スリラーバーク編inウタPart5

スリラーバーク編inウタPart5



「…あの野郎おれ達の邪魔しようってのか!!」

「ルフィの奴てめェの一味をてめェで潰す気か!!」

「命令が下ったのね…!!」

「本物のルフィは無事かな……!!」

「本物の方は大丈夫だよ!!でもあっちの方はどうしよう……!!」

「何ですか!?アレ〜〜〜〜〜!!!」

「倒しようがあんのかあんなモン」

「面白ェな…!!!」


各自目の前にそびえ立つ自分達を狙う化け物に対する感想を口にする中、唯一オーズと真正面から対峙するサンジがそこをどけと啖呵を切り、オーズもそれに応えよろしくと挨拶を済ませる。

その裏で互いに位置関係を把握した塔の上のゾロ達と庭にいるウソップ達はサンジの身を案じる。


「アホコックの野郎…ナミはちゃんと助けたのか?」

「小娘よりてめェの方がピンチじゃねェか!!」

「アレ何ですか〜〜!!?顔がコワイ!!!」


「ややややベェ!!サンジがやベェ!!」

「予想外ね。私達は影だけを狙われるのかと思ってた。ちょっと暴れすぎたかしら」

「だとしてもそこら中瓦礫だらけなのはルフィゾンビのせいじゃない!?ほぼ八つ当たりじゃん!!」

「その通りだが…とにかくもうルフィの影以外はいらねェって勢いだな」

「コエ〜〜!!!コエ〜〜!!!あんなのと戦えねェぞ」


周囲の焦りをよそにオーズは左腕に貼られた似顔絵の手配書とサンジの顔を見比べ、そのあまりのそっくりっぷりに海賊の一人だと断定するとその巨大な右腕を大きく振りかぶる。


「"ゴームーゴームーの〜…"」

「ルフィの技だっ!!」

「まさか伸びるのか!?」

「あいつもゴム人間になったのか!?」


「"鎌"!!!」


鎌の形に見立てた腕をチョップのように振り抜きサンジへ攻撃が加えられるが、全くもって伸びてはいなかった。が、大昔の"国引き伝説"を持つ「魔人」オーズのリーチと破壊力の前には伸びない事など些末なことであった。

オーズの攻撃を躱したサンジはそのまま魔人の懐へ駆け抜け、地を蹴り飛び上がる。


「"首肉(コリエ)フリッ…"」

「ふんっ!!!」

「うっ!ぐァ!!!」


サンジ自慢の足技はオーズの頭突きにより防がれ地面へ叩きつけられると、すぐに伸びてきた左腕の突きによりさらに壁へ叩きつけられる。

そのまま巨体に見合わぬ素早さでオーズはサンジを掴み取る。


「やべェ!!死ぬぞあいつ!!!」

「サンジー!!!」

「"火の鳥星"!!!」


サンジの危機を救ったのは燃ゆる鳥の形となって対象を撃ち抜く攻撃を放ったウソップであった。

他所から攻撃を加えられたオーズは掴んでいたサンジを投げ捨てると攻撃が飛んできた地点にいる連中と手配書の顔を見比べ、ウタ・チョッパー・ロビンの存在を確認し頭の炎を振り払い迫る。


「こっち来たァ!!!」

「まずい!!フランキー!!あいつをこっちにおびきよせろ!!!」

「よしきた!!」


ドドドドとオーズへ向けて砲撃し誘導しようと画策するが、完全に死角であったにも関わらずオーズは瞬時にしゃがみその体勢のままギロリと塔の上のフランキー達を視認すると、これまたその巨体に見合わぬ素早さで飛び蹴りをかます。


「どわあああ!!!あ…!!っぶね!!」

「下の屋根に降りてろ二人共 "一剛力羅"!!"二剛力羅"!!"三刀流"……!!!"二剛力斬(ニゴリザケ)"っ!!!


二の腕の筋肉を大きく膨らませオーズの顔面向けてゾロが斬りかかるが、オーズが大きく仰け反り躱したことによりオーズから見て左側の突出した牙を斬るのみに留まる。


「"ゴムゴムの…"!!"火山"!!!」

「ゾロ〜〜〜〜〜!!生きてるか!!?…………いや!!死ぬぞあんなトコから落下したら!!!」


仰け反り不安定な体勢のままオーズはゾロをそのまま落ちればタダでは済まない高さまで蹴りあげる。

その横ではさっきのリベンジだと言わんばかりによく狙いを定めたフランキーがオーズの頭部へ向けて再び砲撃を開始する。


「くらえバケモノ "ウェポンズ左"!!!


だがその砲撃をオーズはバク宙で回避すると、近くにあった手頃な塔を引き抜き屋敷の屋根にいるフランキー、ブルック目がけてその塔を突き刺すようにして攻撃する。


「うわああああ!!!」

「うわァーーー!!フランキー!!!ブルックー!!!」

「…………!!ゾロが落ちてくるよ!!!」

「"百花繚乱(シエンフルール)"『蜘蛛の華(スパイダーネット)』」


ロビンが咲かせた腕の網によりゾロは何とか一命を取り留めるが、フランキー達へ向けて突き刺した塔の残骸を抱えたオーズが庭にいるウタ達に迫る。


「………!!コレをくらえ!!!てめェだってゾンビだ!!必殺!!"塩星"!!!


機転を利かせたウソップがゾンビの弱点である塩をオーズの口の中へぶち込むが、オーズは何をされたのか理解していないといった表情のまま影が抜けることはなかった。


「び…微量すぎたこの巨体には!!!」

「"重量(ヘビー)ゴング"!!!」

「"繰り返す(ダカーポ)…"!!」


咄嗟に反撃しようとウタとチョッパーがオーズへ向かっていくが、オーズが投げる塔の残骸の質量には敵わずロビン、ウソップ諸共下へ落下してしまう。

オーズの圧倒的な戦闘力の前に地面へと転がり伏せ、息も絶え絶えな8人を見下ろし自分に対してルフィと呼ぶ彼らに対してオーズは冷たく言い放つ。


「おめェらなんか知らねェぞ

おれはモリア様の部下、オーズだ!!!」


倒れる8人を見て事は済んだと判断したオーズは左腕に貼られた手配書を眺めて残りのターゲットを確認する。


「………あとは……さっきの"麦わら帽子"と"オレンジ女"と"イカすヒーロー" 3人足りねェなー…どこにいるんだ?」


ルフィ・ナミ・そげキングの3人を見当たらないなとオーズは周囲を探索し始める。

壁に指を突き入れ出てこい残りの奴らー!と窓を覗き見て探すオーズの下へ7つの影が忍び寄る。


「何つった?…名前」

「えーと」

「確か…ロース」

「いや違う最後は"ズ"だった」

「ジャズ」

「いや遠のいたぞ…!!」

「オース」

「…ん?いや…!!何か足りねェような…!!」

「"オーズ"よ」

『それだ!!!』


即興コントのような会話を繰り広げながら進むその7つの影はそこら中に散乱する瓦礫を踏み越えながらオーズへと近づく。伝説の侍リューマとの戦闘の傷が癒えていないガイコツ剣士にはちょっとよけてろと言い、とうとうオーズのすぐそばに立ち並ぶ。


「おいオーズ!!…てめェの中身がルフィの影なら

てめェの仲間の底力………!!!見くびっちゃあイカンだろう…………!!!」


再び立ち上がり雁首揃えて自分に立ち向かう海賊達を見たオーズは頑丈だなチビ海賊達とドスゥンと彼らの前に躍り出る。

そこへゾロが一つ提案なんだがと口を開く。


「コイツを一丁投げ飛ばすってのどうだ?」

「……な…投げ飛ばす!?こんなにでけェ巨体を〜〜〜!?」

「成程…そりゃさぞ気持ちいいだろうな」


ゾロの提案に半ば乗った形で7人はそれぞれでどう攻めるかを思案する。


「​───しかしこのデカさでルフィの動きとは恐れ入る」

「​───でも"海賊王"は似合わないわ」

「どう切り崩すかだ。作戦はいくらでもあるぜ……!!」

「曲作りと一緒で筋道立ててやってかないとだよね…!!」

「何か弱点があるはずだ」

「デケェ魚は少しずつ弱らせるってのが定石だが」

「超コワイ」


だがそんな策など関係ないとばかりにオーズは一行に向けてぴょんと飛び上がる。


「潰れろ!!"ゴムゴムの〜〜〜" "尻モチ"!!!!」

「そんな技ねェだろ!!!」

「散れ!!!」

「うお!!!」


7人全員がそれぞれに散ると、このままでは拉致があかねェとフランキーがその手に持つヘビーヌンチャクを投げ捨ててウソップ、チョッパーの下へ走り出す。


「おのれ麦わら…!!一丸となる力思い知れ!!!お前ら!!"戦略の15(タクティクスフィフティーン)だ!!!

「え?アレを??アレを出すのか!?」


フランキーの意図を理解したウソップとチョッパーが今度は3人揃ってゾロとサンジの所へと向かい、おれの足を支えろとフランキーが言うとそのまま2人の肩に飛び乗る。


「ん?」

「何だ」


出来上がったのは6人の戦士が合体することで出現する巨大ロボ戦士。だがその姿には何かが足りないように感じられた。


「ちょっと待ってフランキー!!"左腕"がまだドッキングしてねェ!!」

「何!!?」


胴体の役割を担うフランキーの左腕には、右腕を担うウソップのような存在がそこにはいなかったのだ。

となれば当然、未だ合体に参加していない女2人に巨大ロボ戦士の視線が向く。


「おい!!何してる!!歌姫!!ニコ・ロビン!!どっちか早く左腕にドッキングしろ!!」

「急げ!!」

「来い!!ウタ!!ロビン!!おれの様にやれ!!」


だがその呼び掛け虚しく2人はその場を動かない。正確にはドッキングしようとするウタをロビンが抑え、ロビン自身も行かないようにしているようだった。


「ロビン!!私やるよドッキング!!」

「ダメよウタ。あんなモノ……人として恥ずかしいわ


ロビンの言い放ったその一言はロマンを追い求める全ての者達の心をへし折るには十分な破壊力を擁していた。

その破壊力はドッキング拒否されたフランキー達だけでなくオーズの心までへし折っていた。


「!!……何だやめんのか!?」

「何であいつもショック受けてんだ!!!」

「やれよーー!!!ドッキングーーー!!!わくわくしただろ!!!」

『ギァアアアア!!!』


オーズの怒りの一撃は胴体と右腕、頭部を担っていた3人を壁へと叩きつける。足となっていた2人は難を逃れたがゾロは何をやらされていたのかと忘れるべき記憶としてその場を後にする。

一方で壁に叩きつけられた3人はロビンへ向けて恨み言を連ねる。


「お前が邪魔さえしなければ!!ロビン!!ロボ戦士"ビッグ皇帝"になれたのに!!」

「まさかの裏切りだ…!!まさかの!!」

「ルフィなら…やってくれたぞ」

「もう二度と………二度と誘わないで『ドッキング』」

「私はやるからね!!またいつか誘ってねドッキング!!」


巨大ロボ戦士に対するそれぞれの考えをぶつける5人とは別にオーズの脇へと駆け抜けていたサンジはコノ野郎が…とオーズへ悪態をつきながら手頃な瓦礫を蹴り飛ばす。


「おれは早くナミさん再救出に向かわにゃならねェのに!!」

『うおーーーー!!!』

「コノヤロー仕切り直しだァ〜〜!!!」


ガン!と瓦礫をぶつけられたオーズをよそに復活したフランキー達。そしてオーズは瓦礫をぶつけてきたサンジに向き直り左腕を構える。


「お前か」

「…………!!」

「あ!近づくチャンス…!!」

「フランキー!!このデケェの借りるぞ!!!」

「あっ!!てめェおれのヘビーヌンチャク!!!貸すっ!!!」


オーズがサンジに向いた隙を利用してウタはオーズの向いている方向の逆側へと駆け出し、ゾロはフランキーが投げ捨てていたヘビーヌンチャクに刀を刺し抱えロビンへ指示を飛ばす。


「ロビン!!おれがあいつの左腕をハジいたら関節をきめろ!!」

「了解」

「くらえ必殺"特用油星"三連発!!!


サンジへ向けてパンチを放とうとしたオーズを支える右腕に向けてウソップが大量の油を撃ち放つ事で、その巨体を右腕で支える事を不可能にする。これでまずは一つ目。

そこへヘビーヌンチャクをグルングルンとぶん回すゾロがサンジの下に駆け寄る。


「おい飛ばせ!!!」

「お前っ!!そんなデケェもん持つとは…」

「ムリならいいぞ」

「コノ…!!やれるわアホ!!!"空軍(アルメ・ド・レール)" "パワーシュート"!!!

「"大"…"撃剣"!!!」

「をっ!!!」


サンジにより蹴り飛ばされたゾロが巨大な石柱で出来たヌンチャクをオーズの右腕へぶつけて大きく弾き飛ばす。そこへロビンが事前の指示通りに行動を開始する。


「"百花繚乱(シエンフルール)"『大樹(ビッグツリー)』」

「成程そういう事…!!じゃあ私はこっちをやるよ!!"急速な追奏曲(プレストカノン)"!!!

「わっ!!危ねェっ!!コケるコケる!!」


ロビンが関節をキメ左腕を封じ、ウタが左足を突き飛ばし地面から離れさせる。これで一気に二つ。

そこから更にオーズに追撃を加えようとフランキーとチョッパーがオーズの目の前まで迫る。


「とくと見よこの即興空間階段造り!!フランキ〜〜〜"空中散歩(スカイウォーク)"!!しかしこの散歩道寿命は短い!!さっさといくぞチョッパー!!」

「おう!!」

『ス〜〜〜パ〜〜〜!!!"フラッパー" "ゴング"!!!!』


2人の痛烈なストレートがオーズのアゴに決まる。例えどれだけ大きくとも人体の急所は変わらない。アゴが揺らされ脳が揺れ、意識が朧になったオーズを唯一支える右足にサンジが迫る。


「後の支えはその足一本だなルフィの化け物!!!"アンチマナー"!!!"キックコース"!!!

「………え?」

「ひっくり返れ怪物!!」

「よし行け!!」

「"1ダウン"」

「うォあがっ!!!」


サンジの強烈な蹴りにより最後の支えの右足を吹き飛ばされオーズは、その巨体で屋敷を崩壊させながらひっくり返る。その光景を外から観戦していたゾンビ達は一体何が起こっているのかと頭を抱える。

あいででとしてやられたオーズは目の前で逆さまになっているチビ海賊達を見つける。それすなわち、自分がひっくり返されたという事なのだと理解すると怒りを露わにする。


「………!!お前らコノヤロ〜!!!もう怒ったブッ飛ばしてやるっ!!!!」



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船長と航海士不在の麦わらの一味によるオーズとの戦いがさらに激化すること必至の中、ウソップによって気絶させられた後に起き上がったペローナがスリラーバークにある食料と財宝を麦わらの一味の海賊船サウザンド・サニー号に積めるだけ積み込んでいた。

そんな中、ペローナ指揮の下積み込みを行っているゾンビ達の前に一人のくまのような大男が現れる。


「ここで何してる」

「クマみてェなヤローだな」

「クマか。的を射ている…!!」



​───────​───────​───────​───────



オーズと麦わらの一味の戦いが続く中、アブサロムにより再び攫われたナミは将軍ゾンビの一人であるローラの援護とサンジの残したダメージもあり変態透明猛獣を打ち倒す事に成功していた。

その後ローラから事前に教えてもらっていた宝物庫へ向かったがもぬけの殻であった為、ゾンビのリスキー兄弟からペローナがゾンビを引き連れてサニー号に宝と食糧を積んで脱出しようとしていることを聞き出す。

サニー号と何より自分の(手に入れる予定の)財宝を取られまいとナミはサニー号の停泊するスリラーバーク入口へ急ぎ向かう。ひっくり返っているオーズを見なかったふりをしながら。

そして、肝心のひっくり返ったオーズと相対する麦わらの一味。先程ひっくり返された怒りが冷めやらないオーズは怒号をあげる。


「おめェら覚悟しろよ。全員ぺちゃんこにしてやる!!!骨も残らねェとお思えェ!!!ウオオオオオオ!!!

「うわあ!!めちゃめちゃ怒ってるぞあいつ!!」

「やべーやべー!!」

「来るぞ!!」


だがその迫力の割には逆さまになったまま身を捩るだけで何かをしてくる気配すらなかった。どうやらひっくり返された際にその特徴的なツノが思いっきり地面に刺さってしまったようだった。

それを見た一行は目をギラリと輝かせオーズの顔面に迫る。


「あァ抜けねェのか」

「しょうがないなァ…」

「あーあー…」

「あ…あ"ァあああああ〜〜〜〜っ!!!」


オーズの顔面へ7人が斬って蹴って撃って殴って折っての集中砲火を浴びせまくる。だが当然オーズも受けるばかりで終わらずに起き上がる。


「いい加減にしろォ〜〜〜〜〜〜!!!!」

「撤収っ!!!」

「ハァ…ハァ…鬼みてェな奴らだ…!!」


魔人から鬼みたいと評された一行は散り散りになった後、ウソップとチョッパーがどこかを指さし大量の肉があると叫び出す。肉大好きなルフィの影が入ったオーズがそれに釣られ指さされた方へ目をやると後ろに控えていたゾロとフランキーがオーズの膝裏に得物をぶつける。


『"二ー・クラッシュ"!!!』

「ああ」

「ヒザつきはダウンでいいのか?」

「ルールがあっても守ってくれねェと思うぜ…」

「よっしゃー決まったぜ"膝カックン"

「屈辱だ……!!」


肉も無くヒザをつかされ怒りのボルテージをさらにヒートアップさせたオーズが迫る中、フランキーはルフィがモリアをぶっ飛ばすまでの辛抱だと口にするがそれに対してゾロが倒しゃいいだろと言葉を返す。


「おいおい!!おれ達ァこの化け物が麦わらの邪魔しねェように足止めしてんだろ!?お前アレ倒す気なのか!!?」

「売られたケンカは買うまでだ」

「巨体の上にゾンビだぞ、浄化以外に手はねェ!!!」

「そうだゾロ!!時間を稼げ!!」

「いやなら逃げてろ。おれもルフィを待つ気はねェぞ!!」

「私もルフィが何とかするのを待つつもりはないよ!!」


既に影を抜かれたゾロ・サンジ・ウタは目の前の化け物ゾンビを足止めでなく倒す気満々なようだった。

オーズが右腕を振りかぶる中、ゾロは伝説の侍リューマから譲り受けた"大業物"「秋水」の力を試す絶好の機会とギラついていた。


「さァ来いおれが相手だ!!」

「わかった。うおおーーっ!!!」


オーズの注意を自分に向かせ秋水の力のほどを確かめ始めたゾロは改めて先代の雪走と比較しその重さを感じ取る中、そこにオーズの拳が迫ってくる。


「おい!!ゾロ避けろーー!!!」

「この重みなら………!!!」

「すげェ!!あのパンチ、力で逸らした!!!」

「うお」


オーズのパンチを力技で逸らしたゾロは三本の刀をオーズへ向けて構え、次なる技を繰り出しにかかる。


「三刀流"百八"……!!"煩悩鳳"!!!」


3つの斬撃が敵に襲いかかる百八煩悩鳳。だが今放ったそれは秋水が放った大きな斬撃が他の二本を飲み込み巨大な一本の斬撃となってしまう。

俊敏なオーズはこれを躱しチビのくせにやるなとゾロを褒めるが、褒められた当人はそんな賞賛に聞く耳を持っていなかった。


「​───だが斬り口に無駄な破壊が多すぎる。おれがまだ使いこなせてねェ証拠か…破壊力は数段増してるが…コイツも大人しい剣じゃなさそうだ。いいモンくれたな……剣豪リューマ………!!」


直後、オーズが踏み潰してやると一行の上から地団駄を踏むかのように踏みつけの嵐をお見舞いする。

そこへなおも戦おうとするゾロをウソップが制止しようとする。


「おいゾロムリすんな!!だってお前万が一…!!こいつを倒せても戻って来んのはルフィの影一つだけだ!!お前とウタとサンジの影はどこにいるかも分からねェんだぞ!!」


そこから更にルフィがモリアを倒せばみんなの影が戻るんだからルフィを信じて足止めに徹しようと持ちかけるがそれでもゾロは倒そうとするのをやめず、その理由も語り出す。


「充分信じちゃいるが、ルフィにも苦手なモンはあるだろ!!"ダマシ"だ…!!!"透明人間" "霊体人間" "影の支配者" そもそも人をおちょくる様な能力者の揃ったこの島で敵が正々堂々ルフィと対峙してくれるかさえ疑問だ」

「​───確かに有り得る」

「むう…」

「むしろあいつならスカされる気しかしないよ私は…」

「あァ…ルフィがスカされて朝がきたらあいつもおれもウタもコックも4人共まともに戦えなくなる!!!​───だったら夜明けまでにルフィ一人だけでも正常に戻しときゃあ後は何とかなんだろ!!!」


ルフィがこの人を騙し弄び嘲る島においてその支配者からスカされるであろうという負の信頼感と、それでもあいつを元に戻せば後は何とかなるだろうという正の信頼感が織り交ざったゾロの言い分に皆が納得しオーズへ向き直ると同時に、自分達を空から覆い尽くす霧を見上げ夜明けまでのタイムリミットがもう30分もないことを悟る。


「これだけ霧の深い海だ。朝日の届く場所は限られてる…!!」

「とうとう朝か。"霧"が唯一の救いだな。夜明け前にして…正直…やっと消滅への危機感も出てきた…」


影を失ったことで陽の光により消滅してしまうという危機が現実に迫り出した頃、突如オーズばかりか島丸ごとが大きく揺れ動き始める。

どうやらオーズがまだモリアの部下として馴染んでいない頃にデタラメに舵をきった事により、変な海流に捕まってしまったようだ。そして今度は空にまで異常事態が起こってしまう。晴れるはずのない霧が晴れたのだ。

それ即ち、スリラーバークが長年留まっていた"魔の三角地帯"を抜け出てしまった事を意味していた。

それについて、既にルフィを振り切り身代わりとした自身の分身"影法師(ドッペルマン)"を自分の元に戻しながら報告を受けたモリアは海賊なら海の上にいればどこでも構わねェと切り捨てる。


「それより今……珍客中の珍客が来てんだ黙ってろ」


珍客中の珍客…それは自身と同じ七武海の称号を持つ"暴君"くまであった。

旅行するならどこに行きたいと意味を知るモリアからすれば戦いに来たかのような発言をするくまであったが、すぐに報告事項があると切り替える。


「王下七武海クロコダイル降任の後…​───その後釜が決まった」

「​───キシシシ、それを先に言え。一体どこの海のどいつになった…海賊はごまんといるぜ」

「​───後継者の名はマーシャル・D・ティーチ。通称"黒ひげ"という男。世間ではすでにちょっとした騒ぎになっているが…霧の海には届いていまい…」


"黒ひげ"という聞かない名で、確かな実力を示しながらも元々の懸賞金は0という未知数な男に政府はよく認めたもんだとモリアは笑う。

まァとにかくこれで世界の均衡とやらは保たれるんだろ?と言うモリアに対してくまは何やら意味深な事を言うがすぐにそれとは別の政府の気がかりを口にする。

エニエス・ロビーでの一件を受けて"麦わらの一味"の動向を警戒する政府はW7から魚人島への記録を辿り、魔の三角地帯に君臨するスリラーバークにて足止めを受ける可能性が高いと見ているようだった。


「​───つまり政府が何を心配してるかわかるか?」

「…………?」

「また一人…"七武海"が麦わらの手で落とされやしないかと政府は危惧している」


七武海がまた一人、つまり自分が負けるかもしれないと心配されたことにモリアは激しい憤りと怒りを露わにしてくまに食ってかかるが、そこへくまが必要なら手を貸すと火に油を注ぐような発言をする。


「誰に口を利いてやがんだてめェ!!!あんな少数の経験も浅い海賊団におれが敗けるかも知れねェと!!?」

「勝負に100%はない。エニエス・ロビーの一件でロブ・ルッチの敗北など一体誰が予想した。それに他にも奴らには気がかりな点が一つある」


七武海を2人もぶつけるほど政府はビビってるのかと反論するモリアにあくまで報告のついでであり、手を貸すよう指令を受けたわけではないことを伝えるくま。

そこでモリアはついでに見ていって温室のバカ共に伝えろと声を荒らげる。


「『てめェらを出し抜いた"麦わらの一味"は…いとも簡単にゲッコー・モリアのゾンビ兵になった』とな!!!」


所変わってオーズとの戦いが続く麦わらの一味一行。そこでも朝日を差し込ませない希望の霧が晴れ絶望の夜明け前の空が広がっていた事を確認していた。


「最悪だ……!!」

「一縷の希望が深い霧だったってのに…!!」

「一体誰の策略でこのタイミングで霧が晴れるんだ!!これじゃ朝日はストレートに射してきちまう」


霧の晴れた絶望を知らせる夜明け前の夜空。そんな中、ウソップはまたさらなる絶望を誰よりも早く発見してしまう。


「…モ…モリア!!!モリアだ!!!何でここに!!?ルフィは!?」

「おい待てウソップ、モリアがどこにいるってんだよ!!」

「いるじゃねェか!!あそこ見ろ!!腹だ!!オーズの腹ん中!!」

「腹の中??」


オーズの腹の中とウソップが指差す先には確かにモリアがいた。腹のツギハギにされた部分をカーテンを開くかのように広げ、もう夜明けも近いと話すモリアがそこに鎮座していた。


「い…いた!!!じゃルフィは!?案の定スカされたのか…!?」

「あるいは…!!」

「やられやしねェルフィは!!」


ルフィがスカされたと悟った一行とは別に突如自分の腹の中に鎮座する主と、コクピットの存在にロボみたいでテンション上がるなとオーズは沸き立つ。そしてモリアが麦わらの一味一行を見下ろしながらチャンスをやろうと語りかける。


「おれを倒せば全ての影を解放できる。全員でかかってこい!!!​───ただしオーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな…!!!」

「………!!あのヤロー汚ェぞ!!」

「モリアを倒さなきゃオーズを浄化できねェのにそのモリアがオーズの中に入っちまった!!!」

「​───かえってスッキリしたじゃねェ標的がよ」

「やるしかねェ!!!」


モリアを倒すためにはオーズを浄化せねばならないと、ゾロはウソップへ山程の塩を持ってこいと指示を飛ばす。それに応えたウソップはここへ最初に乗り込んだ際の記憶を頼りに厨房へ走り出す。

だがそれをモリアは許さず、オーズへ指示する。


「塩か…!!厨房へ行けなくしてやれ!!長っ鼻ごと屋敷の通路を潰せ!!」

「はいご主人様」


モリアの指示に従いオーズはウソップを屋敷への入口ごと殴り潰す。モリアが加わることでオーズに頭脳がつきより厄介な存在となってしまったのだ。

何度呼びかけてもウソップの返事がなく、万事休すかと思われたその時、ご無事ですと一行の後ろから声がかかる。


「遅くなって申し訳ありません!!!大量に塩が必要かと思い!!集めていました!!!」

『ブルック!!!』

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