めるほかないだろう


…正直、不安はある

いや、不安しかない

なにせ、数多の海賊はびこるこの海であってなお凶悪と言われる海賊が、己の国という不可侵領域を、合法的な手段で手に入れたのだ

今後、この地から今の大海賊時代の混沌をさらに加速させうる何かが生じないとも限らない

いや、確実に生じるであろう

そんな予感がする

しかし、わかっていても静観するしかない状況、実に歯がゆいものだ

…せめて今後何が起きても迅速に動けるよう、情報収集だけは慎重に、かつ力を入れて行わなければならない


出来ることなら、王になった時点で満足する程度に、ドフラミンゴの野心が小さい物であればいいのだがな…

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