チムホワ
「凪ってブルーロックに来るまでは玲王とサッカーしてたんだよな?」
事の起こりは潔世一のそんな無邪気な問い掛けだった。
ネオエゴイストリーグ中、普段はそれぞれのチームで練習をしているが、顔を突き合わせる機会がないわけではない。合同トレーニングルームもそのひとつで、各棟に備え付けられているトレーニングルームより本格的な器具が置いてあるため、利用する選手はそれなりに多かった。
玲王と千切に連れられて、半ば面倒がりながらもやってきた凪を見付けて声をかけてきた潔と軽く雑談をしていた流れである。潔は馬狼に首根っこを掴まれてやってきたらしいが、とうの馬狼はひとりでルーティンをこなしているのが見える。
「そうだよ。一応部活ってテイだったけど、玲王、俺ばっかり居残りさせるんだもん…ほとんどふたりでやってた気分」
「なんだよ、俺結構楽しかったけどな」
「へえ、部活ねえ。凪に部活って似合わねーな」と千切が笑う。和やかな空気が流れていた。
「おい、潔何やってんだ」
しかしこちらにやってきたキング馬狼の登場により、会話が切り上げられそうな気配が漂う。このままなんとか、キツいトレーニングがないまま過ぎ去ってくれないか……凪はそう願い、話を途切れさせないように言葉を続けた。
「ああ、でも最近はうちの花がサッカー上手いことに気付いたから、そいつともやってる」
三人は一瞬動きを止め、何も言わず目を合わせた。どういう意味?全然わからない。何言ってんだこのクサオ。全員わからなかったので、答えは問うてみるしかない。
「聞き間違いか?サッカーの上手い花ってなんだ」
千切のやや遠慮した質問に返答したのは、意外にも凪の隣に立つ相棒だった。
「凪、今のじゃわかんねえだろ。いやこいつさ、花って言ってるけど花じゃなくて人間のことなんだ」
「あ?なんだ…」いや、花ってなんだ。潔のツッコミより前に、玲王の説明が続く。
「凪は家で話し相手として花屋で買った雪宮って奴を飼ってて、そいつがサッカー上手いらしいんだよ。いまはうちの使用人が面倒見てる」
なー凪?と玲王に言われ、説明の手間の省けた凪がラッキーとばかりに頷く。
いよいよ三人の間に疑問符だらけの空気が流れた。
To be continued…?