トラ男、カントになる。

トラ男、カントになる。




黒髭海賊団との戦いから数日、おれ達ハートの海賊団は変わらず航海を続けていた。

しかし、その戦いの果てに残った謎の後遺症に、おれは今一人頭を抱えていた。


深夜のポーラータング号、船長室にて。一人溜息を吐きながら下腹部を撫でるおれこと、トラファルガー・D・ワーテル・ローが生まれ落ちて早26年。その間、片時も離れることなく存在していたはずのモノが、下半身から綺麗さっぱり姿を消していた。そしてその代わりと言わんばかりに、本来男という性においては有り得ない臓器が出来上がっていた。簡単に言えば、男性器が消えて女性器がそこにあった。

何故こんな状態になっているのか、最近の出来事で考えられるであろう予測はひとつ。それは先述した通り、黒髭海賊団との一戦によるものだ。そこでおれ達ハートの海賊団は「女になる病」とかいうふざけた病気に陥り、かく言うおれもその病に伝染した。それに関しては過剰な覇気によって抗体を作り、事なきを得た……はずだった。

自身の状態に気付いたのは戦いが終わり、船長室に戻って一息吐いた時だった。椅子に座った瞬間に何とも言えない違和感を覚える。ぽっかりと何かが空いたような、そんな感覚に思わず首を傾げた。そう言えば戦いの後にクルー達に何か異常がないかをスキャンで調べはしたが、自分は二の次であったことを思い出す。そうして自身にスキャンを施した結果、そこでようやくおれは自身の異常に気が付いたのだった。


「……過剰な覇気に、悪魔の身の能力は通じねェんじゃなかったのか……?」


おれの考えが甘かったのだろうか。しかし覇気によって作った抗体により、他のクルーは全員元に戻っている。このような異常事態に陥っているのはおれだけだ。恐る恐る、左手で自身の下肢にそろりと触れてみると、確かにそこにあるべきモノが無くなっていた。その後何度か覇気を出しては見たが結局その箇所が治ることは無く、必要以上に覇気を出したことによる疲労に襲われるだけに終わってしまった。椅子の背もたれに身を預けながら、どうすれば良いのかを考える。まず、こんなことを誰かに相談なんて出来るわけがない。ちんこが消えてまんこが出来たとか、死んだコラさんにだって言えねェよ。

誰かの助けが期待出来ないとなると、自分で解決するしかねェ。意を決して立ち上がり、ジーンズと下着を下ろすと、そこにはつるりとした丘がひとつ。おい待て、毛までどこに行った。これじゃ自分で処理しているド変態みてェじゃねェか。


「……ハァ……よし、やるか」


厚手のタオルを敷いたベッドに乗り上げ、枕やクッションを使い背中を固定させる。そして診察箇所がよく見えるように鏡を立て掛けた。念のため、医療用に使っている薄手のゴム手袋を両手に嵌めてから触診を開始する。幸か不幸か、陰毛が無くなったそこはとても診易くなっており、閉じられた大陰唇をゆっくりと開くと、そこには予想通り女性器があった。小陰唇は健康的なピンク色をしており、異常は見当たらない。いやこの現状自体が異常ではあるのだが。


「……膣口……尿道……陰か、くっ……!?」


ひとつひとつ鏡で確認しながら触診していく。すると最後に陰核に触れた途端にゾクッとした何かが腰に走った。初めての感覚に驚き、触れていた指先が離れてしまう。知覚神経が豊富な箇所とは医学的な知識として知ってはいたが、皮越しに触れただけでこの威力とは、女の身体とは恐ろしい。はっ、は、と浅くなった呼吸を整えながら、自身の性器が完全に女性のものになっていることを理解した。


「……くそ、どうする……」


理解したところで、どうしようもない。覇気を使っても治らないモノをどうしろと言うのか。そうは思っても、おれは医者だ。医学的観点で何か見つけ出すことは出来ないだろうか。そう思いながら、今度は膣口に注目する。指を這わせてみるが、入り口は狭く男であるおれの指を通そうとしない。多少濡れれば入りはするだろうが、都合良くローション等があるはずもなく。仕方なしにと、指をつつ、と上に滑らせていき、再び陰核に触れる。外的刺激によりゾワゾワと腰が震えたが、何とか無視して包皮ごと摘まんでみた。


「ん、んん……っ」


空いた手で口を抑えながら、くにくにと優しく揉んでみる。その度にびくっと跳ねる腰のせいでベッドのスプリングが揺れた。連鎖的に立て掛けていた鏡も揺れてしまい、観察箇所がブレるのが煩わしい。ぐ、っと腰に力を入れながらその行為を繰り返すと、次第にトロリと何かが垂れてくる。性的興奮により分泌されたその液体を中指に纏わせ、深呼吸をしてから膣口に挿入した。


「ぁ、ぐ……っん、んん……っ」


膣内はある程度滑ってはいたが当然狭く、侵入者を締め付け拒んでいた。負けじと少しずつ進めていくと、少し感覚の違う壁を見つける。成程、ここが恐らく一般的にGスポットと呼ばれる箇所だろう。丁度陰核の裏側に当たるところである。少しだけグ、っと押してみるが、何か変だなという程度の違和感しか感じない。もう少し内部が濡れてくれれば探りやすいだろうかと思い、分泌液を増やそうと試みる。中指でGスポットを押さえたまま、親指を使って陰核をグリッと潰してみた、その時だった。


「ぁ、んうっ!?♡」


ビリビリッ!と甘い痺れが腰から背中に沿って走り去っていく。何だ、今の感覚は。今まで感じたモノよりも強い刺激に目を見開いたまま固まってしまう。これが、女の快感?いや、でも、そんなの、


「ん、ふぅ……っ♡ぁ、んん……っ♡」


次第に存在を主張し始めた核を再度親指で刺激してみる。こりっ、と固さを見せ始めたソコは滑りのせいで何度も左右に逃げようとする。それがまた新たな感覚を生み出し、また腰が揺れ始める。荒くなっていく呼吸音を聞きながら何度も刺激していくと、段々と頭に靄がかかるかのように意識が溶け出していく。ぼんやりとしていくのに、ソコの感覚だけが研ぎ澄まされていくようで、気付けば口を抑えていた手はシーツを握り締めながら身体中に走る快楽を必死に耐えていた。


「は……っ♡ゃ、ゆび、とまら、な……ぁっ♡」


このままいけば、どうなるんだろう。女のオーガズムは男の感じるモノの10倍か、それ以上とまで言われている。どんな衝撃が来るのかわからない未知の恐怖が思考を過ぎった。しかし、このままイけば、おれの身体はどうなってしまうのだろうという知的好奇心がムクムクと湧いてくる。こわい、でも、きもちいい、そんなぐちゃぐちゃな感情により、気付けばGスポットをグリグリと刺激しながら陰核を何度も何度も潰し続けていた。


「ぁ、ゃだっ♡クるっ♡何か、キちゃ、ぁ、~~~~ッ♡♡♡」


グググ、っと競り上がる何かに身を委ねながら刺激を与え続けていた2箇所を一際強く押し潰すと、腰が今までで一番強く跳ね上がる。その衝撃は腰がシーツから浮き上がる程で、気付けば立てていた膝は震えてつま先立ちのようになっていた。まるでブリッジをしているかのような浮き方のまま、ビクンビクンと強く身体が跳ねる。どこか遠い所でぷしゃ、っと何かが吹き出すような音が聞こえた気がした。突然のことで息をすることを忘れてしまい、それを思い出したのは腰が再びシーツの上にどちゃりと着地した時だった。


「ぁ……はっ♡は、ぁ……っ?♡」


一瞬何が起こったかわからなくて、全身で呼吸を繰り返しながら何とか落ち着かせていく。多分、イった。あれが女のイき方で合っているのだろうか。だとしたら、なんて恐ろしいものなんだ。本気で何が起こったのか全くわからなかった。気付けば腰はじぃん、と甘い痺れに支配されていて、内股はガクガクと震え続けている。震える身体を頑張って起こしてみると、下に敷いていたタオルは水分を吸って濡れており、シーツにまで少し浸透しているようだった。


「……は?」


分泌液だけでここまで濡れることはないだろう。もしや、漏らしたのだろうか。そういえば何かが吹き出すような音が聞こえたような気がしたが、その時だろうか。絶頂後の気怠い思考で考えてはみたが、それ以上に疲労度が勝ってしまいまたベッドに倒れ込む。とりあえず、おれのちんこが消えてまんこになったことは確かで、更にクリとGスポットの2点責めでイくことが出来る。ということはわかった。うん、知りたくなかった。おれのちんこ本当にどこに行ったんだよ。返せよ。あとなんか滅茶苦茶出たが、これはもう明日以降調べよう。そうしよう。疲れ果てた思考回路はとにかく休みたいとおれに信号を出していた。うとうとと訪れる柔らかい眠気に抗うことなく、その日のおれは目を閉じたのだった。



かくして、おれの身体に起こった不可思議な状態異常を打開する為の壮絶な日々が始まるのであった。




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