僕なんか

僕なんか

匿名希望


ス〒>×ンゴ

おじさん

ウマミミシッポ謎設定有

そこそこ描写ある

なんでも許せる人向け


センになるとホルモンバランスが崩れやすくなるのは、界隈では割と有名な話だ。

ほぼ何も影響がないヤツも居れば、僕みたいに酷く重い症状が出るヤツもいる。

「……っう…。」

発情。悲しいことにタマナシ野郎には絶対に必要の無い症状が定期的にやってくる。

といっても、ある程度は行動や周期で抑えるべきときには抑えてきた。抑えられていた。

今日に限って、失敗するなんて。

「おい…大丈夫か?」

「………うん。だいじょーぶ…」

「絶対大丈夫じゃねぇ…。」

久々に会えた旧友。しかも、片想いの相手となら、テンション上がってお酒も進んで失敗しちゃうのは仕方なくない?

「飲み過ぎだ。ちょっとどっかで休憩するぞ。」

ぐっと肩の下に腕を通され、持ち上げられる。フーリッシュの体温は少し冷たかった。

「やすまなくてだいじょーぶだから…」

「だから大丈夫じゃねえって!」

思考は冷静にできてるはずなのに、身体が熱に浮かされたように熱く重く、呂律が回らない。

「フーリッシュ~」

「何?」

「ちかくにさ~、とーちゃんのおみせがあるから、そこまでつれてって♡」

そう。いつも"それ"になったら、父ちゃんに部屋を借りて発散していた。

もちろんアイドルだからこっそり一人でだよ?

だから今回も、一人で…

「部屋。宿泊。二人で。」

「えっ?」

「あいよ。あんまり汚すなよ。」

「身内割引とかねぇの?」

「ねーよ、ほら行ってこい。」

件のラブホテルについたフーリッシュは、当たり前のように二人で宿泊を頼んだ。なんで?父ちゃんは父ちゃんで、僕のどうしようもない事情を知っているのに平然と鍵を渡す。

「ま、まって、フーリッシュ…」

「はいはい部屋に着いたらな。」

ただ酔っ払っていると思われてるのか、子供をあやすように頭を撫でられる。気持ちいい。って違う!

「ちがう、ここ、ラブホテルで…」

「お前が「つれてって♡」って言ったんだろ」

「そうだけど、そうじゃなくて、」

「ほら、部屋ついたぞ。」

無情にも部屋のドアが開けられ、フーリッシュの手によって案外優しくベッドに寝かせられる。シャツのボタンを一つ目だけ緩められた瞬間は気が気じゃなかった。

「じゃあお前はさっさと寝とけ。俺今ので汗かいたからシャワー浴びてくる。」

何もせずにフーリッシュは浴室に向かっていった。まあ当たり前だけど。

でも、僕は正直それどころじゃなかった。

酒も入って昂った身体の熱は収まらず、ましてやいつものこの場所となれば我慢も効くはずはなくて…

「っふ……う…」

フーリッシュが戻ってくる前に、発散しちゃえばいい、なんて、甘い誘惑を脳内で悪魔が囁いた。

発情した身体は、ゆっくり慣らさずとも指をくわえ込んだ。すぐに本数が増え、部屋の中に小さく届いていたシャワーの水音に、粘着質で下品な音が加わる。

さっきまでのフーリッシュの体温をが、支えられながら見た横顔が、今になってじわじわと思考を浸食し、冷静さを奪っていく。

「…っ、う、あ………イッ…」

ぐっと唇を噛んで、大きな波を受け止める。驚くほどすぐに頂きに達してしまった。

少しでも発散したかったのに、逆にスイッチが入っちゃって、

「っ……ん…!…あ…」

ふと、シャワーの音が聞こえなくなったことに気づいた。

「やば……」

指を無理やり抜いて、急いで服を直した直後に、フーリッシュは帰ってきた。

「まだ寝てなかったのか」

半分呆れと、半分心配な声。心配してもらってるのに、雑に羽織られたバスローブから覗く肌から目を離せなくなる。

「フーリッシュ…」

「顔赤いな。もしかして熱でも…」

「違う。」

センになるとホルモンバランスが崩れ、発情してしまうのは、界隈では割と有名な話だ。

でも、逆に言えば、界隈以外は知らない人が多い。

「僕、身体収まらなくって、寝ても治らないやつで、」

「…は?」

「だから、フーリッシュは近づかないで。」

決死の覚悟で言葉を吐ききる。

気持ち悪いだとか、近づくなとか、罵られるのも覚悟の上だった。

でも、フーリッシュはガシガシと頭をかいて、なんでかベッドの上に乗ってきた。

「な、なんで?」

「今の状態でお前放って眠れる訳ないだろ」

「でも、フーリッシュは…」

「必要ならなんだって手伝う。

 必要か不必要か、お前が選べ。」

体温が、匂いがはっきり感じられる距離。鋭い金色の瞳が僕を見つめて離さない。

こんなこと頼んじゃダメだってわかってるのに、きゅんきゅんと肚の奥が疼いて止まらない。

「おねがい…♡い…いれて…♡」

フーリッシュは黙っていた。

薄暗い部屋で、顔はよく見えなかった。けど、決して肯定的な雰囲気ではなくて、

「あ、はは…そうだよね…僕なんかと…」

「お前は、」

「?」

「お前は好きでもないやつとヤッてもいいのか?」

「え、」

「…お前がいいならいい。」

がし、と乱暴に脚を捕まれる。眉根を寄せたフーリッシュの顔は見ていられなくて、

「ちょっ、ちょっとだけ、待って。」

「…………」

「僕はっ…僕は…………フーリッシュが…ずっと好きだった…から…」

「は?え?ずっと?」

「うん。…ずっと、こういうこと、したかった。」

妙な声を上げて、フーリッシュは頭を抱えた。でも、さっきまでの苦しそうな顔ではなくて。

「はぁー…もういい。」

「……やめる?」

口の端を吊り上げ、フーリッシュはぎらついた目をこっちへ向けた。

「やめねえよ。むしろ…手加減とか遠慮しないから覚悟しとけ。」




ピコンピコン。

朝の光がうっすら差し込む部屋に、通知の音が鳴る。

「ん"…」

うるさく思いながら枕元のスマホを取ると、見知らぬ画面が映った。

「あ"ー………」

フーリッシュのスマホを間違えて取ってしまった。隣のフーリッシュは全く気づかずに眠っている。

「へへ…」

でも、起こしてやんない。

そっとスマホを元の位置に戻し、僕も元の--フーリッシュの隣に戻る。

これが終わったら、またそれぞれの場所に戻って、またずっと会えなくなるから。

今だけは、フーリッシュの隣にいさせて。





この後。余韻もへったくれもなく、父ちゃんには延長料金を請求されたし、月一どころかもっと頻繁に僕らが会うようになったのは、また別の話。







アフゴは拗らせてるけど「すきっ♡」って5億回は言う。異論は認める。



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