ドラム島編inウタ5
チョッパーが家臣二人のアゴを撃ち抜き、ウタが王の兄を焼き斬り眠らせ、ルフィが王を十八番技で空の彼方へと吹き飛ばした事でドラム王国がドクロに敗北を喫した後、唯一繋がっていたロープウェイから即興でゴンドラを繋げた島民達とドルトン、ゾロ、ウソップ、ビビはようやくゴンドラの乗り合わせ場所に到着する。
ゾロを矢面に立たせウソップが城の正門前まで行くとそこへ城の頂上にいたルフィが飛び込んでいく。
「おりゃあああああああああああ!!!あ、ゾロ ウソップ」
「なにいィーーーっ!!!?」
「ルフィ!!!」
『ぎゃあああああ』
何してくれてんだと激昂するゾロに対してルフィはゾロの来ていたコートがワポルの家来達のものであったがために突っ込んじまったと言い、お前らも登ってきたんだなと呑気に笑いそこにウタも近づいていく。
「ウソップ、あんた登れないとか言ってなかったっけ?」
「はっはっはっは、バカいえおれはそこに山があれば登る男だぜ。しかしこの絶壁はちょっとした冒険────」
「ロープウェイで登ってきたのルフィさん、ウタさん。ナミさんとサンジさんは無事なの!?」
「ああ、元気になった」
「よかった」
ウソップのホラ吹き冒険話を無視しながら話を進める一行。ゾロに城のてっぺんで何をしてたのかと問われたルフィが王様をブッ飛ばしたと言ったタイミングでドルトンが登ってきていた。
「…じゃあやはり…さっき空の彼方へ飛んで行ったのはワポル……!!あとの三人はどうしたんだ!!?」
「ウタとトナカイがブッ飛ばした」
「私がおかっぱおじさんをやっつけたんだよ!!」
「そうだっ!!おい聞いてくれよ、新しい仲間を見つけたんだ」
「なにっ!?」
「………あのワポル達を………………トナカイ!?」
トナカイというものに心当たりのあるドルトンが周囲を見渡すとそのトナカイは思ってた以上に近くにいた。木に対して隠れられていない隠れ方をしたチョッパーを見つけたドルトンはかつてヒルルクが死んだ時に出会った怪物と同じ青い鼻をしたチョッパーを見て戦ってくれたのだなと深く感謝する。
「ありがとう、ドラムはきっと生まれ変わる!!!」
礼を言われ黙ったままのチョッパーとなんの事やらといった様子のルフィとウタ。だがそこへ後からやって来た島民達がチョッパーを見つけるとバケモノだと驚き始める。ドルトンがよさないかと制止するがウソップがバケモノだ!!!と絶叫した事にショックを受けたチョッパーがその場を去っていってしまう。
それをルフィがあれが見つけた仲間なんだと焦って追いかけていく。
「ぎゃあああああ!!!」
「待てよ!!バケモノォ!!!!」
『オイ』
ルフィのバケモノ呼びに総ツッコミを入れる一行らの中でウタもはーやれやれといった様子でルフィ達を見つめていたが、突如異変が体に走る。
「……あ、あれ?どうしちゃったんだろ私……なんか…フラフラする………」
「おいおい大丈夫かよ……能力使って眠くなっちまったんじゃねェのか?」
「いや……それはもう……とっくに解除……して………!!!」
「えっ……!?おいウタ!!?どうしたんだお前!!!」
「ウタさん!!!……!!すごい熱っ!!どうして……!?」
倒れたウタを抱え込んだビビは顔を赤らめ息苦しい様子のウタの額に手を当てものすごい熱を発しているのを確認し、酷く動揺する。その尋常ならざる雰囲気を察知し、チョッパーを追う足を止め戻ってきたルフィもウタを大丈夫か!?と心配する。
「何が起きたんだ!?おい!!しっかりしろウタ!!!」
「ウタさんしっかり!!急にどうして……!!!」
「どきなお前達っ!!!………なるほどこりゃあヒドイ状態だね………ハッキリとしたことは言えないが、恐らくムッシュールの放つ毒胞子を微量だが吸っちまったんだろうね………すぐに病室へ運びな!!!」
くれはの指示通りにルフィ達は病室へウタを運んでいく。そのケガ人も連れて一人残らず入んなという指示もされ、島民らはドルトンを連れ城の中へと入っていく。物陰で逃げ出す機会を伺っていたがウタの突然のダウンにどうしようかと焦っていたナミとサンジもくれはの猛烈な蹴りと恫喝に従い病室へと戻っていく。
その様子を遠巻きに見て何か考え込んでいた様子のチョッパーに気づいたくれはは何を考えていたのかを察し声をかける。
「チョッパー、あたしゃ追加のケガ人と元からいる病人共で手一杯……任せてもいいかい?毒キノコにやられちまった小娘を」
「……!!!任せてよドクトリーヌ!!おれはもう毒キノコなんかに負けねェ!!!必ずあいつを助けるよ!!!」
「ヒッヒッヒ!!ああ…頼んだよ……!!」
それぞれの患者を受け持った二人のドクターが城へと入り、正門前からは全ての人間がいなくなる。
そして真っ先に始まったのは毒胞子に侵されたウタの治療だった。心配はないと思いつつも万が一を思いくれはも同席してチョッパー主導で治療は行われていった。その部屋の前で立ち入り禁止の看板がかけられた扉の前でハラハラとした表情のルフィと祈り続けるウソップ、二人よりかは冷静ながらも落ち着かない様子のゾロ。そんな三人の耳に時折届いてきたのはアミウダケやネズキノコ等のキノコの名称と抗生剤に抗体反応やらの医療的な用語ばかりで三人の不安は募るばかりだった。
そうしてしばらく時間が過ぎた頃、ゆっくりと扉が開かれると無表情のくれはが出てきた。
「…………」
「えっ……!!?な、なァ!!ウタは!!?ウタは大丈夫なのか!?お、おれよっ!!あいつと今日までずっと一緒に過ごしてきたんだよ!!死なねェよな!?なァ!!?」
「ええいっ!!うっとうしいよ若僧が!!!あの小娘は無事だよっ!!毒胞子自体は微量だったからもう少し安静にしてりゃすぐにでも起きてくるから勝手に入るんじゃないよ!!!」
動揺しながら掴みかかるルフィを払い除けながら無事だと伝えたくれはは次の患者が待ってると別室へ向かっていく。ウタがもう大丈夫だと知ったルフィはホッと胸を撫で下ろし、じゃあトナカイ探し再開だ!とゾロとウソップを連れ飛び出していく。
別室へと向かっていったくれははサンジの治療を始めていた。治療とは思えない音が鳴り響き、ようやく終えた頃には頑丈なサンジも泡を吹きダウンしてしまっていた。
「ヒッヒッヒ、やっぱり悪化してたよ。無理するからさ」
ひと仕事終えて酒を飲みながら出てきたくれははベッドに横になっていたドルトンに城にある武器庫の鍵の所在を問う。それに対しドルトンは昔からワポルが携帯していたから今もそうならワポルと共に空の彼方へ飛んでいってしまっただろうと言う。
「なに本当かい?困ったね」
「ドクトリーヌ?ウチの船員の治療代なんだけど…タダに!!…それと私を今すぐ退院させてくれない?」
めちゃくちゃな要求をするナミにくれはは眉を顰めて無理だと切り捨てる。看病にあたっていたビビもくれはに同意するが死ぬ気がしないとナミは譲らない。
するとナミは懐から鍵を取り出しチラつかせる。吹き飛んでいく前のワポルと遭遇した時にスった武器庫の鍵だ。それを交換条件として突きつけたナミに呆れた小娘だと言いながらくれはは治療代については了承し鍵を受け取る。
が、もう一方の条件は医者としてのめないと言ったためにナミは鍵を返してと言うがそこへくれはは畳み掛けるように言葉を連ねる。
「いいかい小娘、あたしはこれからちょっと下に用事があって部屋をあけるよ。奥の部屋にあたしのコートが入ってるタンスがあるし別に誰を見はりにつけてるわけでもない。それに背骨の若僧と歌の小娘の治療はもう終わってるんだが…いいね、決して逃げ出すんじゃないよ!!」
そしてドルトンを案じ部屋に残っていた島民達を力仕事があるからと全員連れていきくれは部屋を後にする。コート着てウタとサンジ連れて今のうちに逃げ出せ…そうとしか聞こえなかったナミとビビは言われた通りに動いていく。
一方外ではウタの治療を終えてからルフィ達に見つかるまいと城の正門上にいたチョッパーが満月を眺め物思いに耽っていた。
「毒胞子の治療…上手くいって良かった……!!エッエッエ!!少しは万能薬に近づけたかな」
「おーーいトナカイ〜〜〜っ!!一緒に海賊やろーーーっ!!!」
「!!……あいつまだおれを探してる………」
未だにチョッパーを仲間にしようと諦めていなかったルフィは大声で姿の見えぬトナカイを勧誘し続けていた。ゾロとウソップにもう諦めろと言われても連れていきたいからと声を張り上げ続ける。
そんな姿に自分も行きたくないわけじゃないが行けないんだ!と確固たる意志を持ってチョッパーはルフィ達の前に姿を見せる。
「あ、トナカイ!!!おいお前いっしょに海賊やろう!!」
「…無理だよ…」
「無理じゃねェさっ!!!楽しいのにっ!!!」
「意味わかんねェから」
「おれは…お前達に…感謝してるんだ!!」
「………チョッパー………」
「あれ?トナカイ君だ」
正門前にはサンジの両足を掴んで引っ張って来たナミとビビ、遅れて出てきたウタがゾロとウソップのそばに寄っていく。一羽を除きメリー号に乗る船員が全員集合したところでチョッパーは啖呵を切る。
「だっておれは………トナカイだ!!!角だって…蹄だってあるし……!!青っ鼻だし…………!!!そりゃ…海賊にはなりたいけどさ…!!おれは"人間"の仲間でもないんだぞ!!バケモノだし…!!!おれなんかお前らの仲間にはなれねェよ!!!…だから…お礼を言いにきたんだ!!!誘ってくれてありがとう…おれはここに残るけど、いつかまたさ…気が向いたらここへ」
あいつの心を癒せるか、かつて一人しか出来なかったとくれはが語ったチョッパーの傾きかけていた心を単純明快な言葉で引き込んだルフィ。あまりにも強引な勧誘に他の面々は呆れながらもルフィらしいと笑みを浮かべる。
「お"お"!!!!」
ルフィの勧誘に男泣きで返したチョッパーは出立する準備とくれはへ海へ出る事を話しに城へ戻る。
チョッパーが来るのを一行は雪だるまや雪玉を作って遊んだりしながら待ち続ける。自分達もくれはやドルトンに別れの挨拶をしようとルフィは言うがチョッパーやくれはを思いやり、自分達はさっさとチョッパーを連れて出ていこうとロープウェイの準備を始めていく。
そして城の中、病室では患者の数が足りなく困った奴らだとボヤいていたくれはの元へ息を切らせながらチョッパーが話があるんだと口を開く。
「チョッパー、お前どこへ行ってたんだい。下へ降りてお前も大砲運びを手伝いな!!」
「聞いてよドクトリーヌ!!…おれ海賊になるんだ!!あいつらと一緒に行くよ!!!」
「…………何だって…?」
「海へ出るんだよ!!船医としてあいつらの仲間になって…世界を旅するんだ!!」
「バカを言うんじゃないよっ!!!!」
凄まじい剣幕でくれははチョッパーの船出を拒否する。海賊なんてロクなもんじゃない、あっという間に屍になるのがオチさねと。
だがチョッパーも譲る姿勢を見せず、くれはは声を荒らげる。
「ナマイキ言うんじゃないよ!!!たかだかトナカイが海へ出るなんて話聞いたことないね!!!」
「そうだよトナカイ!!!でも!!!
男だ!!!!」
チョッパーの意志の硬さを見たくれははなら己を踏み倒してから出て行けと包丁を何本も投げ飛ばしてチョッパーを追い立てる。それから逃れようとチョッパーは大砲を城外へ運びだそうとする島民らに紛れ姿をくらませるとそりを引き、正門から出ていく。
「おい来たぞあいつが!?」
「え!!?どういうこと!!?」
「追われてるっ!!!」
「おーいロープウェイ出す用意が…」
「みんなそりに乗って!!!山を下りるぞォ!!!」
「待ちなァ!!!」
『んな、何イ〜〜〜〜〜っ!!?』
包丁を投げまくるくれはの迫力に気圧され、チョッパーの指示通り急いでそりに乗り込んだ一行は魔女のそりと呼ばれる現象の当事者となりながら山を下り、メリー号へと向かっていく。
「うはーーーっ!!!いい〜〜〜〜気持ちだったァ!!」
「ねェもう一回!!もう一回だけやろ!?」
「バカッ!!出航するのよもう!!」
「し!!し…死ぬかと思った…」
「っぬお!!!ん!?ここはどこだ!!?」
「あ、サンジさん気がついた!?」
そりの上でやいのやいのと騒ぐルフィ達とは対照的にチョッパーは名付け親であるヒルルクと彼の行っていた研究を静かに思い返していた。30年間続けてきた研究は完成してたはず、それともあれも自分を悲しませまいとついたウソだったのか、ドクロの旗を掲げた男に不可能はないともう一度言ってよと。
そして、城が立つ山の頂上では預かっていたペットが一匹貰われていった湿っぽいのはキライな魔女の号令で整列された大砲からある塵が込められた砲弾が打ち上げられていく。激しい砲撃音に島民はもちろんルフィ達もメリー号へと向かう足を止め振り返る。
「ウオオオオオオオオオオオ、ウオオオオオオオオオオオ」
「すげェ………」
「……ああ」
「奇麗……」
「ウウウウ…ウオオオオオオオオオ、ウオオオオオオオオ!!!」
〔これがおれの30年をかけて出した答えさ!!!いいか…!!この赤い塵はな、ただの塵じゃねェ!!───コイツは大気中で白い雪に付着して…そりゃあもう鮮やかなピンク色の雪を降らせるのさ!!!〕
「ヒッヒッヒッヒッ…バカの考えることは理解できないよ…さァ…」
後に────語り継がれるこの"ヒルルクの桜"はまだ名も無きこの国の自由を告げる声となって夜を舞う。ちょうどこの土地でおかしな国旗をかかげる国が誕生するのはもう少し後の話だ。
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チョッパーを連れ出航したルフィ達は雪の降る満月の夜に咲いた桜を肴に宴を開いていた。飲めや食えや歌えやの大騒ぎ。
いつまでもボーッとしてるチョッパーを誘い込み、こんな時に飲まねェのはウソだと酒をあおり宴会芸が披露されていた。
「ちょっとあんたら!!少しはこっちの心配もしたらどうなの?」
「なんだ、生きてたからいいじゃねェか」
「カルー、あなたどうして川で凍ってたりしたの!!?」
「クエー…」
メリー号に到着し出航準備を始めようと思った矢先、川で凍って浮かんでいたカルーを見つけ息を吹き返すまでビビは気が気でなかったのだ。何かを訴えかけるカルーをドジな奴だと笑うゾロだったが、そこへチョッパーがカルーの訴えを翻訳する。
「ゾロって奴が川で泳いでていなくなったから大変だと思って川へ飛び込んだら凍っちゃったって」
「あんたのせいじゃないのよ!!」
ナミがゾロへキツいゲンコツを一発お見舞いした後、動物と話せる事実が判明したチョッパーへ医術に加えてそんな能力もあるのかとビビとナミが関心する。
褒められて感情を隠せずニコニコパパンスイッ!と喜びを露わにするチョッパーを嬉しそうだなーと眺めるルフィ達。だがそこへサンジから医術とは何なのかと問われたナミがチョッパーの事を指すとルフィは驚愕する。
「何ィ!?チョッパーお前医者なのか!?」
「あんた達チョッパーを一体何者のつもりで勧誘してたの?」
「七段変形面白トナカイ」
「かわいいマスコット」
「非常食」
あんまりな勧誘理由に頭を抱えたナミはそもそも…と付け足していく。
「いいあんた達?毒にやられて倒れたウタを治療したのはチョッパーなのよ?ドクトリーヌが言ってたわ」
『何ィ!!?』
「おれてっきりあのおっかねェ医者のばあさんが治してくれたのかと…」
「私も………へェ…そうだったんだ……!!ありがとうチョッパー!!!あんたは私の命の恩人だよっ!!」
「おれからも、ウタを助けてくれてどうもありがとう!!あらためてこの船の船医としてよろしくなチョッパー!!!にししっ!!」
「………!!!………!!!………!!!そ…そんな恩人だなんて言われても嬉しく………あ!!そうだ!!!おれ慌てて飛び出して来たから医療道具忘れてきたっ!!」
ウタに抱きつかれ恩人とまで言われまた喜びが溢れそうになったところでルフィが言った船医という言葉にハッとしたチョッパーは医療道具を持ってくるのを忘れた事に気づく。
そこへナミがそりに乗ってたというバッグを持ち出しこれは何かと聞くと、医療道具が詰められた自分のバッグがある事にチョッパーは驚く。どうやらくれははチョッパーが海に出る事を見透かしており、追い立てる事を前提としてた為に事前に旅の支度を済ませておいたようなのだ。
くれはの想いやりにじーんと感動して座り込むチョッパーとそれを眺めるナミ。だがそんな感傷的な雰囲気が漂う空間に場違いな盛り上がりが割って入ってくる。
「アッハッハッハッハッハッハッういヒョッハーおええおやうあ!!(おいチョッパーおめえもやるか!!)」
「うっさいお前ら!!!すな!!!」
ルフィとウソップのどじょうすくいに誘われ見よう見まねで割り箸で顔を変形させるチョッパーにツッコミを入れるナミ。
ようやくチョッパーも宴会の輪に入ってきたところで宴会隊長ウソップが見晴らしのいい場所に立ち、笛を吹き鳴らす。
「よーーしてめェらみんな注目ーーっ!!!えーここでおれ達の新しい仲間」
「カルーあなた飲みすぎよ!!」
「クエーッ!!」
「オイクソコック、もっとつまみ持って来い」
「おォ!!?てめェ今何つった!?おれをアゴで使おうとはいい度胸だ」
「"船医"トニートニー・チョッパーの乗船を祝し」
「サンジ、恐竜の肉もうねェのか!!?いっぱい積んだろ!?」
「パンケーキが足りないよ!!ホイップましましオレンジソースかけ、ちょうだいっ!!」
ウソップの乾杯の挨拶だけが響き渡り、飲みまくりぐでっとするカルーを心配するビビ、つまみを要求するゾロにブチ切れるサンジ、好物が足りねェと騒ぎ立てるルフィとウタ。
そんな光景を一緒に眺めていたナミへチョッパーは目尻に涙を浮かべながら声を漏らしていく。
「おれさ………」
「?」
「あーーあらためて乾杯をしたいと思う!!」
「こんなに楽しいの初めてだ!!」
挨拶も終盤にさしかかり、より一層声を張り上げ出したウソップに合わせるようにジョッキを持った一行。それを一瞥する事もなくウソップはここ一番の声量で乾杯の挨拶を締めくくる。
「新しい仲間に!!!乾杯だァア!!!!」
『カンパーイ!!!』
船は今 ───最高速度で ───砂の王国アラバスタを目指している。