センゴク家の一騒動

センゴク家の一騒動

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「ROOM」

球状のサークルが展開されていく。範囲は、いまここにいる建物を含め敷地の全てが入るほど。

「スキャン」

言葉と同時に膨大な位置情報が入ってくる。普段これを使用している分にはすぐに標的が見つかるが、相手は手を変え品を変えて、場所を変えるので探すのも楽じゃない。

「いた。コラさん、倉庫Fの24」

「お、分かった」

情報を伝えるなり、ローは机に突っ伏した。ロシナンテはローの頭を撫でてから医務室を出ていく。

「範囲を広げる特訓にはなっていそうだな」

「シャンブルズが出来るまでの体力がない。明日からの特訓メニュー増やしてもらおうかな」

「体力づくりはいいが、いきなり量を増やしても体がついていかないぞ。

 基礎が十分に出来ていなければ、結局は怪我に繋がる。とりあえず、特訓の内容を一度見直そう。

 それはそれとして、ローは能力もあるし、見聞色を特訓した方が後々活かせるかもしれん」

「わかった。そうする」

そう返事した同時に遠くない場所で大きな音がする。大丈夫ですか、と身を案じる声も聞こえたが、どこか呆れが混じっていた。

「……とりあえず、いまはコラさんを頼む」

「任されよう」



「いい加減探すこっちの身にもなれ」

「しかし…」

「しかしも何もない。俺の体力削らせやがって」

「…すまん」

成人年齢に近い青年が、年下の少年に良いように言われている。だが、言い分が正当されるのは少年の方だった。

「ドリィ、お願いだから怪我を隠すのは止めてくれよ」

普段のおどけるような顔は心配の色をしている。そこには大きな絆創膏が貼られていて、さらに身の置き所がなくなったドレークは肩をすくめて黙ってしまう。

「いいか。お前は自分で思ってるより処置が下手だ」

半分は嘘である。おそらく、これまでの状況から包帯や絆創膏は何度も使っていたのだろう。

だが、十分な消毒が出来ていなかったり、包帯の量が足りないだとか、本職の医者からすれば詰めが甘いと見える処置だ。

想像するに難くない。お前に使う分はない、とでも言われてきたのだろう。それが、いまの状況にも繋がっている。

「お前が勝手に使った分は誰かが補充しなくちゃいけなくなるし、手当てし直したらその分が無駄になる。

何より、お前が下手に隠れるせいで、手当てする時の俺の体力がなくなる」

ドレークは負傷しても医務室に来ない。それが擦り傷だったらローもここまで口を酸っぱくして言ってない。

傍から見ても、痛いと察するに余りある傷や打ち身ですら隠して、自分で処置しようとするのは異常だ。それしか傷を治す方法がなかったというのも腹立たしい。医者の立場がないではないか。

「ドリィ、怪我を隠すのは前に居たところで怒られたからか? そりゃ医者の出番がないに越したことはねぇが、負傷した場合と病気の時は診せてくれなきゃ困る。治るものも治らねぇ」

「コラさんの言う通りだ。俺たち医者は治せる手段がある。けど患者が自覚して診察に来なかったら、患者の存在に気づけない」

「ドレーク、怪我をするのはいい。生半可な覚悟では海軍は務まらん。だが、心配はさせてくれ」

三者三様の言葉に顔を真っ赤にしたドレークは、小声ながらも「わかりました」と答えてくれた。


※pixivへ再掲しました。(2023年8月26日)


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