スレッタほろ酔い?Ver.
※端切れ話(ほろ酔い加減のコンフェッション)の途中から分岐したお話です
美味しい。何だか今まで飲んでいた葡萄ジュースとは味も匂いも違う。こちらの方が芳醇で、刺激的だ。
スレッタはもう一口くいっと飲むと、にこにこしながら料理に手を付け始めた。
一口食べる。一口飲む。一口食べる。一口飲む。すぐにグラスの中身は無くなってしまう。
「…スカーレット、もしかしてそのグラスの中身」
「ふぇ?なんれすかエランさん?」
気付いた時には世界がグラグラと揺れていて、スレッタはテーブルに突っ伏してしまった。
揺れるゆれる。ふわふわと。この感覚はとても覚えがある。無重力空間…懐かしき宇宙だ。
懐かしい…なんて変なの。スレッタはつい1ヶ月前には学園にいたし、数か月前には水星にいたのに。
水星。スレッタの故郷。スレッタの我が家。意地悪な老人ばかりで、子供の頃は泣いてばかりいた。
『最近まで遠くの場所で修行してたんだよ。この村の力になりたくて帰って来たのさ。子供の頃からの夢がようやく叶いそうだ』
誇らしそうに誰かが話す。すごい人だ。村に何が必要か考えて、長年の地道な努力で勝ち取った誇りだ。
それに比べて自分はどうだろう。故郷に学校を。そんな目標を掲げていたものの、具体的なプランは何もなかった。今は自分一人だけが美味しい物を食べて幸せな毎日を過ごしている。
スレッタは悲しくなって、泣いてしまった。ついさっきまで幸せな気分だったのに、今は真逆の気分だった。
わたし、駄目な子なんです。悪い子なんです。そう誰かに訴えてみる。
───悪い子じゃないよ、きみはとてもいい子だ。優しくて強くて、素敵な子だよ。
どこからか、そんな優しい声が聞こえてくる。スレッタが泣きごとを言う度に聞こえてくる。スレッタはその声に、何度も何度も慰められた。
「おはようスレッタ・マーキュリー」
「はえ?」
気付いたらタイムスリップしていた。
夜だと思っていたのに、もう朝になっている。混乱していると、エランが料理が乗ったトレーを手にもっている。ものすごく見覚えのある料理だ。
「ごはん、食べられそうなら温めて来るよ。安静にしていて」
あれ?パーティは?ダンスは?寝ぼけた頭で思っていると、何かがひらりと降ってきた。それを見て、大体の事情を察したスレッタは悲鳴を上げて、頭に響いて突っ伏した。
『お嬢さん、お酒は程々にね☆村のお医者さんより』
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