テゾーロの考え
ウタがこの島に来てからすでに半年以上が経過している
その間に彼女のメンタルは確実に回復してきているが、私個人の考えとしてはまだ本当のことを-エレジアの真実を話すには早いと考えている
真実を知らせるには彼女はまだ幼い、いや、事の重大さを考えれば年齢など関係ないだろう
人によっては廃人化まったなしである
…正直なことを言えば、何度かこのまま嘘をつきとおした方が丸く収まるのではとも考えた
とは言えシャンクスたちとの約束は約束だし、嘘というものは得てして最悪のタイミングでバレるもの
特にその嘘が大きければ大きいほど、後から受けるダメージは大きくなる
彼女の才能に、未来に傷をつけかねないそういった危険性は、可能な限り排除したい
だが、真実を話すことが彼女を傷つけることもまた事実
このことに関してはゴードン殿や、ウタがステラやリーテの次に慕う我が娘バカラとも話しているが、やはり土地路の危険性を取るかという話に帰結する
そのため別角度からの視点として、実際に娘を持つ父母たるテゾーロとステラに話を聞きたくて、今日はここに訪れた
ウタを連れてきたのは、気分転換と島の案内も兼ねてだ
こういうタイミングでもないと、ほとんどのことを私の屋敷とその敷地内で終わらせられてしまう彼女が出歩く機会がないのでな
もちろん、リーテの相手をしてもらい話の場から遠ざけられるのも織り込み済みで、だ
「さて、二人はどう思う?」
「…おれはやっぱり、話すべきじゃないと思います」
口火を切ったのはテゾーロだった
神妙な面持ちで語るその姿は、舞台に立つときのように真剣そのものだ
「…ほぉ」
「もしもリーテが同じ立場だったら、おれはそう思います
もともと、裏社会の片隅で野垂れ死ぬだけだったおれがステラに出会って、あの子をこの手で抱ける今が奇跡みたいなもの
言ってみればあの子は、リーテはおれの希望、奇跡そのものなんです
だったら、その奇跡を傷つけるくらいなら、その未来を守るためなら、おれは一生恨まれ続けてもいい
そのためなら、おれの持つすべてで持って嘘をつき続ける、おれはそう考えます」
…なるほど、娘思いな、親馬鹿の考え方だ
無論こいつも私の懸念を理解していないわけではない
だが、それでも娘のために、たとえその娘に恨まれることになろうとも嘘をつき続ける
それが奴の覚悟という訳か
…なるほど、実に参考になる話だ