ゼイユとオーガポンとスグアオのSS

ゼイユとオーガポンとスグアオのSS



■スグアオ後編和解後付き合ってるif。二人の仲を心配するゼイユの話です。

■ほんのちょびっと背後注意

■ブルベ学園の設定はほぼ妄想

■なんでも許せる人のみご覧ください。

■転載禁止


「ふぅー…交換留学生がアオイだったってのも最初は驚いたけど、再会をきっかけにスグとアオイが付き合うことになるなんてねぇ。まあ、やっとかよって感じだけど。」

「ぽに?」

「でも姉としてはうまくいって欲しいし、この先もまだまだ心配は絶えないわね」

 

 ここはブルーベリー学園敷地内にある緑地。

 弟とその恋人は今日は二人で寮で過ごすというので、ゼイユは「じゃあその間オーガポンを預かってあげるわ!感謝しなさい!」とアオイからモンスターボールを受け取り散歩に出ていた。

 弟の「ねーちゃん、ただ遊び相手が欲しいだけだべ」という余計な一言にはいつものように威嚇しておいた。

 

「オーガポン、あなたあの子たちとよく一緒にいるでしょ?ねぇ、スグとアオイって二人きりの時どんな感じなの?」

「ぽにー……!ぽにお!」

 オーガポンは少し考えながらきょろきょろ周囲を見渡すと木の枝を拾い、器用に地面に何かを描き始めた。どうやら絵で答えてくれるらしい。


「ぽーっ!ぽにっ」

「ああ、これはアオイ?シンプルながら特徴とらえててすごいわね…」

 枝の動きの強弱に合わせて掛け声をつけながらオーガポンは手を進める。丸い頭部に一直線の胴体や手足がついただけの典型的な棒人間の絵だが、頭の横に描き加えられたみつあみのおかげで特定は容易だった。

「で、こっちはスグね。これ、このヘアバンドでしょ?」

 ゼイユは自分の頭を示しながら言った。

「ぽにおー!」

 正解、とでもいうように返事をしながらオーガポンは二人の人間の絵を描き上げた。


「って、ちょっと、これ…オーガポン、これ本当!? 見る角度ここからで合ってる!?」

 オーガポンが「がおっ」と肯定する。一見すると棒人間が二つ密着して並んでいるだけのシンプルな構図だが、ゼイユは一つ、いや二つ突っ込みたいことがある。


 この棒人間たちの絵は、なぜかちょうど90度傾けられたように上からスグリ、アオイの順に横向きに重なり寝かされている。アオイのみつあみが外側に跳ねたように描かれているのも何だか妙なリアルさがある。

 最初はオーガポンにとってはこの角度からの方が描きやすいのかと思って見ていたが、どうやらこの横向きであることも含めてオーガポンが実際に見た光景らしい。

「それに!なにこれ!この周りのエフェクト!?てかどこでその表現知識つけたの?」

 もしかしてオーガポンはキタカミに棲みついている間に山に捨てられた漫画でも拾って読んでいたのだろうか。この棒人間たちの周囲には一般的に水滴を現すマークがいくつもついていた。

 水滴は二人を中心に放射状に出ていることからゼイユは汗を表現していると判断した。


 つまりこれは二人の男女が汗を纏いながら横になっている絵なのである。ゼイユは血の気が引いた。

「バカスグ…ッ!さすがにそこまでいくのはまだ早いでしょーがっ…!」

 弟への悪態をつくのと同時にゼイユはオーガポンを伴って寮に駆け出した。

 

 

「何か聞こえる!」

 スグリの寮室の前で、ゼイユは扉に耳を当てた。微かに声が聞こえる。

「ス……も、無理……や……よぅ…」

「ま……じゃ、……けっぱ……」

 内容までは聞き取れないが、何となく切羽詰まったようなスグリとアオイの声が途切れ途切れに聞こえた。

 ゼイユの中で疑惑が確信に変わり始める。

「た、確かめないと。二人が何をしているのか……!ああでも、こういうときどうすればいいの!まずはノック!? いや鍵壊して突入する!? ううん、まずはスグだけ呼び出して冷静に尋問、いえ話し合いを…!」

「ぽにお?」

 ガチャ。

 ゼイユが下を見ると、オーガポンが「開いてるよ?」とでもいうようにドアを開けていた。

 

 

「アオイ、トレーナーにも筋力は、必要、なんじゃ!もう、ちょっと、けっぱ、って……!」

「スグリ……もう、ダメ……腕が、上がんないっ……!」

 

 スグリの自室内。そこには仲良く床の上で横に並び額に汗をにじませながら腕立てをしている二人がいた。

 

「……あんたら、何してんの」

「あ、ねーちゃんとオーガポン。なした?さっき出てったばっかなのに」

 スグリがタンクトップの裾で顔の汗を拭きながら立ち上がった。

「スグリがね、試合で勝つにはトレーナーの体力も大事だって。それで最近は一緒に筋トレしてるんだー」

 アオイが説明する横でオーガポンはトコトコ部屋の中を進み「ぽにー!」と机の上に座った。彼女が描いた絵はその位置から腕立てに励む二人を見たものだったのだとゼイユは今理解した。

 

「よくわからんけどねーちゃんたちさ来たし皆で休憩にすっか。アオイ、飲み物りんごジュースでいい?」

「うん、ありがとう。お菓子は私が出すね」

「んだば、こないだヒウンシティで買ったクッキー缶空けちゃうべ」

「そうだね!ヒウンシティ楽しかったよね、アイスも美味しかったし!あとライモンシティの…」

 

 年相応の会話をしながら仲睦まじげにキッチンに向かう二人を見てゼイユは安堵したようなため息を吐いた後、いつもの調子で弟と義妹(予定)にまくしたてた。

「─あんたら汗まみれの手であたしに食べ物振る舞う気? まずは洗・面・所!」

「うわっ急に元気さなった。ホント今日のねーちゃん何かわやだな」


 ──オーガポンが描いた光景がゼイユが先ほど目にしたそれと本当に同じ行為であったのかどうかはオーガポンしか知らない。


ーおわりー

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