デスピアフェリジットビフォー1日目

デスピアフェリジットビフォー1日目


「……どうして、私を見捨てなかったの」

 フェリジットの問に答える者はいない。

 その空間にはフェリジットと、目を固く閉じたシュライグしかいなかった。

 あのとき。ヘマをしたフェリジットは敵勢力に捕らえられた。その場で舌を噛み切るべきだったのだ。助けに来てくれたシュライグを目にして、どうしてもそれができなかった。

 その結果が、これだ。

 

 鉄格子が開く。入ってきたのは異形のデスピアン。玉に乗ったピエロ――その玉と下半身だけのような姿のもの。異様に背が低く、ずんぐりむっくりとした人型のもの。そして上位格のものだろうか、4本の腕――その内の二対は鋭い爪を生やしていた――を持つ身長2メートル程の大柄な人型のもの。3体いる。応戦しようにも武器は取り上げられている。囲まれたら終わりだ。

「シュライグ」

 シュライグは眠ったまま。

「シュライグ!敵だよ!」

 やはり目覚めない。そんな予感はしていた。先程から、ずっとこの調子なのだ。恐らく、連中になにかされている。 

 ならばひとりでも、丸腰でも抗うまで。フェリジットは床に横たわるシュライグを庇うように立ち――彼らが身構えるよりも疾く肉薄し、鋭い蹴りを放った。

 背の低いものは思い切り蹴りつけられ、嫌な音を立てながら壁にぶち当たった。玉乗りはそれをヒラリと戯けながら躱してみせる。フェリジットは歯噛みした。巻き込んでやるつもりだったのに。次いで大柄なものの振りかぶりをしゃがみで避け、その懐に入った。玉なんてあるのかしらと冷静に考えながらその股を蹴りあげる。金的。

 ビクともしない。怯みもしない。仮にも獣人戦士の蹴りに。しまった、と思ったがもう遅かった。両腕を掴まれ、あっという間に頭上で束ねられる。

「く…」

 想像以上の怪力だ。脚をばたつかせるも相手に届かない。引き上げられ、その脚も宙に浮いた。

 シュライグを守らねば。噛み付いてやろうと懸垂の要領で体を持ち上げ――ガラ空きの腹をモロに殴られ、それは叶わなかった。二度。三度。蹴られまた殴られる。

 これ以上の抵抗は不可能だ。フェリジットは観念し、シュライグの命乞いをした。自分はどうなっても構わないと。言葉が通じることを祈って。

 しかし、言葉が届いた様子はない。その大男の鋭い爪が、フェリジットの装備するベルトをくい、と引っ掛けた。悪寒がする。それが本当だと告げるように、彼女の装備は紙切れのように引き裂かれた。

 ベルトだったものが落ち、胸当てだったものが散り、服もあっという間に剥がされた。

 胸を守っていた最後の一枚が焦らすようにゆっくりと、力づくで破り取られようとしている。ビッ、ビリ、と布地が悲鳴を上げ、ついにそれも取り払われた。

「……っ」

 ぶるん、と白い乳房が曝け出される。爪のない方の手に容赦なく揉みしだかれ、その豊満な柔肉はむにゅむにゅと形を変えた。双丘の頂点、桜色の肉蕾を転がされ、生理的な刺激に「……んっ、」と声が漏れてしまう。

 デスピアンの仮面が縦にガパリと開く。黒ずんだしわくちゃのカエルのような顔が覗き、大きく開かれた真っ赤な口の中ではイトミミズのような舌がチロチロと蠢いている。

「や…やめ…」

 チロ、頂をひと舐めした口は、静止も虚しくツンと勃った乳首を思い切り吸い込んだ。

「ひあっ、あ、あぁぁ…っ」

 片乳を揉みしだかれながら、もう片方の頂をちゅ、ぢゅうぅぅぅっと全てを食い尽くさんばかりに激しく吸われ、フェリジットは悶絶した。バタバタと藻掻く脚が虚しく空を切る。その脚に、スカートを覗き込んでいた小人が意図せず蹴っ飛ばされた。

 彼女の背後で静かに眠り続けるシュライグの周りには誰もいない。デスピアン共は自分に用があるようだ。貪られながらも安堵する。スカートと、そしてその下の布も破り取られるのを感じながら。

 それまでフェリジットのストリップショーを眺めているだけだった玉乗りが、代わって彼女の足元で玉から降りた。存在しない上半身を再び生やすかのように、生臭い臭いを発しながら腰から上がボコボコと蠢く。腰を沸騰させながら、おぞましい触手が次々と顔を出した。緊張と羞恥と恐怖で早くなる呼吸を必死で抑え、フェリジットはただその様を睨みつけることしかできない。

 粘液を纏った触手がフェリジットの白い肌を緩慢に這い上がってくる。生温かい軟体動物のようなそれはヌルヌル、にょろにょろと焦れったく蛇行しながら足首を、腿をなぞり、細い腰、胸の周囲に絡みついた。乳房を舐ることに飽きたのか、大男は乳から口を離し、レロォと脇を舐めあげてくる。それを引き継ぐように触手は乳を締め上げ、乳頭を擦り転がし、変形した先端でちゅっぽんちゅっぽん音を立てながらそれに吸い付いた。

「…………っ…はぁっ…、あっ …ん…っ」

 敏感な部分を執拗に責められ、フェリジットは耐えきれずに声をあげる。悍ましかった。デスピアン共だけではない。意志に反してビクンと跳ね、大切な筈の場所を濡らしてしまう自分の体が嫌でたまらなかった。

 触手が、その細さからは想像できないような力でフェリジットの脚を大きく開いた。大男も爪を仕舞い、彼女の細い腰を鷲掴みにする。彼女は恐怖した。骨盤を割らんばかりの怪力と、大男の股間に屹立する醜悪なモノ、その大きさに。

「ま、待って…!やめて、やめ……っ」

 無駄だとわかっていても、懇願するしかなかった。尋常ではない質量を持つ大男の生殖器がフェリジットの腟口に宛てがわれる。濡らされたとはいえ、解してもいないそこには到底入らない。ましてや、処女を守ってきた彼女の秘所には。

「……!っ 、ぅぐ、ぐあ、あ" 、がっ ……!」

 だが、容赦などされない。されるわけがない。どんなに過酷な境遇でも、大切に大切に守ってきた処女は呆気なく、残虐に散らされた。膜が破れ、肉が裂け、血が流れても一切構うことなく押し入られる。骨盤が軋む。灼けた鉄棒でも突っ込まれているのかと紛う程の激痛。

「――――っ、ギ 、ぐっ、ああ"ぁぁぁっっ!!」

 ギチギチギチ、と彼女を引き裂きながら侵入した怒張が最奥に到達した。

「う"ぁっ、あ、あぅっ、グッ、う……!」

 突かれ、引き抜かれる度に内臓がぐちゃぐちゃになっていくように錯覚する。否、錯覚ではないのだろう。実際彼女の女性器はズタズタになっている。幾度の戦闘を乗り越え、撃たれ、斬られ、重傷を負った経験さえあるフェリジットだったが、痛みだけでもそれ以上の苦痛を感じていた。

「う、ううっ、ア"ッ……ぐっっ、……………!?」

 身体を強張らせ、震えながら屈辱と苦痛に耐える彼女が尻をまさぐる触手の存在に気付いたのは、侵入を許してからだった。

「やっ…!?なにす……っ な゛ッ!そこだめッッ!それっ、や…ぁ"! 」

 ぬるりと入り込んだ細い触手は中で太さを増し、中からも腟を圧迫する。後ろの穴を擦られる度、ゾクンゾクンと背筋に響く悍ましさにフェリジットは藻掻いた。生殖器を内から外から激しく刺激され、しかし感じるのは苦痛ばかりだ。ほんの少し前までは純潔を保っていた身体。艷やかな乳房は赤黒い触手に弄ばれ、肛門も、そして閉じていた筈の秘部も滅茶苦茶に犯され、ガクガクと揺さぶられる、フェリジットのその身体は今や玩具と化していた。

「ひっ…いァ"っ… 、あぐっ…!?グッ… うう、うあっ 、ああ、ああぁぁぁっ!!」

 大男の腰が速さを増した。肉が肉を叩きつける音が、フェリジットの叫びをかき消す程の強さで響く。自分の身体、その胸から下が粉々に破壊されてしまいそうな恐怖に、ただ目を剥き震えた。生理的なものだけではない涙の粒が頬を伝う。大男は更に強く三度、突き殺さんばかりに彼女の最奥に雄を捩じ込み―――歓喜に震えながら子宮口に大量の精を放った。

「ぁ……、あ、あ…………」

 フェリジットは、化け物のペニスが、自分の中でドクンドクンと脈動するのをただ呆然と感じてとっていた。興味を失ったのか、大男はそのまま手を離す。硬さを失っても未だ規格外の質量を持つソレは、フェリジットの落下を以てズルンとようやく引き抜かれた。肉が裂かれたことによる出血、そして処女の証明だった血が、溢れた精液に混じって散る。彼女を支えることもなかった触手も、終わり終わりとばかりに玉乗りの腰へ引いていった。

 慄きながら仰向けに横たわるフェリジットの腹を、ペタリと触れるものがあった。小人が、上下に潰れた老人のような灰色の顔でにたぁと嗤う。粘液に塗れた彼女の身体を苦労しながらよじ登り、胸に到達すると歓喜の甲高い声をあげてそれにむしゃぶりついた。自らを貪るそれを無視して、フェリジットは滲む視界でシュライグを見る。

(よかった)

 聞かれていない。見られていない。シュライグに変化はない。彼だけが別の空間にいるのではないかと思われる程に、平穏な眠りについている。一見死んでいるかのような寝顔だったが、彼女の耳にはちゃんと鼓動と寝息が届いていた。

「よっかです」

 その耳に雑音が入る。だが貴重な情報だった。目の前、小人のデスピアンが乳房をちゅぱちゅぱと舐りながら彼女に語りかけている。

「彼には暗ジがかカってイます」

 フェリジットが得た情報はこうだ。シュライグには眠り続ける暗示がかけられていること、その効力は4日程続くこと、ペットとしてデスピアに飼われ続けるならば彼が危害を加えられることはなく、生活に最低限必要なものも与えられること。

(4日…)

 檻に、また誰かが入ってくる気配がする。目玉がなく、腹からは綿の代わりに乾燥した腸をはみ出させた熊の着ぐるみのようなもの。そいつに隠れてよく見えないが、後ろにももう一体いる。

(4日…耐えるんだ。シュライグをどうにかして逃さないと…)

 小人を乗せたまま、脚を掴まれて熊の元に引き寄せられる。未だ痛みを訴える秘所にまた押し付けられるモノを感じながら、フェリジットは固く瞳を閉じた。

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