トレーニングの成果

トレーニングの成果



「トレーナーさん、緊張してる?フフッ 僕にドキドキしてくれてるんだ、嬉しい……!」


 私は担当の顔にとても弱いだけの、どこにでもいるトレーナー(♀)。最近担当が読み始めた恋愛ハウツー本に書かれていたテクニックの練習相手になってるんだけど、演技にしてはやけに力が入ってる気がして心臓が全然休まらない。


「もう、逃げられないですね。大人しく、僕に体を委ねてください」


 綺麗な顔に見惚れているうちに、シュヴァルの顔が少しずつ近づいてくる。このまま続けられたらシュヴァルの大事なファーストキスを私が取っちゃいそうな気がしたから慌てて止めに入る。


「だ、ダメだよシュヴァル!それ以上先のことは好きな人とするべきだから!!」

「それなら大丈夫だよ。僕の好きな人はトレーナーさんだから」


 思わず乙女心を全開にしてキャーっと叫びたくなるようなことを言ってくれる。それでも私はトレーナーで彼女は担当、勘違いは許されない


「そ、そういうのは本番に取っておくべきだから……ね!ね!?」

「僕は本気だよ、トレーナーさん。その証拠に、ほら」

「ひゃう!?」


 私の言葉を聞いたシュヴァルは私の腕を引きながら腰に腕輪回し、胸に顔が埋まるような形で抱きしめる。柔らかい体の奥から、私と同じくらいのリズムで鼓動を刻む心臓の音が聞こえてくる。ここまでされてようやく、シュヴァルも私とおんなじ気持ちだったんだと理解した。


「トレーナーさんと一緒にいるだけで、ずっとドキドキしてたんだ。僕はもうこの気持ちに嘘をつきたくない、トレーナーさん…受け取ってくれる?」


 シュヴァルの過剰供給でいっぱいいっぱいな私は、その言葉に無言で頷くことしかできなかった。顎に手を添えられ強引に、だけどどこか丁寧に上を向かされる。2人の距離が0になるまで、後数センチ……

Report Page