ダル・セーニョ

ダル・セーニョ

4Q


「わァかってる!!!そういうことはしねェ、少し見せてくれ」

”水の都”ウォーターセブンを出て、数日、ゴーイング・メリー号の魂を引き継いだ“最高の船”、いつの日か…いや”夢の船”になるサウザンドサニー号に乗り、俺たちは順調に旅を続けていた。

「いやこえーよ!!」

「そうよ!!またロケットでもつける気!?!?!」

何やら作業をしていたはずのウソップと、みかんの世話をしていたはずのナミがとんでもない速度で飛んできた。

そう、二人にとって既にウタにロケットを取り付け、海に落下する思い返すだけで恐ろしい事件を起こしていたフランキーの信頼はゼロに等しかったのだった…のだが。

「ギィ…」

ウタは少しおびえたような様子にも見えるが、自分を信じてくれたのか、力を抜き、体を鋼鉄の体に預ける。

「……ありがとよ」

「「……」」

ウタが“いい”というなら口出しのしようもないと、ウソップとナミは見守ることにした。

「確か…この宝箱の中だよな?」

「えぇ…」

宝箱を開け、中のものを取り出す。いろいろな貝(ダイヤル)、5Tのハンマー…に見せかけた風船付きの棒など、ウソップの入れ知恵の賜物なのか、色々なものが入っていた。物を取り出し終わると底が見える。

「…?ねェじゃねぇか」

「あぁ…ソイツは二重底になってるんだ…」

いつの間にか帆柱の裏にいたウソップが疑問に答えてくれた。

「なるほどな…道具と擦れたりするのを防ぐためか…」

構造さえわかれば、話は早い。フランキーが器用に底板を外すとオルゴールが見えた。

宝箱から慎重にオルゴールを取り出し、キズ一つなく、綺麗に装飾されたカバーを取り外す。

「…!!!なんだァこれは…!!!」

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そもそも、ウタをかいぞ…“直そう“としたのは、たまたまウォーターセブンにいた時に子分の一人がオルゴールについて教えてくれたおかげで、ある程度の知識があったからである。

「おいオメェ…ソイツはなんだァ?」

「あぁ!!アニキこれは“オルゴール“ってもんで…ばあちゃんの形見なんです。」

「「…………」」

「……気になるんですか?」

沈黙を破ったのは子分だった。

「あ…あァ…聞いたこたァはあるが…あまり見かけねェモンだからよォ…。」

音を奏でる不思議な道具、オルゴール。短いものに限定されるが、曲を再生することができるらしい…のだが、そもそも製造が難しいため高価であり、風のうわさでしか聞いたことがないが、音を録音、再生できる音貝(トーンダイアル)なんてものもあるこの世界ではあまり見かけない物だった。

「じゃあ折角なんで…」

子分はそう言うと、ゼンマイを巻き、オルゴールの音を奏でながら説明をしてくれた。

「オルゴールにもいくつか種類があるんです。ピンを取り付けた金属の円筒を用いるシリンダータイプ、突起のついた円盤を用いるディスクタイプ、だけど実は原理は同じ…取り付けられたピンが長さの違う櫛状になっている金属板を押し上げ、はじくことで演奏を行う…って感じの機械仕掛けで楽曲を演奏する!!それがオルゴールなんです!!」

「へェ…そいつはすげェもんだな…!!大事にしろよ…!!!」

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そう、オルゴールはそういうもののはず…なのだが、カバーを開いた中身には確かにシリンダーや櫛の歯はあったのだが、肝心のシリンダーにピンがない。ないのである。これでは音を奏でることができない、できるはずがない。なんならゼンマイすらないと来た。

「…コイツはスーパー困っちまったなァ…」

ウタはそれを聞いて顔をうつむいていた。オルゴールを取り出されていて声を発することができないが、声なんて発さなくても感情が伝わるぐらいには。

「すまねェな…あんまり力になれなくてよォ」

ウタはそんなことはないと、布の手を振ってくれた。

「フランキーでも無理かァ…いつになったらあんたのオルゴール直せるかな…」

そう言いながらナミが優しくウタの頭をなでる。

「ん?オメェらも開けたことあんのか?」

「えぇ…私は開けたことないけどそこの柱の裏にいるウソップがね… 結果は同じだったけど…」

「あ…あぁ… おれは…昔、カヤの部屋で見たことがあったから…」

弱気な声でウソップが答えた。

「…そうか」

世界政府の旗を撃ち抜いたはずの勇敢な海の戦士の面影はそこにはなかった。

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スレ消費させてしまうのは申し訳ないので、この場を借ります。

まずはお読みいただきありがとうございました…!!

これは本来書く予定だった二本から分裂したものです。

回想の中に回想を入れるからこんなことになるんだ。

タイトルの”ダル・セーニョ”は音楽記号で、別の”セーニョ”という記号の箇所に戻って演奏する...といった意味らしいです。ウソップ、ナミが修理しようとした過去、フランキーがチャレンジするも結局、振り出しに戻ってしまう...といった流れからこのタイトルにしました。


 


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