ダイヤとピーマン体操

ダイヤとピーマン体操


〜♪

「ピーマン食べたらスーパーマン!っと…

MEMさーん、カメラと録音機材ここで良いですよね」

幼い時に聞いていた歌を口ずさみながらB小町のyoutube収録の準備を手伝う。

いつもの期間限定、苺プロのアルバイトだ。

色々細々とした仕事を頼まれて力仕事も多いが金払いは悪くない。 

拘束時間長いけど。

(長期休暇限定なんだよなー…おかげさまで)

「さっすがダイちゃん!分かってるねー

その位置が目立たないし、音の拾いも良いんだよ。」

「へー…何となく覚えていたので置きましたけど正解でしたか」

アイ姉さんの様に何処が映り良くてどの角度が良いか、とかは全く分からないが見ていたので何となくだが。

「うろ覚えでもベストポジション分かってくれている人がいると時間短縮になって楽なんだよねー

だからダイちゃんのアシストはベストもベスト、スーパーベストだよ!!」

「わーい!なんか頭悪い単語だけど褒められたぞー」

やんや、やんやとMEMさんとふざけ合いながら準備をしているとヤレヤレ顔で有馬先輩が『エリマキトカゲに学ぶ恋愛術』と書かれたよく分からない本を持ちながらやって来た。

先輩、妙な本好きですね。

学べましたか?エリマキトカゲから。

「あんた達、配信開始までさほど時間残って無いんだから早く準備終えなさい。ふざけるのはいつだって出来るんだから」

「はーい…流石はセンター。良い意味で意識高いっすね!」

「良い意味じゃなかったらはっ倒してるわ」

はっはっはーと笑いながらも瞳が笑っていなかった。なんか怖い。

「なら怒られないうちにさっさと終わらせますよ。先輩、集音マイクつけますね」

「ありがとう。あんたは思っている以上に手際も良いし、真面目よね。適度に敬意払うし…あんたみたいな後輩だらけなら良いのになー」

「また兄貴からはぞんざいに、姉貴からはいじられましたか?…よし、マイクOKです。MEMさんは…1人でつけられますね」

「慣れてるからねー」

定期的にしているB小町のyoutube配信。慣れているMEMさんが司会しながら話を回すトーク配信、ライブの宣伝、ゲーム実況、商品レビューetc…色々やっている。

今回はゲーム実況。ホラーゲームらしい。

有馬先輩のツッコミやリアクション、ルビーのとぼけた感想、MEMさんの可愛らしさが人気だ。

ちなみにルビーは同じく期間限定アルバイト(学校には内緒だよ!)のコハクに準備してもらっている。

「褒めても何も出ませんよ?ちょっと嬉しいので今度ライブ行ったら先輩のカラーでサイリウム振ります」

「あらありがとう。白いサイリウムぶんぶん振り回しなさい?」

「そりゃもう、大車輪で」

「必殺!風車!!…は違うか。

今ので思い出したんだけど、私に声優の話来てる、て言ったらビックリする?」

マジか。凄いな先輩。マルチに活躍するな。

けど、舞台の稽古もあったような…

「先輩、舞台の稽古もありましたよね?忙しくないっすか?」

「少し先の話だからまだまだ分からないわよ。ただどうする?、て副社長から言われてる。

その相談したくてアクアとルビーに話振ったら…あーもう!思い出してムカムカしてきた!」

プンスカ!て感じで先輩が怒ってチューと紙パックのミルミル飲んでる。

…ふむ。いつものパターンか。 

アクアが適度に舐めた発言してあしらったんだろう。先輩が自慢風に言って来たから。

ルビーは多分悪気なく舐めたこと言った感じか。

「ルビー、何言ったのー?」

「MEMちょ、私そんな酷いことは言ってないよ?

んー、私特に先輩怒らせるようなこと言ったっけなー…

確か、

『これ以上コッテリしたファン増やしてどうするんですか?』とは言った、かな。男の娘役だし」

「「「おー…コアな…」」」

「ダイヤにコハクにMEM。一つ、言っておくわ…コアなファン層は根強いの。たとえコッテリしてようが、ニッチなキャラだろうが『有馬かな』を刻めば私の唯一無二の価値になるのよ。ずっとついて来てくれるから!………多分。

小さい時、もっと色々やれば良かったなぁ…」ふふふ…

「わー…実感籠ってるぅ…」

ルビーがお労しいものを見るような目で言っている。

たまーにネガティヴ入るんだよなぁ…有馬先輩。

凄い人なんだから自信持てば良いのに。

「今から収録なのにどうします?この雰囲気…」

「ダイちゃん、かなちゃんのファンだよね?役目でしょ?」

「え”?!俺なの⁉︎」

「「うん」」

コハクとMEMさんからキラーパスを食らった。

キレの良いツッコミやリアクションが期待されている人なので、この人のメンタルの状況が動画のウケに左右される…筈。

メンタル弱いようで強い、強いようで弱い人だからなぁ…扱いが難しい。

アクアみたいに変に雑だと勝手に沈むし。

ルビーみたいに適度に雑ながらさりげなく褒めている方が持ち直して世話を焼き始める。

仕方ない。また褒めるか。

「先輩は歌も上手いですしアイドルデビューしてから話題も沢山じゃないですか!」

「…そう?けど

『既に終わった人が痛々しい』とか言われてたりするわよ?まあ見返してやる!て思ってはいるけど」

落ち込むけど戦意は忘れない。

上昇志向はある。畳みかけよう。

「それでこそ、俺が知る有馬かな!!好きなアイドル、有馬かな!!!子どもの頃から先輩の歌好きですもん俺!」

「……ピーマン体操だけでしょ?どうせ」

「Full moo…やさわやかサテライトも初回盤CD買ってます!!」

懐から取り出す俺。

マジでファンなの俺。

コハクとルビーがビックリしてるな。話してなかったし当然か。

「うそぉ…!特に話題にならなかった二曲知ってくれてる…!?」

「「「懐からなんで⁈!」」」

「いや、サインもらうタイミング逃しつづけてたから」

「ずっとかなちゃんと会う時仕込んでたの?」

「持って行こうとして忘れてただけっすよ。流石に毎回仕込まないです」

そりゃそうだよねー、と笑うMEMさん。

時間見つけて下に行く時ぐらいだから先輩に会えない日も多い。

下に行けば基本会える声優志望の生駒さんとは違うのだ。

「ま、まあ?私の歌の熱烈ファンがすぐ側に居るて分かったのは素直に収穫だし?まあやる気にはなるというかぁ…」

「うわぁ、先輩に無いはずの尻尾が見える…」

「尻尾ブンブン振って喜びを表すのが犬で猫は尻尾ピーン!て伸ばしていたら楽しい、尻尾の先が曲がっていたら嬉しいらしいよ」

「コハクちゃん物知りだねー」

外野のガールズ楽しそうだね。

こっちは色々必死だよ。

「先輩、収録終わったらサイン、CDに下さい」

「めっちゃ書く!何枚目でもTシャツにでも書いてあげるわ!!」

その日の動画はハイテンションな有馬かなが見られて話題になった。

「いつもはぎゃー!て叫ぶ先輩が良い笑顔で屍人をぶん殴ってるな…」

「火かき棒、やっぱり強いね」

余談

「有馬さんのことファンなの知らなかったけどでまかせ…じゃないよね?隠していたの?」

「いや?俺普通に応援し続けていたよ?ピーマン体操歌う先輩は可愛くてアイに次ぐ推しだったんだわ。

色々歌上手いし…TVで見られるの減ると残念でさ?

兄貴が連れて来た時は素直に嬉しかったね。」

兄貴が連れて来た時はビックリして腰抜けたね。生駒さんに手を引いて貰って立ち上がれたけど。

話しかけに行くタイミングはルビーのおかげでなんとかなったからありがたい。後日差し入れでルビーには+1品こっそり渡しておいた。

本人はよくわかっていなかったが。

「兄さん。気が多くない?あかねさん好きだったわ、お姉ちゃん好きだわ、ゆらさん好きだわ…

普通ならただの気持ちの悪いファンで終わるところが出会いのチャンスあるのが自身の身の上利用している感あって引くわ…」

「最高に冷たい眼差しと返答にお兄ちゃん泣きそう」

明日義瑠さんに愚痴りに行こう。

あの人は聞くだけは聞いてくれるし。

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