ゼフの調理
○○「…で、なんでおれは厨房に立たされてんだ?」
ゼフとの契約、そして彼とサンジの退院がなされた日の夜のこと
私とゼフ、サンジの三人はとあるダイニングキッチンに集まっていた
ここは私がこの島で活動するにあたり、拠点として借りたホテルの一室
短から中期間の滞在を想定した作りになっており、客室でありながらキッチンなど自活に最低限必要な物がそろっている
「取引に応じれば、契約の内容を全部教えてくれるんじゃなかったのか、怪物さんよぉ」
「なに、そのつもりだったんだがね
それよりも先に、君の腕を直接味わいたいと思ってね
4ヶ月の間に腕が鈍ってた、なんてことになれば意味がないだろう?」
ゼフが胡乱気な目でこちらを見てくる
まぁ唐突ではあるが、必要なことでもある
無駄に込み入った話をする前に、ゼフの実力は見ておきたい
そのため、態々キッチンのついているこの部屋を借りたのだ
「な、なぁおっさん、なんでおれまで連れてきたんだ…?
難しい話すんなら、おれ外で待ってるけど…」
サンジが不安そうに聞いてくる
厳ついおっさん二人と一緒では場違い感を感じるのも仕方のないことだろう
だが、これにも理由はある
「サンジ君、君はこの男についていき、店を手伝うのだろう?
なら、その実力は知っておくべきじゃないかね?」
「それは、そうだと、思うけど…」
サンジが口ごもる
居心地が悪いだけで、強く退室を希望する理由もないからだろう
…いや、ともすれば、彼自身ゼフの腕前がどのようなものか、気になっているのかもしれない
「…という事だ、ゼフ、悪いが二人前、何か作ってくれないかな?
食材は選りすぐりの物を用意してある」
食材は今朝の内に、私自ら島の市場に足を向けて調達してある
もっとも、私には食材の目利きはできないため、市場のセリ人に選ばせたものを金にモノを言わせて手に入れたのだが
ゼフがどのようなものを作ってもいいように、食材は量も種類も十分にそろえてある
無論、こちらから食材やメニューの指定は一切しない
彼の純粋な腕とセンスを見たいからな
「…フン、まぁ、食いてぇってんなら食わせてやる
そこでちょっと待ってろ」
そう言いながらゼフはシンクで手を入念に洗ったのち、冷蔵庫から数品の食材を取り出した
…さて、どんなものが出てくるか
腹を空かせて待つとしよう