デスピアフェリジット最終日

デスピアフェリジット最終日


「フェリジット、どうした?」

「えっ…?」

 目を開ける。

 自分の部屋。自分のベッド。

 そして、横にはこちらを心配そうに見つめるシュライグがいた。

「…………?

 あれ、なんだっけ………」

 なにか、とても怖い夢を見ていた。

 自分がなにをしていたのか、思い出せない。

 思い出しては、いけない気がする。

「悪夢でも見たのか」

「うん……、みたい」

 さっきまで服を着ていた筈なのに、自分は裸だ。

 そして、シュライグも。

 彼が覆い被さってくる。

「大丈夫だ」

 おかしい。

「俺が、忘れさせてやる」

 なにかおかしい。

 私達、そういう関係じゃなかったよね?

「うん……」

 けれど、どうでもよかった。

 縋るように手を伸ばす。

「忘れさせて………。何も、考えたく、ない」

 思い出したくない。

 現実のことなんて。

 彼が入ってくる。


「あ 、あぅ、 ん……… っ 、、はぁっ……あ  ぁぁ…………」


 嫌だな。

 こんなはしたない声を出してるとこ、見られたくない。


「気持ちいいか?」

「は ァ、 あっ、あ………!  、、う、 ん きもちい………ッ♡」


 おかしい。

 いやおかしくない。

 気が付くな。


「ぷっ…………。ウププぷ………」

「シュ、らいグ…………?

 んあっ♡  ん 、くぅ……、、ふぁぅ♡あ"、  アぁ ぁ、…… 、♡♡」


 やめて。

 私、まだ

 夢を

「アハっ、ハッ、アヒャアハハハはははははははははははは!!!」





 

 そうして。

 彼女は、今度こそ目を覚ました。

「キモチい〜〜かァっ!! ホラぁ!きもちいイんダナァ!!」

「―――ぅあッ!?

 ああぁ 、あ グ  、んァ、ぅ ああァッッ!?」

「ア"ー出ル、イクっ! イケ!!」

「ア、ぁあ"   、ひ ぅ  ふぁ、ん ァ、ッ、ぅ"ああ〜〜〜〜〜………………ッッ」

 また化け物の子種を注がれる。

 悪夢の続き。

 否、これが彼女の現実だった。

 

 フェリジットを組み敷いていたのは蝙蝠のデスピアン。精を彼女のナカに大量に注いだ彼は、名残惜しそうに豊かな乳房にむしゃぶりついている。対するフェリジットは、未だしなやかな肢体を小刻みに震わせていた。

 絶頂の余韻。

 犯されながら、彼女は達したのだ。―――今はまだ、仮面を付けられていないというのに。


 4日目。

 シュライグは、きっと今日起きてくれる。

 そのか細い希望に縋りついて、フェリジットはただ汚辱に耐えていた。

 また覆い被さってくる影。

 その後ろには……一体何匹が行列を作っているのだろう。

「あっ、 ………、あぁ………………っ」

 秘所も、そして後ろも貫かれ、女は弱々しく鳴いた。

 痛みを訴える穴がどうなっているのか、彼女には想像もつかない。

 もはや限界だった。身体も心も疲弊しきっている。

「ぅう 、う ぐぅ、  ひぅっ ああぅ…………っ」

 怪物に挟まれ、光を失いつつある瞳をフェリジットはくったりと伏せた。

 グロテスクな2本のモノが内臓をぐちゃぐちゃに掻き回すのがわかる。後ろのソレはでこぼことおぞましく隆起し、膣のソレは蠕きながら彼女の子宮口周辺を舐め回すように犯していた。

「アぐっ!? ふ、ああ ぁ……………!」

 痛みに目を見開けば、目の前には腐った象の顔のようなデスピアンの顔。力んだ拍子に締め付けてしまい、そのまま吐精される。―――その先端は、彼女の子宮口を強く押し付けられていた。

 腹が熱く、重い。視界に靄がかかり、しゃんと座っていられない。用が済んだ化け物が彼女を手放すと、そのまま石の床に倒れ込んでしまう。ゴッ、という音とともに、彼女の意識は一瞬途切れた。

 が、間髪置かずにまた起こされる。頬を叩かれ、再び差し出される怒張。胸で挟め、ということらしい。

 フェリジットは機械的に応じた。横たわって奉仕しながら、シュライグの様子を伺う。


「………シュライグ………」

―――ごめんね、お腹すいたよね。

―――寝たきりだったけど、ちゃんと動けるよね?

―――ちゃんと起きて、逃げてね………。


 クスクスクス、と擽るような嗤い声が聞こえた。

 何体も何体も。彼女を取り囲むデスピアンが嗤っている。

 気味が悪いとも、もう思わない。フェリジットはただ無心に男根を擦る。

「オキるといいねェ」

 だから、しばらく彼らの言う内容が理解できなかった。

「……………。

 ………どういう…………こと?」

「ソイツ、起キたライイネって言ッたのさ」

「………シュライグは必ず起きる。起きて、あんた達なんか………」

「起きナイよ」

 胸に飽きたデスピアンが、フェリジットの前髪を掴んで思い切り引き上げた。もう一体が、半立ちになった彼女の下に緩慢に潜り込む。そして、そのまま叩きつけるように座らされた。後ろの穴に再び突き立てられ、フェリジットは苦しげに鳴く。

「ぅう…………、なに、言って…………」

「4日デ起きル。それ、ウソ」

「う………そ………っ」

 激しく打ち付けられ、目の前が一瞬スパークする。あうっ、と漏れた声はどこか遠くから聞こえた気がした。

 嘘。

 嘘でしょ?

「シュ…ライグ……」

 揺れる視界に、懸命に彼の姿を捉える。肉と肉がぶつかる音、厭らしい水の音が煩い。彼の寝息、心臓の音が聞こえない。

 近寄ってくる気配。

「い………や………、いや、いや、」

 手を伸ばす。彼女の下に滑りこんできたデスピアンに掴まれ、その指先は虚しく空を切った。

 そして、前の穴も。また好き放題蹂躙される。しかし彼女はもはや、そんなことには構っていられなかった。

 シュライグ。

 シュライグが―――私のせいで―――

「いやあ!いやああああああああぁぁっ!!!」

 今やロクに力の入らない手足を必死にバタつかせ、髪を振り乱してフェリジットは叫ぶ。拘束され、犯されながらでは動くこともままならない。それでも彼女はシュライグに近寄ろうと、叶わぬ足掻きを続けた。

 ニタニタと笑うデスピアンが、仮面をジリジリと彼女に近付けた。

「ヤダッ!ヤダあっ!!」

 身体はもう限界だ。心はもう砕け散っている。ぐしゃぐしゃに踏みにじられた彼女の魂は、ちっぽけな仮面によって止めを刺されようとしていた。

「やめてぇっ!!やめ………っ

 ア、あああぁぁぁ……………ッッ!!!」

 そうして、張り付いてくる仮面。

 フェリジットという存在を、ズタズタに引き裂く快感。

 崩壊する。

 崩壊する。

 絶叫する彼女を見てシゴくデスピアン。その向こうに彼がいるのに。

「たすけて………、たすけてっ、シュライグ、たすけてよおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 いつの間にか仰向けに組み伏せられたフェリジットは、腰を鷲掴みにされて凌辱される。

 内臓を掻き回され、犯されて感じるモノは、痛み、恥辱、そして絶望的な心地よさだった。

「い"やァッ 、ヤ 、ああ あ っ、あッ、 アッ ………… あああ"ぁ ぁ〜〜〜〜〜ッッッ」



























 檻の中。

 シュライグから少し離れた石の床に、フェリジットは全裸で横たわっていた。バンザイの姿勢で、股は大きく広げられ膝を立てている。最後の体位がそのまま残っているようだ。口からは細く唾液を溢し、ぼんやりと開いた瞳からはなんの感情も感じられない。

 秘部からは血と、精液が流れ出ていた。

 仮面は付けていない。

 一見すると。

 それは彼女の神経を犯し、彼女と一体となっていた。

 あれからも―――たくさん、彼女は"躾け"られた。ペットとしての作法。玩具としての歓びを。

 ひとつだけ、自由も貰った。

 横の人形で、好きに遊んでよい、という自由だった。

 おもちゃにしてよし、犯してよし、殺してよし。何をしてもいい。

 ソレはもう、決して動かない。起きることはないのだから、と。

 

 起きることはない。

 そのはずなのに。


 フェリジットは、隣のソレが目を開く気配を感じた。

 あれだけ待ち望んだ彼の目覚め。

 それを認めて感じた始めての感情は…、「怒り」、だった。


 ―――今更―――? 

 ―――あんなに叫んだのに。あんなに助けてって言ったのに。

 ―――私はもう、取り返しなんてつかない。壊れて、元には、戻らないのに。


 そう、驚きはない。

 肉体も魂も変貌させられても。虚無の顔の下に怒りと絶望が渦巻いていても。彼女はなおシュライグを信じていたから。

 シュライグが目を覚ますことを。


 けれど、彼女自身は…手遅れだった。

 少なくとも、自分ではそう思っていた。


 ―――■してやる。

 ―――■して、■し尽くして…私とおなじにしてやる。

 ―――そうだ、それで……。

 ―――戦いなんかわすれて、ずっといっしょにいましょう。

 ―――いいわよね?私、がんばったんだから

 ―――これからはもう、キモチイイことだけして、ずっと、ずっと、ずっと、いっしょに…………。



 かけられる、彼の上着。

 その温もりを感じて、ほんの少しの迷いを覚えたことに、彼女が気づくことはなかった。

Report Page