トリオンとワイルド猟師
猟師には生まれついての特異体質があった
それはどんな罠も寄せ付けない強靭な肉体であり、それを活用して人に仇をなす蟲惑魔を狩ることを生業としていた
猟師は蟲惑魔討伐の依頼をうけて辺境の集落へと足を運んだ
「それで発見した蟲惑魔の特徴は?」
「ええ、顎のような角が生えた短い銀髪の女の子よ。すぐ近くに大きな昆虫もいたからあれは蟲惑魔で間違いないわ」
依頼者である老婆が語る蟲惑魔の特徴は猟師の知るものであった
「それはトリオンですね。他の蟲惑魔同様人を模した疑似餌で獲物をおびき寄せアリジゴクのような本体が待ち構えています。しかし妙ですね蟲惑魔は捕食時を除き人前で姿を見せることはないはずですが」
「そうなの?あの子普通に近づいてきてお友達がどうとか言い始めたわ。怖くなってすぐに逃げ出したのだけど」
トリオンの妙な行動は気になるところだが仕事が優先と猟師は考えそれ以上は追及しなかった
「トリオンは地面に穴を掘りそこで生活をしています。穴を見たら絶対に近づかないように気をつけてください。蟲惑魔がしかける罠はどれも強力で一度捕まると逃げられない可能性が高いですからね」
そうして猟師は森の奥へ足を踏み入れると早速トリオンが住んでいるであろう巣を発見する
「こんな目立つ場所にあるとは珍しい。まだ生まれて間もない個体かもしれない」
猟師は周囲を警戒しつつトリオンと戦うための準備をはじめる
猟師は特異体質によって蟲惑魔が仕掛ける罠の影響を受けないがトリオンは直接の戦闘力も高く、入念な準備をしなければ勝ち目はないと考えたからだ
「サイクロン装置起動!発射!」
猟師の掛け声と共に装置から風が吹きトリオンの巣穴がある地面へと向けれる
「キャー!!」
地面からトリオンの悲鳴が聞こえた
風に殺傷能力はなくあくまでトリオンを巣穴から遠ざけるものであるため猟師は得物であるブーメランを構えてトリオンが現れるのを待つ
「なにっ!?台風?ってあれ人間?」
巣穴から出てきたトリオンは不思議そうに猟師を見つめている
「悪いが人間に仇をなす蟲惑魔を生かしておくことはできない」
「こわくま?なにそれ?わたしは人間だよ」
トリオンは本当にわからないといった様子であり自身が蟲惑魔である自覚がないようだった
「ではその巨大なアリジゴクはなんだというのだ?」
「ジゴちゃんのこと?この子はわたしのお友達だよ」
勿論そのアリジゴクはトリオンの本体であるが彼女はそれを別の存在と認識しているようだ
猟師はトリオンには何か事情があると考え話を聞くことにした
トリオンの話によると彼女は蟲惑魔の森から遠く離れた場所で生まれため自身が蟲惑魔であるという自覚はなく人の代わりに昆虫などを食べてこれまで人と関わることなく各地を転々と渡り歩いてきたそうだ
本体であるアリジゴクを友達と認識しているのは孤独であった寂しさを紛らわすために無意識の行動であった
「それでねここに来てようやく人と会えたのでもみんな怖がってわたしから逃げて…」
蟲惑魔は捕食者である本体を晒して近づけば恐怖され恐れられる存在だ
「猟師さんはわたしを殺すの?こわくまは人間の敵だから殺すんだよね?」
猟師が自身は蟲惑魔であることを告げられるトリオンの目からは涙が流しそう語った
「……いや、私はお前を討伐する依頼を受けたがそれは生活のためだ。二度とこの集落に近づかないと約束できるなら、君を討伐したと虚偽の報告をする。戦わずに報酬を得られるならそれに越したことはないからな」
猟師の提案にトリオンは大きくうなずいた
「ありがとう猟師さん。もうここには来ないよ」
こうして猟師はトリオンと別れて集落に戻ると依頼主に嘘の報告をして無事に報酬を受け取ったのだった
猟師は集落から遠く離れた地でトリオンの今後について話し合うことにした
「これからどうする?蟲惑魔の森に行くのか?」
「それってこれから人間を食べて生きていくってことだよね?嫌だよそんなの」
「蟲惑魔は人を食べる存在だ。そして私は蟲惑魔と戦うことを生業にしている。どちらかが悪というものではない。みな生きるために他者の命を奪っているに過ぎない」
猟師はこれまでの道中でトリオンの食料事情がかなり厳しいことを知った
彼女は人の代わりに昆虫(アリジゴク以外)を捕食していたが飢えを満たすほどの量を集めるにはかなり難儀している様子だった
「じゃあわたしが人間を食べないって約束すれば猟師さんはお友達になってくれる?」
「私と君は今日出会ったばかりだろう。出会ってすぐ友人になれるほど私の口は軽くはない」
「そっかぁ残念。でもいつか猟師さんのお友達にしてね」
それからトリオンと猟師の交流がはじまった
トリオンは人里離れた場所で静かに暮らし、猟師は仕事の合間に彼女のもとを訪れて会話を楽しんだ
猟師が土産として持ちこんだ人間の世界の物品はトリオンの好奇心をおおいに満たした
「わたしねずっとひとりぼっちだったけど今はすごく楽しいの。だって毎日猟師さんのことを考えると胸があったかくなるんだよ」
「実は私はもう猟師はではないのだ」
猟師は自身がトリオンに情が移っていることを自覚したため蟲惑魔討伐は廃業し、組織に所属して町の治安を守ることを生業としていると話した
「猟師さんが猟師さんじゃない?じゃあなんて呼べばいいの?」
「組織の仲間たちは私をワイルドと呼んでいる」
「わかった。改めてよろしくねワイルドさん」
その後もトリオンとワイルドの交流は続いたがある時事件は起きた
「ごめん…なさい…ひぐっ…ごめんなさい」
トリオンは目尻に涙を浮かべながら何度も謝罪の言葉を口にする
空腹に耐えかねた彼女はワイルドを襲ってしまったのだ、幸いなことに大きな怪我はないが危うく命を落としてもおかしくない状況であった
「ぐすっ…やっぱり蟲惑魔と人間はお友達にはなれないのかな……」
「……」
ワイルドは沈黙したまま考え込むとやがて意を決したようにトリオンへ語りかける
「私はようやく覚悟を決めた。君とは友達にはなれない」
そういうとワイルドはトリオンに指輪を見せる、トリオンはワイルドの土産から得た知識でその意味は理解していた
「ダメだよ。わたしはワイルドさんを食べようとしたのに」
「それでも構わない。蟲惑魔が人を食べるのは自然の摂理だとしても私は君と歩みたいと思った。共に生きていきたいと思った」
ワイルドは自嘲気味に笑う
蟲惑魔に騙され捕食される愚かものたちと同じ思考になるとは当時の自分であれば想像だにできなかっただろう
「ありがとう……」
トリオンは涙を拭い微笑むと、指輪を受け取らずに自らの指へ嵌める
「わたしもワイルドさんが好き。ずっと一緒にいたい」
その夜
「ねえ…指輪をくれたってことは……していいんだよね」
トリオンは不意にワイルド寝台へと押し倒すとじゅるりと舌をなめずりながら不敵に笑う
ワイルドは改めて彼女が蟲惑魔であることを実感する
「わたしね、ずっとワイルドさんとはこうしたいって思ってたんだ」
そういってトリオンはワイルドの唇を貪るようにキスをする
「んっ……ちゅぱっ……れろぉ……ワイルドさんの唾液おいしいよ」
トリオンは自身の身体をワイルドに押しつけるようにして密着させていく
「ふふっ、ワイルドさんのここおっきくなってる」
ワイルドはトリオンと交流ははじめた当初土産として無修正のポルノ映像要求しており彼女はそれを教材として人間の知識を得ていた
「ワイルドさんのおちんちん苦しそう。今楽にしてあげるからね」
トリオンは興味津々といった様子でワイルドの逞しい肉棒をぺたぺたと触ったり匂いを嗅いだりする
「すごい……これが男の人の……」
「トリオン……」
「うん。わかってるよ」
トリオンがワイルドのズボンを脱がすといきり立った肉棒が姿を現す
「うわぁ……これがおっきくなったワイルドさんのおちんちん……すごい」
「わたしにまかせて」
トリオンはワイルドの肉棒を掴み上下に擦る
「うぅ……凄い……こんな……あっ」
ワイルドはトリオンから与えられる刺激に快感を覚える
それは一朝一夕のものではなかった、恐らくワイルドがいない間にポルノ映像を何度も見返し研究した結果だろう
「あはは。ワイルドさん可愛い声出すんだね」
「うっ…」
ワイルドは顔を真っ赤にするはじめての彼女にここまで翻弄されのは想像していなかった
「ビクビクしてる。そろそろ出そうなんだよね」
「くっ…もう出るっ」
「出してワイルドさんの精液いっぱいちょうだい」
ワイルドが勢いよく射精すると、トリオンは本体であるアリジゴクに付着した精液を与える
「こっちはあくまで疑似餌だからさ、ちょっと気持ち悪いよね」
「気にしてない。君は蟲惑魔だ。すべてを人間の尺度で考える必要はない。私は君のすべてを愛している」
その言葉にトリオンの表情はパッと明るくなる
「うれしいっ大好きだよワイルドさん。じゃあこっちでもしようか」
トリオンは秘部を見せつける
それは本来蟲惑魔には存在しない器官であるがポルノ映像で見たものを参考にそれらしきものを作り上げた
「射すときは本体のほうにしてね。じゃないと食べにくいから」
「わかった」
「いくよ」
トリオンは秘部をワイルドの肉棒に押し当てるとゆっくりと挿入していく
「ああ、入って来る。ワイルドさんのおちんちんでわたしの中一杯になってる」
トリオンが腰を動かすと膣内が収縮し、快楽を与えてくる
「ワイルドさんのすごく大きくて奥まで届いて気持いいです」
実際のところこれは疑似餌であるため性的な機能は有していないためそこで快楽は得られない
だがワイルドと深く繋っているという事実は彼女に幸福を与えた
「んぐっ…そろそろ出そうだ」
「ワイルドさんかけて!」
肉棒を引き抜くとワイルドはトリオンの本体であるアリジゴクにめがけて射精する
大量の精液が注がれていきトリオンの心は満ち足りていった
「はぁ……はぁ……んっ…ごくっ…ワイルドさんありがとう。赤ちゃんできるかな?」
蟲惑魔と人間が交わったという記録は存在しないため子供ができるかはわからないがトリオンはそうであることを願っていた
「ワイルドさんすごい…まだまだできるね」
「そうだな」
そういうとワイルドは本体であるアリジゴクに挿入しようとする
「まってワイルドさんそっちに挿れちゃだめだよ」
トリオンは慌てて静止させようとする
「どうしてだ?」
「だって、普通の人間はそんなことしないし…」
トリオンは人間は蟲惑魔の本体に性的興奮を抱くどころか嫌悪されていることはよくわかっていた
「君は人間の私が好きで、私は蟲惑魔の君が好き、そこになんの違いもないじゃないか」
「……!!ワイルドさんは変な人だよ…でも…嬉しい」
ワイルドは疑似餌の彼女にも本体の彼女にも深い愛情を注いだ
「ねえワイルドさん、わたしたちもう夫婦なんだから一緒に住みたいな。もちろんちゃんと正体も隠すから」
「それもいいかもしれないな」
「それにお仕事にも興味があるの。お金を稼げば昆虫を自分で買って食べられるわけだし」
数ヶ月後
「ギャハハーこの街は俺たちがいただくぜぇ」
悪党の声がこだまする街には火の手が上がり市民はパニックに陥る
「そんなことさせない!マスク・チェンジ・セカンド!」
トリオンは仮面を装着すると青いマントをなびかせる正義の使者となる
「いくよワイルドさん!街を守らないと」
ワイルドは明らかに自身より強くなった彼女を見て将来尻に敷かれることを覚悟をしながら今日も平和のために戦うのであった