トング責め

トング責め


「~~♪」


 あかねは鼻歌を歌いながら上機嫌で何やらカチャカチャと準備をしている。今俺はあかねとは反対側の壁を見ているため何を準備しているか分からない。

 ぼーっと壁を見つめてこうなった経緯を思い出す。といってもあかねに珍しくお願いをされただけ。少しマンネリ気味だから嗜好を変えた営みをしたい、それだけだ。ただし今日は何があってもあかねを信用して身を任せてほしいという条件付きで。ついでにいいよと言われるまでは秘密らしい。

 ……なにか小道具を使うだけだよな? 普段はそういうモノは使わないからあかねも考えてくれていたんだよな?


「アクアくんもういいよー」

「あぁ、わかっ……た……」


 許しの声に反応して振り向いたが、興奮して少し熱くなっていた股間が勃つ前にその膨張は止まってしまった。

 際どい黒の下着を身に着け、満面の笑みを見せるあかねの右手に握られたのは銀色の光を放つ細長い────トング。左手に握られたのは水色のシリコン製らしい────トング。そしてその近くに更に控える十本近くある多種多様なトング、営みをする目前にこれを見て茫然としない人間がいたら連れてきてほしい。


「一応、聞いてもいいか?」

「トングと私は一心同体だからどんな道具よりも上手く使えてアクアくんを満足させられるかなって。あ、全部新品だから安心して?」


 顔を赤く染めながらあかねが照れたように言う。おい今のどこに照れる要素があった。それに安心できる要素もなかったぞ。

 躊躇したいが、生憎約束した上に何故かいまのあかねから逃げられる気はしない。きっとトングを持っているからだ。観念してあかねに任せよう。


「それじゃあ、早速……」

 

 背中に慣れ親しんだ柔らかさを感じる。あかねの息遣いが耳に直接伝わる。たったそれだけで俺の股間はまた熱を帯びる。今度は完全に勃起している。

 あかねの左手が伸びてトングの外面が袋に触れる。ゾクッと背筋にそれが伝わり、更に股間が反り立つ。


「ふふっ、アクアくんかわいい」


 顔は見えない、けれど声色は確実に愉しんでいる。でもあかねの顔を見る余裕はない。視線の先にあるトングをどう使うのか、それに注視してしまう。

 ────視界の端で銀色に光る棒が動いたのを捉えた。


「ぅぁッ……!?」


 その瞬間、意識外の刺激が走る。冷たい刺激が快感に変換されて思わず声が出る。少し仰け反るが背中側にいるあかねが俺を快感から逃がしてくれない。今まで知らなかった感覚が脳に伝わる。

「やっぱりこれにして正解だったね」


 答え合わせに満足しながらもあかねは両手を動かすのを止めない。本当に一心同体という言葉に嘘偽りは無いのだろう。あかねが手を動かし、巧みにトングで俺の股間と乳首を弄り、小刻みに快感が迸る。


「う……っ……あっ……ふぅ……ふぅ……」

「アクアくんどう? 気持ちいい?」

「あ、あぁ……」

「よかったぁ……それじゃもーっと気もちよくなろうね?」


 あかねが右手のトングを持ち替える。黒いトングが股間へと伸びる。あかねは、二本のトングで責めて俺に射精をさせる気でいるというのが嫌でも伝わってきた。

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