タイクーンmeetsダブル、最終決着のシーンの妄想

タイクーンmeetsダブル、最終決着のシーンの妄想


・ダイヤ「うっ…ううっ…!」

景和の叫びが響いたのか、頭を抱え苦しみだすダイヤ。心なしか、纏っている粒子が減っているように見える。

・ダブル(左)『なんだ?まさかメモリの毒がまずいとこまで進行してやがるのか…?』

・タキオン『いや、むしろその逆だ。ジュエルメモリの出力が、急激に下がっている…。』

ダイヤの様子を腹部のレンズで捉えつつライブモードで羽ばたく茶色いバットショットからタキオンの声が聞こえた。その言葉に続いてダブルの右の複眼が明滅する。

・ダブル(右)『人間よりも優れているとされるウマ娘の抵抗力は本人の調子、言うなれば『感情』に大きく左右される。これは…サトノダイヤモンドの意思がメモリを拒絶しているということか…!』

・ダイヤ「うあっ…ああああああああっ!」

 ダイヤモンド粒子の動きに操作や統率がとれていないのか、その姿がノイズがかったように一気に不安定になってゆく。

 コンクリートの柱を遮蔽にするように、寄りかからせて座らせた状態でフィリップの肉体を守っているカフェ、苦しむダイヤを柱越しに見てその琥珀色の瞳を震わせる。

・カフェ「ですがこのままでは…ダイヤさんの心が壊れてしまうかもしれません…!」

・タイクーン「なら早く助けないと!」

 ダイヤを救うには体内のメモリをメモリブレイク———破壊して摘出する他ない。黒い装甲を纏ったタイクーンも焦った声をあげ、武刀を片手にバイザーに指をあてる。

・ダブル(右)『待つんだ桜井景和!「武刃でもメモリが溶け込んでいては手が出せない」と言ったはずだぞ!』

 そう、メモリが溶け込んでいるが故に本来ダブルのマキシマムドライブが必要になるのだ。だがメモリの能力を用いていたとはいえ、量産型のメモリが抵抗力の高いウマ娘に使用されているだけあって彼女はまだ完全なドーパントにはなっていない。そんな状態でダブルのマキシマムドライブを当ててしまえば彼女の身も危ない。

 なら完全なドーパント化を待つべきか?いやそれに至っては論外だ。ドーパント化したところをメモリブレイクで元に戻したとしても今度は後遺症に悩まされることになるし、今のダイヤを放置していたら完全なドーパント化より先にダイヤの精神に限界が来てしまう。何より、彼らはダイヤの苦しむ姿を黙って眺め続けていられるような人間ではない。

・タイクーン「じゃあどうすれば…!」

・ダブル(左)『…いや、切り札はまだ残ってるぜ。』

・ダブル(右)『翔太郎?』

ダブルの左半身はドライバーに挿さったジョーカーメモリをトリガーメモリに変え、再びドライバーを展開しなおす。

『CYCLONE!・TRIGGER!』

すると左半身が黒から青に変化したダブルの右手に、カフェが持つそれと似たデザインの青い拳銃が現れた。

・ダブル(左)『こいつだ!』

『CURE!』

左手でどこからか取り出したのは「C」のアルファベットがラベルに描かれた薄い水色半透明のメモリ、『キュア』メモリ。

・カフェ「それは…」

一連の騒動の黒幕にあたる、財団X幹部が持っていたメモリ。

・タキオン『効果に思い当たる節でもあるのかい?』

・ダブル(右)『…ああ、そうか!』

ダブルの右半身も何かに気付いたのか、右手に持つ青い拳銃を顔に近づけ、左手が届くように位置取らせた。そこに左手の持つメモリを装填、

『"キュアー"! マキシマムドライブ!』

中折れ式のバレルを畳むとメモリから生じたエネルギーが内部で迸り、銃口からも一部が青白い光として漏れ出始めた。ダブルはその銃口を苦しむダイヤへと向ける。

・ダブル『『トリガー、メディカルミスト!』』

銃口から放たれた複数の光弾がダイヤの周囲にぶつかってはじけ、水色の薄い霧となってダイヤを包み込んだ。

・ダイヤ「あああぁ…うぁ、あぁぁ…」

苦しむ様子が収まり、彼女は立ちすくむ形で、俯いたままその場に佇む、

・カフェ「止まった…ダイヤさんの心は…無事みたいです…!」

鎖骨の当たりに青白い光が集まり、一つの光点が浮き上がる。

———そこは、丁度幹部にメモリを押し込まれていた場所。

それを腹部のレンズにしっかりと映していたバットショットからタキオンの声が響く。

・タキオン「ダイヤくんの体に溶け込んでいたメモリが分離した!今なら…」

・ダブル(左)「今だ景和ァ!!」

ダブルの左半身から発された翔太郎の声に頷いて応じ、景和は再びバイザーに指を当てて、選択肢に新たに加わった『ジュエルメモリ』のみを攻撃対象に指定。

そして鞘に一度”武刀”を納め、右手でバックルの刀を納刀。

鞘を持った左手で鯉口を切って居合の構えをとる。

雅な旋律がバックルより流れ、鯉口と刃の隙間から緑の光が漏れだす。

・タイクーン「今助けるから…じっと、してて…!」

その声に、ダイヤは顔をあげ虚ろな眼をタイクーンのバイザーに反射させた。

・ダイヤ「ぁ…」

バックルの刀を再び抜刀

『BUJIN SWORD …STRIKE』

させるとともに地面を蹴り、ダイヤに肉薄し———

・タイクーン「ハァッ!」

———疾風のごとく鞘から武刀を抜刀。

その刃はダイヤの体をすり抜け、正確無比に鎖骨付近の光点をとらえていた。

振り切った刀を鯉口の縁に峰を滑らせるようにゆっくりと納め、鍔が鯉口と噛みあうと同時に、遅れてきた斬撃音が緑の鋭い光と共に光点から浮かび上がる。

 虚ろな眼のままのけぞったダイヤの胸元から吐き出された、「J」のアルファベットが刻まれた禍々しいメモリは空中で緑の鋭い光に沿うように、パキリとした音と共に中の回路ごと、真っ二つに両断された。

鞘付きの武刃を傍らに投げ捨て、仰け反ったまま倒れ込むダイヤの体を咄嗟に両手で支えるタイクーン。

…いや、ドライバーに装填されていたバックルがひとりでに外れたことで仮面の下の素顔を見せた景和。

外れたバックルも元の『獣』、ポン吉に姿を戻し、目を閉じているダイヤに駆け寄る。

・カフェ「ダイヤさんは気絶しているだけですね…もう、大丈夫…」

 二人と一匹の様子を見て安堵の声を漏らしたカフェは左肩に巻いた腕章のスロットからメモリを引き抜き、腕章を外す。

少々眩かった瞳の輝きがいつも通りの強さにおさまり、頬に浮かんでいた『S』の字型の印が消え、ほんのり彼女を包んでいた薄紫のオーラは一気に晴れた。いつも通りのマンハッタンカフェだ。

 その様子を見たダブルは、無言のままドライバーから両側のメモリを引き抜き、ドライバーを外して、『ダブル』としての姿を塵と共に風に散らし素顔を晒した。

・翔太郎「だな。後は…二人がなんとかするしかねえ。」

露わになった翔太郎のその横顔は、優しくも凛々しい彼なりの『ハードボイルド』に相応しいものを纏っていた。

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