ドラムを鳴らしたいSS
16:55「麦わら屋!!」
『ロー』の声が鋭く響く。挑発に乗り、ドフラミンゴに飛びかかる直前のルフィが動きを止めた。
ドフラミンゴとの再戦。境界をこえ助けに来てくれた、別の世界のルフィとロー。四皇をも討つ彼らの力は強大だったが、狡猾さではドフラミンゴに及ばない。
仲間に似た玩具を目の前ですり潰されたルフィは、街を守る役目から一瞬気を逸らされた。
その焦りで罠を踏んでしまう前に、『ロー』はルフィを引き戻す。
「……奴のペースに乗せられるな」
「!」
「行け、麦わら屋」
懐かしい台詞だった。驚くルフィにニヤリと笑ってみせ、外の瓦礫とルフィを入れ替える。
『ロー』は驚くほど凪いだ気持ちでドフラミンゴに向き直った。敗れ、苛まれ、支配され。恐怖そのものだった男を前にしても、もう膝をつくことはない。
傷は癒えた。愛もハートも、再び灯った。
今度は、必ず勝つ。
「ロー!!」
風を切る一閃。ドフラミンゴの背後に躍り出た、ドフラミンゴに勝った世界のローが呼びかける。
『これから勝つ世界のロー』は、自信をもって頷き返した。
シャツの下、鬼哭の破片のペンダントが燃えるように熱い。オペオペの力を集め、細身の刃を左手に生み出す。
建物が揺れた。階下からルフィとクルーたちの声が聞こえてくる。威勢のいい叫びがドンドンと胸に響いて、心臓の音が上がっていく。
失ってきた。ねじ伏せられてきた。
それでも、今。
今この瞬間、何だってできる気がしていた。
●2023/1/12 追記
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同じ小説を23-01-12 13:18:43にぷらいべったーで非公開投稿いたしました。
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