ダルヴァ 尸魂界に立つ
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主シーカー・ダルヴァは一仕事を終えて一服していた
黒崎一護一行を騙し旅禍として尸魂界に侵入 自身は碌に戦わずに自身を隻腕にした原因涅マユリへの復讐...まぁほとんど同胞である石田がやった後に嫌がらせをしたぐらいだがそれらを終えて...
「後は十二番隊隊舎に火事場泥棒して終いじゃな 我ながら結構よく出来たのうこの『ドングリコーヒー』」
滅茶苦茶呑気してたダルヴァ だがティー...コーヒータイム?を邪魔する影が迫っていた
「なぜ道のど真ん中で焚火をして一服しているのかな 旅禍の君は」
一番隊十四席である刈薙剣司 それが影の名である
この男どうやら滅却師であり死神であり恐らく完現術師でもある...黒崎一護と言い最近は陛下の目覚めが近いのかこういった類が妙に多い
だが滅却師だというのなら手厚くもてなそう...なにせ『同じ王を戴く者』なのだから
「ダルヴァよ...お前であれば聞かずともあの者の好みも分かるであろう」
【もちろんで御座います 陛下...風上より漂う匂いには紅茶や茶の匂いも含まれております じゃが最も強く在るのは"コーヒー"じゃと解ります】
「それでこそだダルヴァ...私は争いを好まん 平和の為のティータイムと行こう」
ダルヴァは其処ら辺で盗んできた容器にコーヒーを注ぎ手に持つ
「"コーヒー好き"のおぬしに『ドングリコーヒー』でも淹れてやろうと思うて...という理由では駄目かのう?」
だが相手は気に食わなかったのか無言で刀を構えた なんでじゃー?
「砂糖を入れる派じゃったか?それともミルクを入れる派か...熱いのは嫌いだったりするのかのう?」
「好みの問題じゃない 他の旅禍と比べて妙に気味が悪いな...君は」
剣司の持つ斬魄刀の刀身が液体となりながらも刀の形を保っている 構えも美しい...まるで薄紙を挟んだかのように一番隊副隊長の姿を思い起こさせるような姿!
まだコーヒーを渡していないのだが剣司の方は気が急いているのかこちらに有為転変を体現した刀身でダルヴァを斬ろうとする
この時ダルヴァが考えていたのはただ『斬られた際にコーヒーがこぼれないかどうか』だった
なにせダルヴァは静血装など関係なくただ純粋に硬くしぶとい それ以外はせいぜい頭が良いくらいしかない滅却師だがこの硬さがあるからこそ出来ることも多い
斬られても傷は無く ただ一滴も零さなかったコーヒーを再度勧めた
「共に語ろうではないか 圧倒的強者の元にある世界...それほどまでに刀を軽くする物事の無く それこそ腰を据えて儂たち二人が談笑し合えるような世界についてな」
「どうなっている...やはり何らかの能力もしくはトリック...!」
あと純粋に思った事でも言っておこう
「あとその整然とした剣術 おぬし全く似合っておらんな その不自由な足が原因とは思えんが...ああそうじゃ!性根から合っておらん__そんな感じじゃ」
言い終わるかどうかの所で型の崩れた力強さのみの刀が振るわれた そちらはダルヴァの肌に血を流させる
「そっちの方が合っておるぞ ほれ実際先ほど斬れなかった__
「もう黙っておけ...!」
なんかすごい怒っていた 何故_____!!
そこから更に全く反対の二方向から二人の乱入者が現れた
「剣司ちゃん大丈夫ーーーー!?」
一人は大声で叫びこちらに向かう もう一人は叫んではいない
叫んでいる方が春野数慈 叫んでいない方は綱彌代継家である
叫んでいる方の体はまさに強靭...その体から繰り出される攻撃は相当な威力だろう
もう一人は体が貧弱そうだ攻撃力に関してはそう特筆すべきでは──
「本当にそうか? 私の忠実なる部下 ダルヴァよ」
【......まさか いややはりあの者の目は儂よりもこの石畳と壁を見ている あの者が特に注視し思考しているのは『距離』 それも儂の防御能力を見た上での"必殺の間合い"】
「お前の体では特殊な物には耐えられない ならばお前のやるべきことは...」
【距離を取り...この戦いに適当な終止符を打つ算段を付ける事じゃ!】
コーヒーを地面に置き春野の方に走る
「ちょっとおとなしくしてなさいね!」
ダルヴァの足が踝よりも高く地面に埋もれるほどの威力の上段からの斬撃...だがダルヴァはそのまま駆け抜ける この程度なら少し血が出る程度で済む
「大丈夫!?モロに受けてたけど 主に頭!」
「すこぶる元気じゃ!計算勝負でもして遊ぶか?」
「...いや うーん計算はちょっとね」
呑気している二人に対して残り二人は険しい顔をしている
妙に相手を知っているような素振り 妙に友好的な態度 その上で実際相手の手を潰し的確な判断...相手取るとなると面倒が重なる
「お前はどう見る 剣司」
「何をしたのかは分かりませんが...妙に細かい所まで言い当ててます ですが継家さんから遠ざかったのを見るに継家さんの斬魄刀がカギになるかと」
だがダルヴァは最初から一貫して戦闘をする気は無い...どうせ火事場泥棒だけしたら帰るのだから面倒なことはしたくはない
懐から小さめのラジカセを出しサングラスを掛ける
「ラップバトル...って何!?ちょっと楽しそうじゃない!?」
「知らんし乗るな!敵の戯言だ!」
「...意味が分からん 言霊関係の能力なのか」
三者三様に返答するがもちろんそんなアホみたいなバトルになんて乗るわけが
「うっわ...ラップバトルする気ないのかの?お里とおぬしの所属する隊長副隊長らの器量の無さが窺えるのう 十番隊の副隊長や九番隊の副隊長はノリがよかったぞ?」
「「あ゛?」」
乗ってしまった 春野以外は怒りで春野は皆がやるならと参加していった
軽快な音楽が鳴り 四人の対決が今始まる!
「負けるのか ダルヴァよ__?」
「負けた...」
ダルヴァは惨敗した ボッコボコにディスられまくり完膚なきまでにラップで全員に負けた...今の所五人に挑み全てに敗北している事になる
「ディスりにおいて綱彌代家は最強」
「単純に音楽に乗って何かするのって楽しいわよね♪」
「…途中で正気に戻ってしまって恥ずかしくなったが どうにかなったな」
ダルヴァは三人が楽しそうに話している隙にラップバトルの途中で用意しておいた全身に大量の爆弾を巻く
「ラップバトルで負けた以上もはやこれまで...儂はもう
自爆するしかないのう!!
コーヒーの粉は焚火の近くにあるから三人で分けて飲んでもらえると嬉しいぞ!」
「早まっちゃ駄目よ!!」
そんな春野の説得の言葉も聞かずに起爆スイッチを押し大きな爆発が起こる...ダルヴァの体は大きく吹っ飛んでいく
「...いや たかが爆発であの男死ぬわけが無いな」
「つまりなんだ剣司 私たちは敵の策に乗って時間を稼がれ爆発で距離も稼がれたと?」
「そうですね」
冷静になった三人が静まり返り焚火の燻る音だけが響いた
「さっき言ってたドングリコーヒー飲んでから行く?あの子確実に速いし見つけられる気がしないわよ?」
「そうするか」
「それでいいんですか二人とも はぁ...どうやって報告したものか」
三人はマジでどうやって上司に報告したものかと頭を悩ませるのだった